平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2056

専門分類

9

研究課題名

深海底のメタンハイドレート崩壊に伴うメタンガスの循環過程のモデル化

フリガナ

代表者氏名

フクミズ ケンジ

福水 健次

ローマ字

Fukumizu Kenji

所属機関

統計数理研究所

所属部局

統計基礎研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

深海底には、メタンハイドレートと呼ばれる水和物結晶が大量に存在する。その量
は炭素に換算すると世界中の化石燃料のほぼ2倍以上にも匹敵するため、石油・天然
ガスに代わる次世代のエネルギー資源として期待されている。しかし、その一方で、
メタン分子は二酸化炭素分子に比べても約20倍以上もの温室効果があるため、深海
底からメタンハイドレートを掘削することで放出する大量のメタンガスにより、地球
の温暖化が加速されることが憂慮される。また、海底のメタンハイドレートは、地震
等による物理的な破壊や、気温の上昇に伴う水温の上昇、海面水位の変化による水圧
の変化等、地球環境の変動に伴う様々な要因で崩壊し、大気中に大量のメタンガスを
放出すると考えられる。大気中のメタン濃度の増加は、気温の上昇を誘発するため、
さらなるメタンハイドレートの崩壊を促進する。従って、深海底におけるメタンハイ
ドレートの形成・崩壊過程は、地球温暖化の抑制方法を検討する上でも必要不可欠な
重大な課題である。
 本研究では、地震等の確率過程を含む地球環境変動に伴うメタンガス循環過程の統
計モデルを構築し、海底に存在するメタンハイドレートの形成・崩壊過程と大気中の
メタンガスの濃度変動の相互作用を解明することを目指して研究を進めている。本年
度は、南極氷床に取り込まれたメタンガスの濃度変動を数理モデル化することによ
り、過去の大気中のメタン濃度の時系列変動の解析に取り組んだ。まず、氷床表面か
ら岩盤まで、厚さ約3500メートルにおよぶ氷床内のメタン分子の分布の時空間変化
を、拡散方程式を基に定式化した。このモデルを用いて、計算プログラムを構築し、
約40万年間のメタン分子の分布の変化を計算することに成功している。今後、この
モデルをさらに精密化し、大気中のメタンガスの濃度変動のメカニズムに迫りたいと
考えている。この成果は、環境研究としてのみならず、新エネルギー資源開発のため
の基礎研究としても大きく貢献できると期待している。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Kenji Fukumizu,Kenji Kawamura,Shuji Aoki,Takakiyo
Nakazawa,and Takeo Hondoh:Effects of molecular diffusion on paleo-atmospheric
reconstruction from polar ice core,Earth and Planetary Science Letters 229,183-192
(2005).
(2)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Katsuyuki Kawamura,and Takeo Hondoh:Diffusion of
nitrogen gas in ice Ih,Chemical Physics Letters 385,467-471(2004).
(3)Tomoko Ikeda-Fukazawa and Katsuyuki Kawamura:Molecular dynamics studies of
surface of ice Ih,Journal of Chemical Physics 120,1395-1401(2004).
(4)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Katsuyuki Kawamura,and Takeo Hondoh:Mechanism of
molecular diffusion in ice crystals,Molecular Simulation 30,973-979(2004).
(5)深澤倫子:南極の氷とミクロの世界,学術の動向 103,70-71(2004).
(6)深澤倫子:分子シミュレーションが解き明かす南極氷床中の空気分子のダイナ
ミクス,アンサンブル28,15-17(2004).

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

深澤 倫子

科学技術振興機構(JST)

前 晋爾

旭川工業高等専門学校