平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−90

専門分類

8

研究課題名

縄文貝塚のデータベースとモデル作成

フリガナ

代表者氏名

ムラカミ マサカツ

村上 征勝

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

世界各地で観察される先史時代の貝塚の中で,日本の,とりわけ千葉県に集中する縄文貝塚は,型式においても分布密度においても,世界で有数なものである。規模をもとに大きく分類すると,大型貝塚と小型貝塚があり,型式で分類すると,環状形・馬蹄形・点在貝塚等がある。
考古学者の努力で,多くの貝塚の発掘調査が進められ,報告書が出版されてきたので,それらをもとにデータベースを作り,時期別・地域別のモデルを作り,広く環太平洋にみられる貝塚文化の中で,縄文モデルを提出したい。


千葉県における縄文貝塚は,十数年前に専門家による徹底した遺跡確認調査が行われ,約550の貝塚が確認された。数の上からも分布密度の上からも,第二位の宮城県を大きく引き離し,日本一であることは間違いない。中には,日本最大規模をもつ加曽利貝塚をはじめ,学史上重要な貝塚が多く含まれている。
われわれの研究目的は,千葉県における貝塚のデータベース作成と,これをもとに,千葉県で代表する日本の貝塚モデルの作成にある。一口に貝塚といっても,実はいろいろの貝塚が存在しており,それらを時期別に,また立地条件別に分類し,それぞれのモデルを作ろうというのである。
データベースは出来上っている。ロータス1・2・3を利用して,550の貝塚の情報を入れ終った。そこで,単純集計も各項目ごとに終わり,報告書を書きあげようとした。ところが,この550貝塚のうちいくつかは,名前のみで現存していない貝塚もあり,また,縄文時代から弥生時代・古墳時代まで続いた貝塚もあり,単純集計をとると,縄文貝塚にあってはならない情報も入ってきたので,それら(約100)を取り除いて単純集計を行ってみた。総数は少なくなったが,この後者のデータベースの方が,考古学の専門家からは受け入れられるので,このデータベースを基に,いくつかのモデル作成を考えている。
規模の上から縄文貝塚を,大型貝塚と小型貝塚とに分類すると,大型貝塚は,環状形あるいは馬蹄形を成し,小型貝塚は点在形が主体となる。時期別に分類すると,考古学上は5期(早・前・中・後・晩期)に分けるのが一般的だが,ひとつの貝塚が複数期にわたって継続・存在したのが普通であることから,各期ごとというよりか,3期(前・中・後),あるいは2期(前・後)に分けようと考えている。立地条件から考えれば,海浜と内陸タイプに,あるいは,低地と台地とに分類できる。
モデル作成のため,主成分分析を利用したい。各変数の中の項目別の寄与率から,ある一定の水準をもうけて,それ以下を切り捨てる。なるベく単純化した形の典形例を作ることを目標にする。モデル同志の比較はもとより,将来,外国の貝塚モデルが作られるとき,国際比較もする予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

発掘調査が,毎年2万件を超えるようになった昨今,考古資料の膨大な蓄積がみられる。資料整理が完了されたものは,部厚い報告書として出版されるわけだが,個々の遺跡のデータは報告されても,遺跡間を比較するには量が多過すぎることもあり難しくなってきた。今までの比較研究をみると,研究者がたまたま知り得た資料で,しかも主観を混じえた資料選択をもとになされたもので,かたよりの激しいものであった。
この現状を憂えた研究者は,データベース作成を考え,ここ10年間のあいだに考古学界でも数例(例えば平成京の木簡,古墳の墳丘等)が作られるようになった。まだ完成されたデータベースは皆無であるが,関係者の話を聞くと,現在はデータベースの作成が主で,その先の分析は考えていないと言う。残念ながら,考古学者には,データベースを基にした統計分析を行う能力は持ち合わせていないのが実情である。
われわれは,千葉県の貝塚データベースを作成し,単純集計以外に,モデル作成を考えている。その際に,どうしても統計分析(数量化・クラスター・判別分析)が必要となる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安達 新

八千代市郷土資料館

植木 武

共立女子短期大学