平成242012)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

24−共研−4201

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

調査票の設計が回答に与える影響について−マスコミ効果調査の個票データを用いて−

重点テーマ

社会調査関連資源の利活用

フリガナ

代表者氏名

ヒライ ヨウコ

平井 洋子

ローマ字

Hirai Yoko

所属機関

首都大学東京

所属部局

人文科学研究科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

1.はじめに
心理学研究では,測りたい特性(性格特性,態度,意識など)の指標となる質問項目を複数集めた「心理尺度」が頻繁に利用される。ひとつの質問紙に複数の心理尺度を盛り込んで実施するが,その際,同じ尺度の項目が連続しないようにランダムに混在させ,評定尺度の形式も統一するのが一般的である。
ここで懸念されるのが,社会調査法でしばしば指摘される,質問項目の順序効果(同化や対比,質問解釈の誘導)や評定尺度の形式の変更による影響である。先行研究は,こうした効果を意図的に作り出す研究を行って効果を検討しているが,実際の調査でも懸念されるほど生じているのかどうかを調べる。

2.データ
マスコミ効果調査(略称EF調査)は,1954年(昭和29年)から1982年(昭和57年)まで52回にわたって統計数理研究所が行った調査である。『日本人の国民性調査』と異なり時事的なトピックを主に扱い,世論形成に対して新聞を中心としたマスメディアの影響を調べることを目的としている。一部の年度・項目で,調査票の設計に関する比較実験(質問項目の提示順の効果,先行する質問項目の有無,選択肢の提示順の効果,ワーディングの効果)が行われている。対象は東京23区の有権者で,40から50地点の約1,000人を対象に個別訪問面接聴取法で実施された。
この調査の個票が保存されていたので,回答を電子化して調査回別にweb上に公開した(http://survey.ism.ac.jp/ef/index.html)。web上では,全体,性別,年齢層,性別&年齢層,最終学歴別に集計結果を見ることができる。質問項目間のクロス集計表は,web上では集計できないが,データにアクセスすれば可能になっている。年度間で共通した質問項目の時系列的な比較表示はまだ途中になっている。

3.結果
まだ分析に取り掛かった段階なので,一部のみ報告する。
「政治問題に対する関心」を1966年(EF27)の赤版と白版で比較する。この質問は,白版では問4と冒頭近くに置かれているが,赤版では外交・防衛・政治・国内経済の問題などについていろいろ答えた後の問24に配置されている。結果は,「関心がある(白24%,赤24%)」では違いがなかったが,「やや関心がある(白36%,赤44%)」は位置が後に配置された方が増え,逆に「あまり関心がない(白28%,赤26%)」と「関心がない(白12%,赤6%)」は,位置が後に配置されると減少している。国政に関わる様々なトピックに回答しているうちに,政治問題に関する関心が喚起されたものと考えられる。
質問の順序効果やワーディングの効果,回答形式の効果などについては,今後の検討課題である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.調査回別個票データの公開URL
http://survey.ism.ac.jp/ef/index.html

2.成果発表
統計数理研究所共同研究リポート296 「社会調査関連資源の利活用(2)?階層意識の調査などをめぐって」 2013年3月 統計数理研究所

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本研究単独では開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

土屋 隆裕

統計数理研究所