平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2038

専門分類

7

研究課題名

老化と共に現れる色素異常「シミ」発症機序の数理生物学による解析

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

Imayama, Shuhei

所属機関

国立病院機構九州医療センター

所属部局

皮膚科・アレルギ?科

職  名

医長,臨床研究部副部長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

130千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

背景:シミとは周囲より黒ずんでみえる限局性の色調変化を指すヤマト言葉で,シミが中途で現れて変化する(時には消える)病変に使用されるのに対して,アザは当初から不変の病変として存在する限局性の形状と色調異常を指す。「黒ずんでみえる」のは,皮膚に入射した可視光の(一部分ではなく)大部分の波長領域が表皮・真皮にて吸収されて反射して来ないために「暗く」みえるからである。
 従って(1)可視光線のほぼ全波長をまんべんなく吸収できるメラニンの増加がシミの主役であることは間違いないが,(2)角層での吸収(関節屈側が黒ずむ、垢が溜まると薄汚れた感じになり入浴後に光沢があるのはこのため)や,(3)真皮結合組織に含まれる血液(ヘモグロビン)量も一定波長の吸収を起こして暗い色調に偏位させる。

目的:基底細胞内メラニン量増加の発症機序には産生側と受け取り側の2通りの異常が想定されている。前者では,(1)メラノサイトによるメラニン産生増加が最も有力であるが,(2)産生されるメラニン性状の変化による吸収波長の変化や崩壊の遷延も報告がある。後者すなわち表皮細胞への受け渡し後の変化として,(3)メラニン顆粒の基底細胞内貯留,(4)メラニン顆粒の角化細胞内分布の異常,(5)角化細胞(分化に伴い本来は分解されていくはず)のメラニン顆粒が残存し続けて結果として表皮全体のメラニン量増加する,などの異常が想定されている。そこで,シミの病態の主役を特定すること,その成果としての新たな治療法の確立を目指すのが本研究である。

成果:限局性に黒くみえる病変を(表面反射を除去して)詳細に観察したところ,メラノサイトの分布には変化がないこと,一方で,表皮細胞のメラニン含有量が増加していることが判明した。このことから色素異常病変部では,表皮細胞へと受け渡された後での貯留異常が関与していることが強く示唆された。またメラノサイト分布に関しては,皮膚表面のキメ(皮溝)に一致してメラノサイトが分布していないことも判明した。
 以上の観察結果から色素異常症の病態には,(もちろんメラニン産生亢進も貢献しているとは思われるが)表皮側が主導的に関与している可能性が示され,であれば,メラニン産生抑制をもつ薬理作用物質による治療法とは異なる新たな治療法の可能性が示唆された。
 これらの成果を下に今後は,共焦点レ−ザ−顕微鏡やデジタル顕微鏡を用いて,個々のメラノサイトを樹状の突起の先までを描出して分布と形態を詳細に観察することにより,正常皮膚と色素異常症病変との双方で確認する研究を継続したい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文と著書のみ
1. 今山修平, 色素性母斑(扁平母斑を含む),今日の小児治療指針第14版, 医学書院, 東京,632-633, 2006

2. 今山修平, たるみとはりのメカニズム,皮膚の抗老化最前線, NTS出版, 東京, 76-83, 2006

3. 加藤しおり,亀井恭子,細川知聡,河崎玲子,安川史子,今山修平, 異所性乳癌の2例,日本皮膚科学会会誌,116, 1765-70, 2006

4. 今山修平, しわとは−しわ・たるみの成因と治療理論−皮膚科学的見地から,しわ・たるみを取る,Advanced Cosmetic Dermatology 2, 南江堂, 東京,11-17, 27-34, 2006

5. 亀井恭子,河崎玲子,加藤しおり,小西さわ子,今山修平,上杉憲子, Malignant eccrine spiradenomaの1例,日本皮膚科学会雑誌, 117,43-48,2007

6. 今山修平, シワとたるみの病態生理, Visual Dermatology, 6, 336-9, 2007

7. 今山修平, 基本のPathology.手掌足底のホクロと境界型母斑,Visual Dermatology, 6, 874-80, 2007

8. Hamada T, Yasumoto S, Karashima T, Imayama S, Ishii N, Shimada H, Hashimoto T, Recurrent p.N767S mutation in the ATP2A2 gene in a Japanese family with haemorrhagic Darier disease clinically mimicking epidermolysis bullosa simplex with mottled pigmentation, Br J Dermatol, 157, 605-8, 2007

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1.転帰報告会:第8回,病変の形の解析,2006/02/10,福岡市ホテルシ−ホ−クリゾ−ト,35人
2.転帰報告会:第09回,病変の色の解析ー特に表面反射を除去しての観察ー,2006/06/23,福岡市ホテルシ−ホ−クリゾ−ト,42人
3.転帰報告会:第10回,病変の色と病理組織との関係,2006/09/22,福岡市ホテルシ−ホ−クリゾ−ト,51人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

本多 久夫

兵庫大学