平成302018)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

30−共研−1022

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

7

研究課題名

古代社会の人口動態の推定

フリガナ

代表者氏名

ツチヤ タカシ

土谷 隆

ローマ字

Tsuchiya Takashi

所属機関

政策研究大学院大学

所属部局

政策研究科

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 古代社会の人口の推定は、考古学や歴史学における重要な研究テーマの1つである。ヌジ人名史料から復元された家系図および個人名が記載されるヌジ文書の情報を用いて,古代メソポタミアの時代のヌジ社会の人口動態推定を行い、紀元前15世紀における世界の中の1小都市ヌジの人口推定としての妥当性について考察している。
  「ヌジ人名史料」は、個人名を索引の形式でアルファベット順に整理した書物であり、名前が登場する契約文書名と彼らの親族情報がえられる。当初は、この史料のうちの使用可能な全データを用い、家系図およびその他の情報との相互関係を凸2次計画問題として定式化することにより、ヌジ社会の人口動態推定を行った。その後、全人口の97パーセントを占めるテヒプティラの家系図のネットワークに特化した凸2次計画問題を解き、前述の結果と比較・検討することを試みた。後者の場合、個々の生誕年・死亡年は一意には決まらないまでも、寿命の長さをランダムに仮定しても、ある特定の人々に対しては寿命の長さがユニークに定まることを確認した。さらに考古学者Maidmanらの書物や助言による情報(「ヌジ人名史料」から自動的には到底読み取ることのできない情報)を、先に求めた凸2次計画問題に組み込むことによって新たな知見を得、契約文書の成立年の順序をより精密に設定でき、有力者の土地取得の過程と矛盾しないことを確かめた。
 ヌジ人名史料から得られた比較的大きな家系図とその他の家系図との関係について、地主と小作人、富豪と庶民というような関係が家系図を比較することによって文書を介した関連から見いだせるかどうか試み、得られた結果から見えてくる社会の構図について議論した。当時の社会が中央集権的な社会であったのか、あるいは比較的平等な社会であったのかを図る指針を与えるものと思われる。また、先行研究における最大家系図テヒプティラの家系と、コンピュータ・プログラムにより自動的に構成された我々の家系図との相違点について検証した。同一の家系図に属すると見なす条件の相違、確率的に同一家系図と見なすプログラム設定の相違が考えられる。人口の相当部分を占める、一人あるいは親子二人からなる家系図の解釈について探索を始めている。
 Nuzi Personal Names の元データをデータベースとして作成し、これまでの本研究課題の解析結果の公開を目指して準備を進めている。
 分担者とはSkype、LINE、 mailによる連絡および月1・2度の会合を通じて議論を進めている。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

上田 澄江

統計数理研究所

牧野 久実

鎌倉女子大学