平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1011

専門分類

6

研究課題名

地震波時系列解析にもとづく地球内部短波長不均質構造評価に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ニシザワ オサム

西澤 修

ローマ字

Nishizawa Osamu

所属機関

産業技術総合研究所

所属部局

地圏資源環境研究部門 物理探査研究グループ

職  名

主任研究員

所在地

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研究目的と成果(経過)の概要

(目的)地球内部の不均質構造は,資源探査や地圏環境モニタリング,地震発生メカニズムを解明する研究において重要である。とくに通常の構造分解能以下の小規模構造が地震波に及ぼす影響の評価は,地下構造のイメージングの精度を評価する上で重要である。小規模構造は得られたモデル構造のランダムなゆらぎと考えるのが実際的である。ランダム構造からの散乱波により,地震波にランダムな変化が現れる。こうしたゆらぎは時系列上の単純なノイズとは異なり,信号となる地震波が原因で発生したもので,信号にランダムな変動を与える。すなわち,時系列(観測される地震波)上のランダム変動は,空間における弾性波速度など物性値のランダムな変動を反映している。従来,この観点に立った研究は少なく,地震波を用いた地下探査に適用できる理論や実験・観測にもとづく経験法則はほとんど明らかにされていない。時系列解析によって,ランダム構造と地震波のランダムなゆらぎとの関係を明らかにし,統計モデルを確立し,現象に最も適合する物理モデルを考える。
(経過)ランダムな小規模不均質構造を含むモデルを用いた室内実験と数値実験を行い,地震波データを取得する。これらの地震波データは大局的構造を反映しているが,同時に小規模ランダム不均質構造からのゆらぎも受けている。得られた波形データから地下構造を決定すれば,観測波形とモデル波形との間の残差は分解能以下のランダム不均質構造を反映したものとなるはずである。ランダム不均質構造の特徴的サイズと残差との間の関係を明らかにすることにより,地震波ゆらぎから地下構造の小規模不均質についての統計的情報を得ることができる。さらに,現実の地殻は水平方向と鉛直方向とで不均質スケールが異なり,不均質構造の異方性を有するが,この研究では異方性を含むランダム不均質構造が波形に及ぼす影響も調べた。
(結果)室内モデル実験の結果,ランダム不均質構造を伝播した地震波はランダム不均質構造の強さや特徴的大きさによって規定される特定の周波数から位相が急激に乱れることが明らかになった。このような特定周波数は実際の野外観測における地震断層のメカニズム解明や地下構造解明の際に利用できる周波数の限界を示唆しており,地球物理・物理探査における波形データ処理において考慮されるべき重要なポイントである。また,通常の波線トモグラフィーによって決められた構造以下の小規模ランダム不均質の統計的性質を推定する手法を提案した。この手法により,分解能以下の不均質構造が持つ統計的性質が得られる。地震波探査では利用できる周波数に限界があるため,把握できる地下構造の詳細には限界があり,この限界は実際に存在する不均質のスケールに比べてかなり大きい。したがって,地震波探査の分解能は相当に粗いものである。ここで研究された手法は,地震波の走時残差の空間相関を用いて小規模ランダム不均質を推定するもので,地下構造について従来の知見とは独立な新しい知見が得られる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Nishizawa, O. and Kitagawa, G., An Experimental Study of Phase Angle Fluctuation in Seismic Waves in Random Heterogeneous Media: Time Series Analysis based on Multivariate AR Model, Geophys. J. Int. 投稿中

Nishizawa, O. An Experimental Study of Phase Fluctuations in Seisimi Waves Propagating through Random Media WORKSHOP MEETING ON SEISMIC WAVES IN LATERALLY INHOMOGENEOUS MEDIA VI 2006年06月 Hruba Skala, チェコ http://www.ig.cas.cz/activities/Abstracts2005/nishi.htm

Saito, T. and Nishizawa, O., Effective Average Wave Velocity in 2-D Anisotropic Random Media: Formulation Using the Rytov Method WORKSHOP MEETING ON SEISMIC WAVES IN LATERALLY INHOMOGENEOUS MEDIA VI 2006年06月 Hruba Skala, チェコ http://www.ig.cas.cz/activities/Abstracts2005/saito.htm

齊藤 竜彦・西澤 修・横田 俊之,決定論的・確率論的地震波走時解析による地下不均質構造の推定 −クロスウェルトモグラフィへの適用例− 2005年10月 地震学会(札幌)

齊藤 竜彦・西澤 修 ランダム不均質構造による地震波速度異方性 2005年10月物理探査学会(沖縄)

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研究参加者一覧

氏名

所属機関

斎藤 竜彦

産業技術総合研究所