平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1006

専門分類

3

研究課題名

計量ファイナンスにおける離散モデリングとその応用

フリガナ

代表者氏名

カワサキ ヨシノリ

川崎 能典

ローマ字

Kawasaki Yoshinori

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助手

所在地

TEL

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E-mail

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研究目的と成果(経過)の概要

平成17年度の主な研究成果は以下の2つである。
1.オプション価格付けの精密な理論構築を契機に,この四半世紀で現代ファイナンスは大きく発展を遂げ
たが,この10年間における中心的な課題のひとつは,VaR(Value at Risk)に代表されるリスク管理であった
と言える。その一方で,現実の金融取引ではデイトレーディングといった日内の原資産変動を利用した投資
が徐々にボリュームを増しつつある。このような現状に鑑み本研究では,日計りやデイトレードにおけるリ
スク計測を念頭に,株価ティックデータから10分刻みの等間隔時系列を生成し,イントラデイ(日内)でのダ
ウンサイドリスク計測を考える。日内周期性を考慮した上で,一変量および多変量GARCHモデルの変種を実
際の高頻度データ(ティックデータ)に適用し,イントラデイでのVaRにおける超過率という観点から,モデ
ルを実証的に比較分析した。ここで使用される高頻度データと従来の価格データ(日次,週次,月次等)との
決定的な違いは,前者においてはその生起間隔(取引間隔)が不均等に発生し,既存の統計モデルをそのまま
適用できない点にある。予測が目的の場合はこの点は不都合なので,本研究では不等間隔系列から等間隔系
列を抽出した上で従来の離散時間型時系列モデルを使用することで,高頻度データに基づく日内リスク計測
を行う。予測検証はインサンプル予測に基づく。すなわち,データの推定期間において各モデルのパラメー
タを推定し,それらを所与として同一期間内で1期先のVaR予測を逐次的に行い,各モデルの予測パフォー
マンスを比較した。
2.近年注目を浴びつつあるrealized volatilityは,一日の細かい時間間隔における収益率の二乗和とし
て計算され,日内の情報を累積させた形で日次のボラティリティを表現する。つまり,より多くの情報を含
んでいるボラティリティとして市場のミクロ構造分析にとっての必要不可欠な概念の一つになっている。理
論的には,収益率の二乗和の観測間隔Tを$T o O$,つまり観測データ数Nを$N o infty$とすれば,そ
れは連続時間モデルにおける概念quadratic variationに一致する。この値を,その日の実現された
(realized)ボラティティと考える。実証的には,先行研究において示されているように,ほぼ24時間連続
的に取引される為替データといった流動性の非常に高い高頻度データに関しては,このことが容易に成り立
ちうることが分かる。本研究では,流動性が低く断続的にしか取引がなされない個別株式のデータをpartial
high-frequency dataとし,このようなデータによって計算されるrealized volatilityの理論的な正当性
を示す。さらに,東証1部上場個別銘柄の2001年1月4日から同年12月28日までの高頻度データを用い,
実証分析を行った。
これ以外にも、ジャンプを含むボラティリティモデルの推定と応用に関する研究も行った。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表
[1]森本孝之、川崎能典、イントラデイVaRによるGARCHモデルの比較実証,統計数理,第54巻第1号,2006。
(平成17年11月受理)
[2]Morimoto,T.and Kawsaki,Y.,An Empirical Comparison of GARCH Models Based on Intraday Value
at Risk,Lecture Series on Computer and Computational Sciences,Volume 4,2005,pp.1299-1302,ISBN
90-6764-444-7.
学会発表
[1]Morimoto,T.and Kawsaki,Y.,An Empirical Comparison of GARCH Models Based on Intraday Value
at Risk,Computational Science Symposium 2005--Computational Science on Interaction--,Noyori
Conference Hall,Nagoya University,Nagoya,Japan.(2005年10月13日)
[2]Morimoto,T.and Kawsaki,Y.,An Empirical Comparison of GARCH Models Based on Intraday Value
at Risk,Advances in Financial Forecasting-2nd International Symposium at the 2005 International
Conference of Computational Methods in Sciences and Engineering,Poseidon Hotel,Loutraki,Greece.
(2005年10月22日)
[3]森本孝之,川崎能典「イントラデイVaRによるGARCHモデルの比較実証」、第1回FCS研究会〜計算科
学の可能性を探る〜,名古屋大学高等総合研究館6Fカンファレンスホール 名古屋市千種区。(2005年7月
13日)
[4]Morimoto,T.,Masuda,H.and Tokutsu,Y.,Realized volatility with partially high-frequency data:
The case of Japanese individual stocks,日本金融証券計量工学学会第23回大会,慶応義塾大学三田キャ
ンパス北館ホール 東京都港区。(2005年8月6日)
[5]森本孝之,川崎能典「イントラデイVaRによるGARCHモデルの比較実証」、統計サマーセミナー2005、
九州地区国立大学九重共同研修所大分県玖珠郡九重町。(2005年8月7日)
[6]Morimoto,T.,Realized volatility with partially high-frequency data:The case of Japanese
individual stocks,第2回FCS研究会〜計算科学の分野を超えた融合点を探る〜、名古屋大学高等総合研究
館6Fカンファレンスホール 名古屋市千種区。(2005年8月22日)
[7]森本孝之,川崎能典「イントラデイVaRによるGARCHモデルの比較実証」、2005年度日本統計学
会第73回大会、2005年9月14日(水)、広島プリンスホテル広島市南区。
[8]森本孝之,川崎能典「An Empirical Comparison of Multivariate GARCH Models Based on Intraday Value
at Risk」、日本金融証券計量工学学会第24回大会、2005年12月5日(月)、筑波大学 東京都文京区

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

河合 研一

統計数理研究所

清水 泰隆

大阪大学

塚原 英敦

成城大学

得津 康義

広島経済大学

笛田 薫

岡山大学

前川 功一

広島大学

増田 弘毅

九州大学

森本 孝之

名古屋大学