平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−51

専門分類

6

研究課題名

極運動データの統計数理解析

フリガナ

代表者氏名

カネコ ヨシヒサ

金子 芳久

ローマ字

所属機関

国立天文台

所属部局

地球回転系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地球回転運動の変化は,章動,自転速度変動,極運動という3種類に大別され,極運動は,空間固定軸(ほぼ自転軸に等しい)が地球の対称軸に対して1日より長いタイムスケールで変る現象である。この極運動の観測データを統計数理学的に考察することにより,その運動の物理的要因を解明して極運動の統計モデルを決定する。


地球回転運動は章動,自転速度変動,極運動に大別され,さらに極運動は周期の長い順に永年変動項,約14カ月周期のチャンドラー運動,1年周期の年周運動よりなる。チャンドラー運動の振幅は大きい時期(1911年頃,1953年頃,1982年以後)と小さい時期(1927年頃)あり,これらのことは減衰運動であるチャンドラー運動がランダムな原因に依って励起されているためであるといわれている。その励起源として考えられるのは,大気や海洋の角運動量の変動,地震,その他の地球内部の変動がある。
本共同研究では,大気角運動量関数(AAM関数)とチャンドラー運動の関係を調べた。
1.データ:1984年より現在までの気象庁(JMA)のデータから計算されたAAM関数と,同じ期間の超長基線電波干渉計による精度の良い極運動データ(IRISデータ)を使用した。
2.データ解析方法:IRISデータを複素数周波数によるスペクトル解析(熊沢スペクトル解析)する事により,チャンドラー運動のパラメーターである減衰係数と正確な周期を決定した。これらのパラメーターを使うことにより,IRISデータから励起関数を逆算した。ここで得られた励起関数はランダム性の強いデータとなった。この励起関数とまったく独立なAAM関数との相関解析を行った。
3.結果:チャンドラー周期でコヒーレンスは
0.66になった。従って,チャンドラーの励起関数の66%はAAM関数と線形な関係があることになる。
しかし,2つのデータの共通している期間がまだ短いためにこのコヒーレンス関数が不安定である。より良い解析方法の開発が望まれる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

金子芳久,内藤勲夫,菊地直吉 極運動データとJMAデータの相関
1990年度経緯度研究会集録
Y.Kaneko,M.Ooe,Y.Wako,T.Ishikawa and T.Ozaki,The Gain Function of the Filter obtained by the Method of Least Squares and its Application to the Analysis of the Polar Motions.
Annals of the Institute of Satistical Mathematicsに投稿中


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

光学観測による地球回転運動データは1899年より1987年12月までの88年間の蓄積がある。新技術である超長基線電波干渉計と人工衛星レーザ測距による地球回転運動データは1982年より連続的に得られている。これらのデータから,情報量基準AIC,ABICを用いて統計数理学的に最良のデータ処理方法を選択して,さらに,時間領域のモデルを決定する。これを複素数領域の上半面でのスペクトル解析を行うことにより運動の固有値を求める。統計数理研究所に於いては,情報量基準に関する先端的な研究を行っていて,しかもAIC,ABICの応用に関する蓄積がある。従って本研究の実施のためには統計数理研究所との共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾崎 統

統計数理研究所