平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2070

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

2

研究課題名

Eulerian分布と正規乱数フィルタの生成

フリガナ

代表者氏名

ツチヤ タカヒロ

土屋 高宏

ローマ字

Tsuchiya Takahiro

所属機関

城西大学

所属部局

理学部数学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

56千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[研究目的]
 バケットソートの変形版を基礎とする研究である.バケットソートは並べ替えるデータの取りうる値がk通りのとき,あらかじめk個の入れ物を用意するか,あるいは動的にそれを増やしながら,各々の数字に対応した入れ物にデータを入れていくアルゴリズムである.本研究の発端は,n個の連続した数字(カード)があり,あらかじめ用意する入れ物の数を決めず,最終的に必要な入れ物の数がデータの初期状態に依存する変形バケットソートを考案し,その入れ物の数を表す漸化式と離散確率分布を導出したことによる.
 以上を背景に,Eulerian数やEulerian分布の周辺に関する一連の研究を推進して,以下の課題に取り組む.
(1) 変形バケットソートを一般に拡張したときの理論を研究する.さらにカードに欠番がある場合の入れ物数の確率分布を導出する.この分布は非対称な確率分布となり,この確率分布の導出の際に現れる統計的・代数的性質について研究する.
(2) Eulerian分布は連続一様分布の確率変数の和の分布と関係し,漸近的に正規分布に収束する.このため,分布の漸近理論や正規確率分割と関係している.Eulerian分布の正規分布の近似は,通常の漸近展開でかなり良い精度が得られるので,これを利用した新しい正規乱数生成器(正規乱数フィルタ)の構成が可能である.カードのシャッフルが一様乱数の生成と関係し,カードの並びから正規乱数が導かれることになる.この関係を利用して正規乱数フィルタを構築し,理論的な解明と実装を行う.

[成果]
 上記(1)については,1からnまでの数字が書かれたn枚のカードのうち1枚だけ欠番がある状況を考え,どの番号も等確率で欠番が生じるという仮定の下で,n枚のカードにおける入れ物数が i (1≦i≦n) となる総数に関する漸化式とその確率分布を導出した.この成果は下記のシンポジウム[2]および論文[3]において報告した.また,2枚以上欠番がある場合の確率分布は数値実験によって予想できており,今後理論的導出を試みたい.(2)については,n=9としたときのカードのシャッフルとその並びから正規乱数生成を試みた.補正を行うことで良質な乱数が生成されることが分かったので,理論的な解明は今後の課題としたい.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[1] 変形バケットソートに現れる離散型確率分布とEulerian数 (2009), 土屋高宏,中村永友,統計数理,Vol.57,No.1,159-178.
[2] 変形バケットソートとオイラリアン分布の性質について (2012),土屋高宏,中村永友,第17回情報・統計科学シンポジウム(口頭発表),九州大学.
[3] 欠番オイラリアン分布とその基本統計量 (2013),土屋高宏,中村永友,札幌学院大学,情報科学,第33巻,38-45.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

共同研究者との研究打合せは実施したが,研究会は開催していない.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 能典

統計数理研究所

中村 永友

札幌学院大学