平成302018)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

30−共研−2

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

細胞幾何学モデル

フリガナ

代表者氏名

ホンダ ヒサオ

本多 久夫

ローマ字

Honda Hisao

所属機関

神戸大学大学院

所属部局

医学研究科

職  名

客員教授

 

 

研究目的と成果の概要

【目的】多細胞生物の形態形成はこれを構成している細胞の振舞いによってなされる。細胞の振舞いを数理的に記述する方法があれば、数理的手法が形態形成を理解することに役立つ。
 そこで、組織を構成する細胞を多角形・多面体と考えて、そこでの多角形・多面体の頂点の動きを記述する運動方程式をつくっている。これにより細胞の振る舞いが数理的にあらわせる。この運動方程式を数値計算で解くには大きな計算が必要だが、これがスーパーコンピュータを使う理由である。これによりこれまでにないアプローチで形態形成を研究することができる。
 細胞でできたチューブがらせん状のねじれを形成することがある。哺乳類や鳥類の心臓形成初期にみられるこの現象を説明することをこころみている。
【結果】哺乳類や鳥の初期発生において心臓は左ネジ方向にねじれたヘリックスループを形成する。これははじめまっすぐだったチューブ状の原始心臓から形成される。これまでvertex dynamicsをつかったコンピュータ・シミュレーションで、チューブを構成している細胞が分裂時にわずかに反時計回りの回転を行うことでヘリックスループ形成を説明してきた。これとは別に、最近の研究で得られた、心臓形成に於いて細胞が右から左に移動するという知見を踏まえて、チューブ下方の細胞の(腹側からみて)左への集団的な移動をシミュレーションに取り入れた。シミュレーションの結果、チューブは左ネジ方向にねじれた。ここで使った前提は身体の左右比対称を形成するシグナル伝達システムとの相性がよいように思われる。
【まとめ】
哺乳類や鳥類の初期心臓は、単純な直線状のチューブであったものが左巻きのらせんにねじれる。これをチューブの背腹軸での屈曲と、チューブ上半の左向きへのシフトが起こることでなされると考え、この考えをコンピュータ・シミュレーションで確かめた。

研究成果
【論文発表】
Mikiko Inaki, R.Hatori, N.Nakazawa, T.Okumura, T.Ishibashi, J.Kikuta, M.Ishii, K.Matsuno, H.Honda,
Chiral cell sliding drives left-right asymmetric organ twisting
eLife 2018;7:e32506 DOI: 10.7554/eLife.32506

【国際会議、学会などでの口頭およびポスター発表】
本多久夫、 阿部高也、藤森俊彦
「初期心臓におけるキラリティーの出現」
第86回形の科学シンポジウム(千葉大学2018. 11/30)

Hisao Honda, Takaya Abe, Toshihiko Fujimori
'Appearance of a chiral structure in cardiac looping in the embryonic heart'
European conference of mathematical and theoretical biology, Lisbon University
(ECMTB2018 Lisbon; July 23, 2018)

Hisao Honda, Takaya Abe, Toshihiko Fujimori
'Appearance of a chiral structure in cardiac looping'
The 51th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biology
(船堀,Poster presentation June 8, 2018)