平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−56

専門分類

7

研究課題名

臨床ケア情報の統合化(在宅看護を中心として)

フリガナ

代表者氏名

オオノ ユウコ

大野 優子

ローマ字

所属機関

(財)東京都神経科学総合研究所

所属部局

社会医学研究部

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

臨床患者情報は,定性,定量,画像,離散・連続,観察間隔の不定期性と様々であり,統合化の困難なものである。特に定性的情報は看護系職員による記述が多く従来,とり残されてきた感がある。本研究では包括的な臨床ケア情報システムの構築を目的とし,これらの情報の計量的表現を試みる。また,状態の記録としても効率的な記述法も検討する。対象として,看護系に情報が集中する在宅看護を考える。


(1)がん患者のターミナル期における在宅療養について 1987年から1990年までの4年間に調査病棟で外泊を検討した55症例について、外泊実践までのスケジュールと経過をアンケート調査し、在宅実施へのスケジュールモデル、外泊(在宅)時の準備器材、在宅実施におけるボトルネック要因などを検討した。又、実施前後の状況をVTR記録し、器材準備内容・家族への説明内容・実施手順の検討を試みた。
結果:(1)外泊(在宅療養)を検討した55症例のうち、実践できた例は31例で、実践できた場合もできなかった場合でも、患者から外泊の検討を希望した場合が最も多く、ついで看護婦が検討を勧めたものが多かった。(2)外泊(在宅療養)実施できなかった例では、患者が同意しなかった(家族への気兼ね、病状の理解不足など)、家族の同意が得られなかった(患者の療養について自信がない等)、医師の反対(状態悪化の危惧等)が有り、実践できた例でもコンセンサスをとるまでかなりの障害が約40%に見られた。(3)在宅実施のスケジュールモデルでもコンセンサスを得るまでの期間、得た後の実践予定日までの期間、実践直前・実践、および病院に戻って後という4期間についてそれぞれ検討すべきことが分かった。(4)実践直前・実践の期間で準備すべき器材のリストアップと場合分けを検討した。
(2)神経難病患者の在宅看護情報について 筋・神経系疾患の在宅長期療養患者について、在宅看護内容の定量的評価を行うことは、主たる介護者となる患者家族の仕事量と負担度の評価、地域ケア・システムの有効施策評価の上から重要である。本年度は、在宅看護内容を的確に表現するための項目設定と、負担度の評価をタイムスタディを主とした調査から検討を試みた。
筋萎縮性側索硬化症患者の受療経過に関する研究として、地域病院・専門病院・在宅看護の関係を患者調査により試みた。神経難病の場合、医療依存度が高い、コミュニケーションの障害が起こる、呼吸管理が重要となる、等の特徴がある。専門病院の外来利用患者について受療経過をカルテをもとに調査し、病態と受療形態の変化とを検討した。
結果:[在宅看護の負担度評価について]1日のケア量は就寝前に多い;夜間(午前0時から午前7時まで)でも体位交換、吸引、コミュニケーションなどの看護があり看護者の睡眠も分断されている;項目別では食事介護・コミュニケーション・呼吸器ケアに要する時間が多かった。ただし、病状観察とそれに付随する体位交換その他の処置が多く、いわゆる「空き時間」が非常に少なく、動作をしていなくてもつきそう時間が多いことが明かとなった。今後は、負担度の定量的評価法の研究へと進めたい。
[受療経過に関する研究]調査事例274例のうち、42例が調査病院受療継続中で、112例が転院、41例が死亡、残り79例は不明であった。42例の受療内容は、12例が外来(病態が安定している、軽い等)、23例が入院(人工呼吸器装着、介護者がいない等)、在宅が10例(介護者がいる、病態は進行しているが安定等)であった。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

大野ゆう子、筋萎縮性側索硬化症の受療経過について、プライマリ・ケア学会(発表予定)

中沢元香 他、末期がん患者の外泊について、日本がん看護学会、1992年2月
大野ゆう子 他、 ALS患者の受療経過について、難病のケア・システム研究小会、1991年8月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

従来の共同研究で看護情報の収集,記録について,かなり整理されてきた。本年度は在宅看護という看護系に情報が集約される分野を対象とし,情報の計量化・効率的記述について検討を進める。その際,時系列情報,定性的記述のパタン分類,タイムスケールの違い等,既存の手法では扱いの困難な問題を含んでおり,ぜひ,統計数理研究所との共同研究として実施させていただきたい。今後,複数分野の情報を時間軸上に検討していく上で,相互影響評価も試みたい。以上の理由から共同研究としてお願い申し上げます。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

牛込 三和子

(財)東京都神経科学総合研究所

川村 佐和子

東京医科歯科大学

駒澤 勉

統計数理研究所

馬場 康維

統計数理研究所