平成232011)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

23−共研−4304

分野分類

統計数理研究所内分野分類

c

主要研究分野分類

3

研究課題名

アイスコア中に含まれる抗生物質耐性遺伝子の網羅的解析および分子進化解析

重点テーマ

ゲノム多様性と進化の統計数理

フリガナ

代表者氏名

ソウ イン

曹 纓

ローマ字

Cao Ying

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

 抗生物質耐性菌は,工業的に抗生物質が大量に生産され消費されるようになった1950年代以降,特に医療や獣医療の現場で問題とされてきた.近年,病院や農場,水産養殖場から環境中へ拡散する抗生物質耐性菌が問題とされるようになってきたが,拡散の実態は科学的に必ずしも明らかにされているわけではない.特に,抗生物質耐性菌の環境中への拡散が歴史的にみて1950年代以降の問題であるのか,病院や農場等の現場で新たな耐性菌の報告がなされてからどの程度の時間をかけて環境中に蔓延するようになったのか,いずれもイベント間の時間関係が明確ではない.極地の氷には過去の細菌がトラップされているので,アイスコアに含まれる細菌を時系列に沿って解析すれば,その問題解決につながると考えられる.
 本研究では工業的な抗生物質の生産開始をメルクマールとして,その前後における自然環境の中への抗生物質遺伝子の散布を,各種抗菌剤耐性遺伝子の定量解析を行った.
 工業的な生産の使用は主として欧米から始まったため,北半球のアイスコアに着目し,主に北極と中国のサンプルの用いて,1900年代頃から近年までの試料の解析をおこなった.
 アイスコア中の耐性遺伝子の解析に先立ち,Taqmanプローブを用いた各種抗菌剤耐性遺伝子の定量解析の方法論的な検討を行い,氷河表面から複数の抗菌剤耐性遺伝子が検出され,検出頻度に地理的な差異が存在することを示した.それは人間の社会活動から相当の距離的隔絶があったとしても,人間の社会活動に由来する細菌が運ばれてきて検出されることになった.従って,抗生物質耐性菌の出現と伝搬は,人間の社会活動が地球環境に与えるインパクトの一つであると考えられる.今後,もっと沢山のサンプルの基で,環境変動とそれに伴う抗生物質耐性遺伝子の変化を時系列ごとに解析することによって,多剤耐性菌の問題解決をはじめ産業応用上のイノベーションにも貢献すると思われる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表:
アイスコア中に含まれる抗生物質耐性遺伝子の網羅的解析および分子進化解析
瀬川 高弘 *(国立極地研究所),牛田一成(京都府立大学),曹纓(統計数理研究所)
,統数研共同利用重点型研究集会,東京,日本,2011.12.19

参考論文
Application of real-time PCR array to the multiple detection of antibiotic resistant genes in glacier ice samples
Kazunari Ushida, Takahiro Segawa, Shiro Kohshima, Nozomu Takeuchi, Kotaro Fukui, Zhongqin Li, and Hiroshi Kanda,
J. Gen.Appl. Microbiol., 56, 43-52 (2010)



研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

牛田 一成

京都府立大学

瀬川 高弘

国立極地研究所