平成152003)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

15−共研−10

専門分類

9

研究課題名

氷床コア解析データーを用いた精密な大気組成復元法の確立

フリガナ

代表者氏名

フカザワ トモコ

深澤 倫子

ローマ字

Fukazawa Tomoko

所属機関

科学技術振興事業団

所属部局

戦略的創造研究推進事業

職  名

さきがけ研究21研究者

所在地

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研究目的と成果の概要

南極大陸に存在する巨大な氷の塊(氷床)は、過去数十万年の間に雪と共に堆積
した様々な物質を保存しているため、過去の気候や環境についての情報源である。
氷床深層部から掘削した氷の解析により、産業革命以降の二酸化炭素増加に伴う平
均気温の上昇や、氷期?間氷期サイクルに伴う大気組成の変動等、過去の地球環境
に関する重要な知見が得られている。ところが最近になって、氷床中に存在する過
去の空気分子が長い時間をかけて氷床内部を拡散移動していることが明らかになっ
た(Geophys.Res.Lett.26(1999)91)。氷床内で起こる拡散は空気分子の分布を
変化させてしまうため、掘削した氷床氷から分析した空気成分の組成は、過去の大気組
成を正確に再現していないということになる。従って、氷床解析データから、正確な過
去の大気組成の情報を読みとるためには、氷床において分子拡散が生じる以前の空気分
子の分布を復元することが不可欠である。本研究では、氷床における空気分子のダイナ
ミクスを明らかにし、氷床解析データーを用いた精密な大気組成復元法を確立すること
を目指して研究を進めている。本課題では、統計数理研究所の福水健次助教授との
共同研究を実施し、氷床における分子分布の時系列変化の数理モデル化に取り組ん
だ。まず、氷床表面から岩盤まで、厚さ約3500メートルにおよぶ氷床内の空気
分子の分布の時空間変化を、拡散方程式を基に定式化した。このモデルを用いて、
計算プログラムを構築し、約40万年間の分子分布の時系列変化を年単位のステッ
プで計算することに成功している。このモデルの完成により、温室効果気体である二
酸化炭素やメタンの過去数十万年におよぶ濃度変動と近年問題になっている地球温暖化
との関係を正確に把握することが可能になると期待している。
発表論文
(1)Tomoko Ikeda-Fukazawa and Takeo Hondoh:Behavior of air molecules in polar ice
sheets,Memoirs of National Institute of Polar Research 57,pp.178-186(2003).
(2)Tomoko Ikeda-Fukazawa and Katsuyuki Kawamura:Molecular dynamics studies of
surface of ice Ih,Journal of Chemical Physics 120,pp.1395-1401(2004).
(3)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Katsuyuki Kawamura,and Takeo Hondoh:Diffusion of
nitrogen gas in ice Ih,Chemical Physics Letters 385,pp.467-471(2004).
(4)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Katsuyuki Kawamura,and Takeo Hondoh:Mechanism of
molecular diffusion in ice crystal,Molecular Simulation(in press).
(5)Tomoko Ikeda-Fukazawa,Kenji Fukumizu,Kenji Kawamura,Shuji Aoki,Takakiyo
Nakazawa,and Takeo Hondoh:Effects of molecular diffusion on paleo-atmospheric
reconstruction from polar ice core,Earth and Planetary Science Letters(submitted).
(6)Tomoko Ikeda-Fukazawa and Kenji Fukumizu:Solution of gas molecules in ice crystal,
Chemical Physics Letters(submitted).