平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−85

専門分類

8

研究課題名

古墳時代における東国地方豪族の政治的領域配置

フリガナ

代表者氏名

ウエキ タケシ

植木 武

ローマ字

所属機関

共立女子短期大学

所属部局

生活科学科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

西暦4世紀から7世紀の東国において,複数の地方豪族達の政治的勢力範囲を,前方後円(方)墳の墳丘計測値をもとに追求する。首長階級の墓であった前方後円(方)墳は,高度な土木技術をもって初めて築造可能で,この技術は,伝達されたと仮定する。そこで,類似する形態の古墳を地図上にプロットし,その集合と分散をもとに当時の勢力範囲を復元する。


西暦4世紀から7世紀の東国において、複数の地方豪族たちの政治的勢力範囲を、前方後円墳の墳丘計測値をもとに追求しようと試みた。ただし、その前に墳丘の形態変化が、経時的に追跡できるのかどうかも検証したかった。
首長クラスの墓であった前方後円墳は、高度な土木技術をもって初めて築造可能で、この技術は、特殊技法として伝達されたと仮定する。そこで、築造時期を把握した上で、類似する形態の古墳を地図上にプロットし、その集合と分散をもとに当時の政治的領域を復元することを目標とした。
墳丘の大きさや高さはそれなりに意味を持つが、当該研究では、あえて墳丘各部の比率値を利用することにした。理由は、偉大な首長であった父の息子は、意図的に小規模の墳墓を成作したかもしれないからである。
まず本年度は、群馬県の毛野地方から始めた。ここは、記紀の時代に東国において一大センターとして栄えた地方で、大型前方後円墳の分布密度が一番大きい。クラスター分析を行うと、考古学的に判明している築造時期別に、きれいに分類され、その整合性に驚くほどであった。そこで、対象地域を下野(栃木県)と常陸国(茨城県)に広げ、同じくクラスター分析、数量化3類分析、主成分分析をしたところ、かなりの精度をもって築造時期と整合性がみられた。地図上にプロットすると、かなり広範囲に分布するが、やはり、毛野・下野・常陸という中心がみられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

植木武・大塚初重・梅沢重昭・岸野洋久「北関東における古代豪族の政治的割拠-古墳墳丘の形式・築造時期・分布からの考察-」数理的分析計画研究班,pp.95-102.統計数理研究所
植木武・大塚初重・梅沢重昭・岸野洋久「前方後円墳から考察する東国地方における政治的領域分布の試論」考古学における計量分析−計量考古学への道(5):26-44.統計数理研究所

植木武・大塚初重・梅沢重昭・岸野洋久「前方後円墳から考察する東国地方における政治的領域分布の試論(2)-時空間からみた墳丘計量解析-」日本情報考古学会第1回大会発表要旨pp.39-43.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

古墳研究では,内部主体の研究と副葬品の研究は最も重要なところであるが,発掘調査不可である陵墓や,盗掘でカラッポの前方後円墳は多く,そこで墳丘の形態研究がクローズアップされる。大型土木技術をともなう古墳築造技術は,大変高度なもので,この技術は伝播する。もし,技術者を派遣したり,あるいは,その首長そのものが新地に移転してくれば,当然ながら新たに構築される前方後円墳は,以前のものと類似するわけである。墳丘の類似性を追求すれば,当時の地方豪族の政治的勢力範囲が判明するわけで,文献以前の時代に貴重な事実が推定されることになる。長軸,短軸,後円部の半径,前方部の長さ等はもとより,各部の比率をもとにその類似を比較し,統計処理を必要とする。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岡安 光彦

奈良先端科学技術大学院大学大学院

村上 征勝

統計数理研究所