平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−83

専門分類

7

研究課題名

東洋医学の臨床評価法

フリガナ

代表者氏名

ツタニ キイチロウ

津谷 喜一郎

ローマ字

所属機関

東京医科歯科大学

所属部局

難治疾患研究所

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

漢方薬や鍼灸などのいわゆる「東洋医学」は数千年の歴史をもち現在でもなお広く用いられている。その使用の妥当性は基本的には歴史的に蓄積された情報を基にしているが,近代の保健サービスの中でそれが用いられる場合,保健行政から臨床における意志決定までの種々のレベルで「無作為比較試験」を代表とする近代的評価法などとどう適応させるかが問題となる。本研究では,近代的評価法の東洋医学の分野への導入の歴史的プロセス,現状,その問題点,さらに解決法について調査研究する。



第2年度は、まず本共同研究メンバーが主体となって、1994年に青森で作成された“WHO guidelines for clinical research on acupuncture”の日本語訳の作業がなされた。本ガイドラインは、無作為化比較試験を中心としたものであるが、他に、コホート研究、症例対照研究、逐次試験デザイン、単一被験者実験デザイン、clinical audit、鍼疫学(acupuncture epidemiology)、医療人類学的研究などの方法をも含む。本訳を用いて、1995年6月の広島での全日本鍼灸学会でワークショップが行われた。また、本ガイドラインは、中国語、ベトナム語訳が作成され、これを用いて、上海、広州、ハノイ、ホーチミンシティーでも、WHOによるワークショップが開かれ、さらに、イタリア語訳、韓国語訳の作業も進行中である。
ついで、このガイドラインにも記された単一被験者実験デザインについてのレビューがなされた。医薬品承認のための行政的要請もあり、1960年代から、集団を対象としたパラレルデザインが医学界では主流となったが、本デザインは、心理学・行動科学の分野では引き続き用いられ、近年、東洋医学領域においても再評価されつつある。東洋医学の分野においては、(1)患者数の点から、開業鍼灸師のレベルで容易に実施できる、(2)個々の患者の意向に基づきエンドポイントを設定し試験を行うことは、東洋医学の思想に近い、などの利点がある。個々の患者から集団への generalizabilityには問題があるものの、より積極的に東洋医学の分野で用いられるべきものと考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1)全日本鍼灸学会・情報評価班(監訳):鍼の臨床研究のためのガイドラインと勧告.全日本鍼灸学会雑誌,45(2):153-168,1995.
(2)七堂利幸:サンプルサイズの求め方に関する文献・ソフト.全日本鍼灸学会雑誌,45(4):269-277,1995.
(3)桑田 繁:臨床研究における少数被験者法のデータに対する時系列分析の妥当性の検討.運動・健康教育研究,5(1):24-30,1995.
(4)川喜田健司(訳):鍼の臨床試験において対照として何を使うべきか? 医道の日本,612号 (1995年8月号):10-21.

川喜田健司(司会):全日本鍼灸学会・情報評価班,泌尿器班,肩こり班合同ワークショップ.1995年6月2日(広島).(同・報告として,補足的論考とともに,全日本鍼灸学会雑誌,45(2):135-140,1995.に掲載)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

<研究計画>1)漢方薬・鍼灸の各分野における,近代的評価法を用いた文献の収集とデータベースづくり 2)臨床試験論文の質評価のためのクライテリアの収集と分析 3)近代以降の日本における鍼灸に関する論争の経時的分析,いわゆる鍼に関する推計学論争に関して収集された文献にもとづきそのリストづくりと解析 4)研究プロジェクトの調整のための研究者間の打ち合わせと討論<統計数理研究所との共同研究実施の必要性>本研究は,臨床薬理学者,東洋医学の臨床家,教育者を中心に,東洋医学における実際のニーズにもとづいて発案されたものであるが,対象領域が統計学を用いたものであるため,この分野の基本的な資料を保有し,また経験と実績を持つ専門家との共同作業が必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川喜田 健司

明治鍼灸大学

桑田 繁

くらしき作陽大学

七堂 利幸

大素堂

西條 一止

筑波技術短期大学

柳本 武美

統計数理研究所