平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

急性骨髄性白血病における免疫細胞療法プロトコルの設計

フリガナ

代表者氏名

ニシヤマ ノブアキ

西山 宣昭

ローマ字

Nishiyama Nobuaki

所属機関

金沢大学

所属部局

国際基幹教育院

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

37千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究では、平成29年度までに作成した白血病細胞と免疫細胞との相互作用モデルを用いて、臨床知見を再現するパラメーターの推定を行い、最適な治療プロトコルの設計を目的とした。白血病芽球細胞(L),、制御性T細胞(Treg)、CTLやNK細胞など白血病幹細胞および白血病前駆細胞を障害するエフェクターT細胞(Teff)、以上3種の細胞の末梢血における細胞濃度を変数とする本モデルは、LによるTregの細胞増殖・分裂促進とTregによるTeffの抑制を介したL の細胞増殖・分裂促進からなるポジティブ・フィードバックループを特徴とし、平成29年度までに、saddle-node分岐を伴う2重安定定常状態が広いパラメータ範囲で存在することを確認している。平成29年度までに、急性骨髄性白血病患者について報告されている誘導化学療法後の寛解状態でのエフェクターT細胞(Teff)であるCD3(+)CD8(+)細胞と制御性T細胞(Treg)であるCD3(+)CD4(+)FoxP3(+)細胞の細胞濃度の回復曲線に基づき、MCMC(Markov chain Monte Carlo)法を用いてTeffとTregの速度式に含まれるパラメーター推定を行った。今年度は、パラメータ推定のアルゴリズムを見直した結果、臨床で得られている再発過程でのLの増加曲線を用いたLに関するパラメーターを推定できた。このことにより、臨床データに基づいたすべてのパラメーターの推定が完了した。
 誘導化学療法によって達成された完全寛解状態における微小残存病変(MRD、Minimal Residual Disease) とリンパ球(ALC, Absolute Lymphocyte Counts)の値に基づいて層別化された患者集団に対応するパラメーターセットを推定パラメーター値の近傍において探索した結果、Teffの流入速度とLによるTregの流入速度変調のしきい値の組み合わせによって、層別化された患者集団で観察されているL(MRD)とTeff(ALC)の定常濃度をおおよそ再現できた。
 以上の通り、今年度、すべてのモデルパラメーターについて臨床的に妥当な値を推定し、完全寛解を特徴づける臨床知見を再現することができた。今後は、免疫チェックポイント阻害剤投与後に観察されている免疫細胞のプロファイルが、Teffの流入速度の増大とLによるTregの流入速度変調のしきい値の増大とに対応していることに注目して、これら2つのパラメーターの時間変化による再発抑制について計算機実験を行う予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

現在、論文作成中。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

三分一 史和

統計数理研究所