平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2020

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

新生児の自発運動の解析

フリガナ

代表者氏名

ギマ ヒロタカ

儀間 裕貴

ローマ字

Gima Hirotaka

所属機関

鳥取大学

所属部局

地域学部附属子どもの発達・学習研究センター

職  名

特命講師

配分経費

研究費

40千円

旅 費

100千円

研究参加者数

8 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 ヒトの新生児および乳児が示す自発的な全身性の運動に,中枢神経系の発達・組織化の度合いを反映する多くの情報が含まれているという考え方は,小児神経学に基づく多くの研究から支持されている.特にPrechtlら(1993)は,新生児および乳児の特徴的な全身性運動をgeneral movements(GMs)と名づけ,その運動パターンが質的に正常と異常に分けられることを示した.そして,GMsのパターンが新生児期から乳児期にかけて継続的に異常を示す場合,後に脳性麻痺を主とした神経学的後遺症を多く呈することを報告している.近年では脳性麻痺以外の疾患(発達遅滞,自閉症,レット症候群など)においても,新生児期および乳児期初期における自発運動やGMsが質的な異常性を示すことが報告されている.
新生児・乳児の自発的な運動を記録・計測し,そのデータを観察・解析するという神経学的評価の手法は,児に対して非侵襲的で負担が少なく,継続的・反復的に行えるという利点がある.しかしながら,定量的な評価および診断が重要視される臨床や療育の場面において,運動パターンの観察に基づくGMs評価は,実用性としての難しさが指摘されてきた.特に将来的な発達障害のリスクを高く有する早産児や低出生体重児などのハイリスク児では,中枢神経系の成熟度合いを示すとされるGMsの客観的・定量的な評価方法の確立とともに,その背後にある運動発達のメカニズムを明らかにすることが求められている.
 我々は,これまで極低出生体重(出生児体重が1,500g未満)児における,新生児・乳児期の動画データを多数記録し,これらの児を長期的にフォローアップして,発達経過に関する各種データも併せて蓄積してきた.これらのデータを集計した結果,ビデオ記録の対象となった児には,その後の発達として精神発達遅滞,脳性麻痺,自閉症スペクトラム障害などの発達障害を呈した児が多く含まれることがわかった(儀間・他,2015,2017).また,修正3ヵ月齢児の極低出生体重児における自発運動を解析し,後に自閉症スペクトラム障害を呈した児における頸部・頭部の運動特性について明らかにした(Gima et al,2018).3次元動作解析装置や姿勢センサなどのツールを用いた満期産児の運動計測にも取り組んでおり,定型的な運動発達における自発運動特性のメカニズムについても検討を進めている.
 平成29年度においては,2件の学会発表が行われ,2件の論文(和文1件,英文1件)が掲載された.現在も継続したデータ解析に取り組んでおり,次年度以降も継続申請の上で成果報告を行っていく予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成29年4月〜平成30年3月

【論文発表】
・儀間裕貴, 渡辺はま, 木原秀樹, 中野尚子, 中村友彦, 多賀厳太郎: 極低出生体重児におけるFidgety movements評価と四肢自発運動特性, 理学療法学, 44, 115-123, 2017年4月(第9回優秀論文表彰最優秀賞受賞)
・Hirotaka Gima, Hideki Kihara, Hama Watanabe, Hisako Nakano, Junji Nakano, Yukuo Konishi, Tomohiko Nakamura, Gentaro Taga. Early motor signs of autism spectrum disorder in spontaneous position and movement of the head. Experimental Brain Research, 236(4), 1139-1148, February 2018

【学会発表】
・儀間裕貴,島谷康司,中野尚子,渡辺はま,多賀厳太郎:Fidgety movementsの観察評価と四肢自発運動特性.日本赤ちゃん学会第17回学術集会(平成29年7月,福岡)
・儀間裕貴,島谷康司,中野尚子,渡辺はま,多賀厳太郎:3次元動作解析装置を用いたFidgety movements 特性の検討.第17回鳥取県理学療法士学会(平成29年11月,鳥取,学会奨励賞受賞)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:General movements に関する研究
日時:平成30年1月13日(土)10:00-17:00
場所:統計数理研究所 セミナー室
参加人数:5人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大村 吉幸

東京大学

小西 行郎

同志社大学

多賀 厳太郎

東京大学

高谷 理恵子

福島大学

中野 純司

統計数理研究所

中野 尚子

杏林大学

渡辺 はま

東京大学