平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2020

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾患のCT値を利用した鑑別診断についての研究

フリガナ

代表者氏名

イケシマ アツシ

池島 厚

ローマ字

Ikeshima Atsushi

所属機関

日本大学松戸歯学部

所属部局

放射線学講座

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

2千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 病理組織学で診断が確定した症例を収集し、そのままで分析しようとすると、データが膨大であるために、かえって収集がつかないことが予想されるため、CT画像の特徴に沿った分類を行い、それぞれ分析して行くことを考案した。
 また、分析に当たって、CT値、面積等をパラメーターとして判別分析を実行した。
 すなわち、低CT値を示す疾患として、1.根尖部に発生する疾患、2.埋伏歯の歯冠に発生する疾患、3.顎骨中心性疾患を、高CT値を示す疾患として、1.埋伏歯の歯冠に発生する疾患、2.上下顎骨に発生する疾患に分類して分析した。
 低CT値を示す疾患で、1.根尖部に発生する疾患として、歯根嚢胞と歯根肉芽腫が存在し、その結果は、歯根嚢胞ではCT値69.75以下で、面積1.26cm2以上の正判別率は72%、歯根肉芽腫ではCT値69.75以上で、面積1.26cm2以下の正判別率が62.7%である。
 2.埋伏歯の歯冠に発生する疾患として、含歯性嚢胞、エナメル上皮腫および角化嚢胞性歯原性腫瘍が存在する。その結果は、含歯性嚢胞ではCT値52.35以上で、面積2.85cm2以下で、かつ埋伏歯歯頚部からの距離0.33以下の正判別率は80.8%、エナメル上皮腫ではCT値44.9以下、面積4.95cm2以上で、かつ埋伏歯歯頚部からの距離0.5以上の正判別率は30%、角化嚢胞性歯原性腫瘍ではCT値44.9以上で52.35以下、面積2.85cm2以上で4.95cm2以下、かつ埋伏歯歯頚部からの距離0.33以上で0.5以下の正判別率は42.9%である。
 3.顎骨中心性の疾患として、1)上顎骨に発生する疾患は、角化嚢胞性歯原性腫瘍、原始性嚢胞、術後性上顎嚢胞および鼻口蓋管嚢胞が存在する。その結果は、角化嚢胞性歯原性腫瘍ではCT値54.62以下で、面積4.66cm2以上、かつ正中からの距離13.5mm以下の正判別率は28.6%、原始性嚢胞ではCT値54.99以上で58.74以下、面積54.99cm2以下、かつ正中からの距離13.5mm以上の正判別率は6.7%、術後性上顎嚢胞ではCT値58.74以上、面積3.9cm2以上で4.66cm2以下、かつ正中からの距離17.6mm以上の正判別率は72.2%、鼻口蓋管嚢胞は100%鑑別可能である。
 下顎骨に発生する疾患は、エナメル上皮腫、角化嚢胞性歯原性腫瘍および原始性嚢胞が存在する。その結果は、エナメル上皮腫ではCT値47.81以下で、面積3.62cm2以上の正判別率は52.9%、角化嚢胞性歯原性腫瘍ではCT値47.81以上で51.93以下、面積2.75cm2以上で3.62cm2以下の正判別率は29.4%、原始性嚢胞ではCT値54.33以上で、面積2.28cm2以下の正判別率は66.7%である。
 高CT値を示す疾患で、1.埋伏歯歯冠に発生するものは複雑型歯牙腫と集合型歯牙腫が存在する。その結果は、複雑型歯牙腫ではCT値1828.16以下で、面積0.84cm2以上の正判別率は100%、集合型歯牙腫ではCT値1828.16以上で、面積0.84以下の正判別率も100%である。2.上下顎骨に発生する疾患は、骨形成線維腫、骨性異形成症および腐骨が存在する。骨形成線維腫ではCT値427.15以下で、面積1.53cm2以上の正判別率は83.3%、骨性異形成症ではCT値444.15以上1189以下で、面積0.88cm2以上1.07cm2以下の正判別率は71.4%、腐骨ではCT値1189以上で、面積0.88cm2以下の正判別率は29.4%である。
 CT値や面積の範囲で、正判別率を求めた鑑別診断が上記の結果となった。正判別率の確率の低い症例については、今後の継続課題となるであろう。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.池島 厚:含歯性のエナメル上皮腫および角化嚢胞性歯原性腫瘍と含歯性嚢胞の鑑別点について,CT値,面積および埋伏歯付着位置による分析.第17回臨床画像大会抄録集87,2012
2.池島 厚:歯根嚢胞と歯根肉芽腫との鑑別点について(第4報),CT値および面積値による分析.第15回臨床画像大会抄録集35,2010
3.池島 厚:歯顎顔面領域の画像計測による鑑別診断. 第一版, 蓼科印刷, 東京, 2015

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

田村 義保

統計数理研究所