平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−23

専門分類

3

研究課題名

音楽演奏のモデリングと解析

フリガナ

代表者氏名

タグチ トモヤス

田口 友康

ローマ字

所属機関

甲南大学

所属部局

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

音楽演奏における芸術的解釈は,楽譜に対する演奏家固有の演奏情報付加を伴った楽譜から音響的事象への写像と見る事ができる。本研究は,このプロセスを演奏のモデリングという観点から把握し,演奏家が付加した演奏情報の諸パラメータ値を同定する。


音楽演奏とは,楽譜に対して演奏者が独自の演奏情報を付加しつつ楽譜を音響的事象へ写像する行為であると見ることが出来る。本研究は,このプロセスを演奏のモデリングという観点から把握し,演奏が付加した演奏情報の諸パラメータを同定することを目的とする。
ピアノ曲の演奏における速度リズムとフレージングアゴーギクの分析を主な対象に選び,今年度は
1)これを同定するベイズモデルの考察
2)3拍子系の速度リズムの静態的および動態的な表示法の検討
3)演奏データ収集のための音響信号処理システムの開発整備を行った。
1)については,具体的な一つの定式化を行い,パラメータ決定のアルゴリズムの候補を検討した。2)では,予備研究にあたる下記論文[1]で用いられた表示法の批判的検討を行い,後者の問題について新たに静態的な表示法と動態的の表示法を各一つづつ導いた。
我々の研究仮説を実証するためには,楽曲とピアニストとを系統的に組み合わせたデータをある程度必要とする。これを市販のCD,レコードより得るためには,とくにピアノ音の打鍵時点を精度高く同定する音響信号処理の仕事を大量に行わなければならない。そこで3)の課題として,DAT(ディジタルオーディオテープ)をベースにした音楽音響信号のサンプリングと周波数分析,時間域における倍音成分の同定,グラフィック表示とその画像出力,任意の時間域・周波数域の窓に入る倍音成分強度の時間エンベロープの対話的抽出,等の機能をもつシステムの開発・整備を行った。
上記の研究経過をもとに,次年度は具体的事例について我々の方法を適用して,演奏のモデル化の問題をつめて行きたい。
1.Taguti−Ohta:Agogics as a metrical rhythm and phrasing,Proc.1st Intn’1.Conf.onMusic Perception and Cognition,pp.219−223,Oct.1989,Kyoto. (以上)


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

芸術的演奏がいろいろな程度において記譜からずれていることは,Seashore(1938)以来知られており,その物理的分析ならびに心理学的分析は昨今の音楽音響学,音楽心理学の大きな課題である。しかし,それら研究の多くは個々の事象の部分的な観察分析や一曲全体にわたる時系列データの統計的処理の報告である。我々は楽譜から音響的事象への写像を,音楽の文脈ないしは構造を反映した演奏のモデルとそのパラメータ付値という見方で分析するものであり,この考え方は他にない。
本研究は,田口と太田が取り行なって来たこれまでの方法論を,Bayesian model等の手法を加えた新たな視点から田辺と共同で考究し,より深めようとするものである。その際に必要な研究作業上の助力を荒畑から得る。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

荒畑 恵美子

統計数理研究所

太田 雅久

甲南大学

田辺 國士

統計数理研究所