平成162004)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

16−共研−11

専門分類

2

研究課題名

統計計算のための並列固有値計算ライブラリの開発

フリガナ

代表者氏名

ヤマモト ユウサク

山本 有作

ローマ字

Yamamoto Yusaku

所属機関

名古屋大学

所属部局

大学院工学研究科

職  名

講師

所在地

TEL

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研究目的と成果の概要

本研究では,主成分分析,正準相関分析をはじめとして統計計算で多用される対称行列の固
有値計算のために,並列計算機向けの高性能ライブラリを開発することを目的としている。
 並列計算機向けの固有値計算ライブラリとしては,従来,共有メモリ型並列計算機向けには
LAPACK,分散メモリ型並列計算機向けにはScaLAPACKが広く使われている。しかしこれらのラ
イブラリでは,計算機のキャッシュメモリの利用効率が十分でないため,固有値計算の実効性
能は計算機ピーク性能の10〜20%程度しか得られないのが実情であり,大規模な統計計算を行
う上でネックとなっている。
 そこで本研究では,行列乗算をベースとした新しい固有値計算アルゴリズムを用いることに
より,キャッシュメモリの利用効率を格段に向上させ,従来法に比べ大幅な高速化が達成でき
るライブラリを開発している。現在までに,単一プロセッサ向けライブラリ及び共有メモリ型
並列計算機向けライブラリのプロトタイプを開発した。性能評価の結果,これらのプロトタイ
プライブラリは単一プロセッサの場合に従来法の2〜3倍の性能,共有メモリ型並列計算機の
場合に従来法の3〜4倍の性能を得られることを確認した。
 また,固有ベクトルの計算については,近年 Multiple Relatively Robust Representations
アルゴリズムと呼ばれる極めて高速・高精度なアルゴリズムが提案されているため,これを本
研究で開発中の固有値計算ライブラリに組み込むべく,関連研究のサーベイを行った。
 上記の単一プロセッサに関する性能評価結果および Multiple Relatively Robust
Representations アルゴリズムに関するサーベイについては,論文およびプレプリントの形で
発表を行った。
 今後は,上記のプロトタイプの速度や信頼性を高めてライブラリとするとともに,分散メモ
リ型並列計算機向けのライブラリ開発も行う予定である。