平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−61

専門分類

7

研究課題名

集団検診による大都市住民の健康度の予測と追跡調査による予後の確認

フリガナ

代表者氏名

シマモト タカシ

嶋本 喬

ローマ字

所属機関

筑波大学

所属部局

社会医学系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年の生活環境の変化に伴い,日本人の疾病構造の変化,とくに脳梗塞の相対的増加と大都市における虚血性心疾患の増加傾向が認められつつある。本研究は約10年前より循環器検診を毎年実施している都市住民を対象として,検診による健康度の把握と予後調査によるその確認を行なう。
また,検診の頻回受診者について,血圧値等の推移と予後の関連を検討する。これによって循環器検診の各種所見の定義を再検討し,未来予測と予防に役立てる。


近年の生活環境の変化に伴い,疾病構造の変化,とくに大都市における心筋梗塞患者数の増加傾向が臨床医家より報告されている。しかし,全国的な死亡統計の上では,死亡率は増加しておらず,実態の解明が必要である。
本研究の目的は長期間にわたって循環器検診とその予後調査を実施している都市住民(男子,40〜59才,約1万人)を対象として,心筋梗塞の発生率の動向とリスクファクターを明らかにし,未来予測と予防に役立てることにある。
筑波大学と大阪府立成人病センターが共同して実施している大阪府下の地域住民及び事業所従業員(事務系企業及び現業系企業)の25年間の追跡調査成績より,心筋梗塞の発生率の動向をみると,事務系企業が早くから増加傾向を示したが,最近はむしろ,その傾向は停止し,代って,現業系企業が近年では増加傾向を示してきた。しかし,大都市の近郊都市の一般住民では増加傾向は未だ認められない。
Coxの比例ハザードモデルによる分析では,最近10年間の心筋梗塞のリスクファクターは,高血圧,喫煙,高コレステロール血症が主なものである。3集団間の比較では,血圧レベル,喫煙者の割合には大差が認められない。しかし血清総コレステロールレベルは,事務系は25年前より約200mg/dlを維持し,現業系は180mg/dlから200mg/dlに増加した。都市近郊住民も200mg/dlに到達しつつある。
(財)動脈硬化予防研究会が主要都市の中小商工業経営者約10万人を対象として実施中の10年間の追跡調査では,数量化III類により脳卒中,虚血性心疾患のリスクファクターを合せて検討したところ,血圧値,眼底,心電図のウエイトが大きく,血清総コレステロール値についても高値群ほど発生率の高い傾向が認められた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

駒澤勉他:循環器集団検診における疾病危険因子の時代変化に関する研究,日本公衛誌36(10),395.特別附録1989


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(財)動脈硬化予防研究会では年間10万人に及ぶ循環器検診を実施しているが,検診データの統計的解析は必ずしも十分でなく,また受診者の予後調査とそれによる検診所見の意義についての検討は行なわれていない。
今回はこの中から三大都市集団を中心とする約3万人の最近5年間の検診受診成績の推移を検討する。また経年的な検査所見の推移と予後の関連について分析し,検診所見の推移が健康度に及ぼす影響を検討する。筑波大学大阪成人病センターの都市・農村の調査成績と対比することによって,大都市の循環器疾患の実態を浮彫りにする。
これらの計画を実施するに当っては,多変量解析法や時系列の分析方法など種々の統計学・推計学の手法の応用が不可欠であり,これに関する専門研究機関である統計数理研究所との共同研究を必要とする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

飯田 稔

大阪府立成人病センター

磯 博康

筑波大学

小西 正光

国立循環器病研究センター

駒澤 勉

統計数理研究所

小町 喜男

筑波大学

佐藤 眞一

大阪府立成人病センター

鈴木 賢二

(財)日本労働文化協会

高田 浩江

(財)日本労働文化協会

土井 光徳

高知県土佐山田保健所

山口 百子

国立健康栄養研究所