平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−65

専門分類

7

研究課題名

全身性エリテマトーデスにおける大腿骨頭壊死症の予見的疫学調査−原因とリスク要因の解明をめざして−

フリガナ

代表者氏名

オノ ケイ

小野 啓郎

ローマ字

所属機関

大阪大学

所属部局

医学部附属病院

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

10 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年特発性大腿骨頭懐死症(以下ANF)の発生頻度は激増しており,とりわけステロイド投与に伴って発症するものが多い。その基礎疾患としては全身性エリテマートーデス(以下SLE)に代表される膠原病が多い。そこでSLE症例にしぼって予見的疫学調査を行い。ANFの原因とそのリスク要因を明らかにすることを目的とする。


近年,特発性大腿骨頭壊死症(ANF)の発生頻度は激増しており,とりわけステロイド剤投与に伴って発症するものが多い。その基礎疾患としては全身性エリテマトーデス(以下SLE)に代表される膠原病が多い。そこでSLE症例に絞って予見的疫学調査を行い,ANFの原因とそのリスク要因を明らかにするため,調査データの統計的分析を行った。
本研究は,昭和59年度から昭和62年度に厚生省の特定疾患ANF調査研究班(以下ANF研究班)が行った「膠原病を対象としたANFの発症と要因に関する全国調査」の資料データ(各種血液検査の末梢血成分,生化学,血清,脂質,免疫学的検査など)について,SLE患者にステロイド剤大量投与によるANF疾患発生のリスク要因の統計的分析を行った。分析は主に,主成分分析によって行った。
今回行ったSLE患者にステロイド剤大量投与した解析症例は93例(うちANF発生11例)で,これらの検査成績データについて解析を行った。解析により次の結果を得た。
すなわち,単独寄与因子として生化学のBUN,Creatinine(Cr),GPT,脂質のCholesterol(Ch)のいずれかの増加,並びに総脂質(TP),免疫グロブリンのIgGの減少,さらに主成分分析の結果から第1危険因子として,Ch.LDH,BUN,Crの増加,並びにRBC,TP,IgGの減少を同時に来す「急激な腎機能の悪化を伴うネフローゼ症候群など」。第2危険因子として,RBC,Hb,PLT,A/Gの増加並びにGOT,IgGの減少を同時に来す「高度の脱水など」。第3危険因子として,GOT,GPTの増加,並びにIgAの減少を同時に来す「急激な高度の肝障害と,それに伴う急激な蛋白合成の低下並びに高度の食欲不振による栄養障害など」。第4危険因子として,WBC,PLT,IgMの減少を来す「高度の造血障害など」。第5危険因子として,RBC,Hb,Crの減少を来す「急速な大量出血など」。これ等の多因子の関与を明らかにした。しかし,今後,更に予見的調査を継続,データを蓄積すると共に,ステロイド剤大量投与を必要とする諸疾患とANF疾患の発生機序を解明するためのデータ解析法の研究が必要である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

小野啓郎,東島利夫,駒澤勉等,厚生省特定疾患特発性大腿骨頭壊死症調査研究班,昭和63年度研究報告,「SLEを対象としたANF発症の予見調査」,および「総括研究報告」と「疫学分科会報告」,平成元年3月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ANF未発症のSLE症例につき,各種血液検査(末梢血成分,生化学,血清,脂質,免疫学的検査など)を定期的に(ステロイド大量投与時には1カ月毎,維持量投与の際は6カ月毎)行い,その都度X線,骨シンチ,MRI等でANF発症の有無を検索する。これらの調査結果は,統計数理研究所に送付,蓄積される。
かかる追跡を数年にわたり継続しANF発症例と非発症例との比較を行い,その結果からANFの発症リスク要因を明らかにする。すでに昭和59年度から62年度までに厚生省研究班においてSLE152例を蓄積しておりうち7例にANF発症をみたがいまだ統計学的に有意なリスク要因は判明しておらず,今後さらに統計数理研究所との密なグループ共同研究を推進する必要がある。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏崎 禎夫

北里大学

駒澤 勉

統計数理研究所

高岡 邦夫

大阪大学

長沢 浩平

九州大学

根来 茂

大阪大学

東島 利夫

順天堂大学

本間 光夫

慶應義塾大学

三森 経世

慶應義塾大学

宮本 紳平

大阪大学