昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−30

専門分類

5

研究課題名

統計力学的手法による強い相関を持つ系の研究

フリガナ

代表者氏名

ミヤシタ セイジ

宮下 精二

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

教養部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

強い相互作用を持つ系では種々の協力現象がみられそれらの統計力学的解析は興味深いものである。本共同研究では最近特に興味を持たれている競合する相互作用(フラストレーション)を持つ系や量子効果が顕著な系をモンテカルロ法や大行列の計算など計算機による手法を用いて研究する。これまで計算機シミュレーションのデータは非常に単純な方法でしか処理されていなかったが,ここではデータ処理の方法の改善も試みたい。


強い相関を持つ系の熱力学的性質を主にフラストレーションを持つ系1)及び量子スピン系において研究した。フラストレーションを持つ系としては3次元層状に三角格子(六方晶体)上のイジング性の強い反強磁性ハイゼンベルグ模型のゆらぎの性質を調べた。この系はZ成分及びXY成分の凍結に伴なう逐次的な相転移を示すが特にZ成分の凍結配位について従来多くの説がありモンテカルロ法など直接的な方法でもその大きなゆらぎのため決められなかった。そこでこの系と同様なゆらぎを持つと考えられている3次元XY強磁性体の低温部でのゆらぎの様子を調べ,それと比較することにより上述の模型の秩序配位及びその有限系におけるゆらぎの様子を特徴づけた。
また量子スピン系に関しては量子的ゆらぎの非常に顕著な2次元反強磁性ハイゼンベルク模型2)及びXY模型3)周辺での対称性の破れについて調べた。これらの系では対応する古典系での配位(たとえばスタガード秩序)が良い量子状態でないためイジング→ハイゼンベルク→XYと対称性が変っていく場合の秩序変数の変化がよくわかっていなかったがこれらの模型に量子モンテカルロ法を適用しサイズ依存性を調べることによって通常の古典系でみられるのと同様な自発対称の破れが生じていることを見い出した。
この量子モンテカルロ法では多くの多外〓など統計処理を必要とするため有効な推定方法を確立するため統数研において数回会合を持った4)。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1)宮下精二 日本物理学会1989春(東海大) 発表
基研長期研究会1988 12月(京大基研)発表
欧文誌に発表予定
2)岡部豊・宮下精二・菊池誠 日本物理学会1989春(東海大)シンポジウム講演
欧文誌に発表予定
3)高須昌子・宮下精二・金田康正 日本物理学会1989(春)(東海大)発表
欧文誌に発表予定
4)宮下精二・田村義保
欧文誌に発表予定


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

強い相互作用を持つ系は熱平衡状態やそれへの緩和過程において種々の興味深いゆらぎのパターンをみせる。本共同研究では競合する相互作用を持つ系における秩序形態の研究及び量子効果の顕著な2次元系での量子ゆよぎ効果をモンテカルロシミュレーションや大行列処理の方法で研究する。これらの研究は大きなゆらぎの出現確率の統計的処理に関する部分が主要であり統計数理研との共同研究によって大きな利点が期待できる。またデータ処理に関していろいろな外挿等が必要になるが,この方面における統数研の蓄積の利用やまた必要に応じて新しい方法の研究開発もやりたい。
研究は統数研計算機等を用いて行ない,研究参加者は随時統数研内セミナー室等で研究連絡を行ないながら進めていく。特に京都からの参加者(川崎,4月から宮下も京大に移る予定)とは連絡を密にし3泊4日程度の来所を数回考えている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 辰夫

京都大学

鈴木 増雄

東京大学

高須 昌子

金沢大学

田村 義保

統計数理研究所