平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−34

専門分類

5

研究課題名

生存競争の確率模型による空間的秩序形成

フリガナ

代表者氏名

イトウ ヨシアキ

伊藤 栄明

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

領域統計研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生存競争をする生物系における空間的パターンの研究を行う。各個体のd次元格子上に配置し,隣接格子間だけで反応を認める。2次元のとき系の時間発展は渦点の生成消滅の問題となり,3次元に対しては渦系の生成,消滅の問題となる。渦点や渦系などの空間的秩序形成のダイナミックスを調べる。


生存競争系の格子模型は渦と渦糸についての定常的なパターンをつくりだす(Tainaka(1989))。n個の種の粒子からなる気体モデルをかんがえる。種iの1粒子と種jの1粒子は衝突により確率〓で種iの2粒子になり確率〓で種jの2粒子になるものとする。ここで

格子模型においては衝突は記憶をもち,2体の衝突のみでなく3体以上の衝突も考えにいれるほうが適切であることが理解できる。格子模型を近似したものとして2体の衝突模型を考え粒子の数が十分に大であると考えると次の様な常微分方程式系を得る。
この方程式に不動点〓があるとすると
この系は保存量〓
をもつことがわかる。2体の衝突模型の系に
おいて保存量であって量Iが3体の衝突を考えにいれた場合リアプノフ関数になり,系(1)の不動点に解がちかづいてゆく(Itoh(1981))。
格子模型の場合,衝突は記憶を持ち,3体の衝突を考慮にいれたモデルが自然である。上記の定理より格子模型が定常なパターンを示す事が理解できる(Tainaka and Itoh(1989))。
上記のモデルにおいて

この場合にえられる空間的なパターンについての解釈を試みる。
離散的でサイクリックな高さをもつpressureを考える。すなわち,2は1より高く,3は2より高く,1は3よりも高いものとする。各格子点を中心とする正方形のタイルばりを考える。各正方形の頂点の作る新しい格子を考える。各正方形にはその中心にあるもとの格子点のpressurを与える。あいとなる正方形の辺の中点にpressureの差を値として持つベクトルを高いほうから低いほうへ引く。この様にして各辺の中点にpressure forceを定義する。これらについて正方形のタイルの各頂点,すなわち新しい格子の各格子点(i,j)に流体力学におけるrot(i,j)を自然に離散化した量を定義することができる。右渦,左渦を定義することができる。周期境界条件のもとで右渦の数と左渦の数は等しい。3次元格子模型にこの議論を拡張することができる。この場合,渦糸を定義することができる。周期境界条件のもとでは渦糸はとぎれない等の性質がある。系はこれらの性質をみたしながら変化してゆく(Tainaka and Itoh(1990))。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

文献
Itoh,Y.(1981)Non−associative algebra for a Lotka−Volterra system with ternally interaction,Nolinear Anal.,5,53−56.
Tainaka,K.(1988)Lattice model for the Lotka−Volterra system,J.Phys.
Soc.Jpn.57,2588−2590.
Tainaka,K.(1989)Stationary pattern of vortices or string in biological systems:Lattice version of the Lotka−Volterra model,


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

石,紙,はさみによるジャンケンにもとづいた確率モデルについては本研究所において以前から研究が行なわれている。
渦系の時間発展は,物理の乱流とか,スピン系の問題でもあるので分野を越えて興味のある問題である。
渦点や渦系の生成消滅の様子をビデオによる可視化はこの生存競争系では,比較的容易にできる。これにより現実の統計物理現象の解明をこころみる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

泰中 啓一

茨城大学

西森 拓

茨城大学