昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−45

専門分類

5

研究課題名

アモルファス合金の原子構造の統計的研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ ヒロカズ

佐藤 洋一

ローマ字

所属機関

愛知教育大学

所属部局

教育学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

MgCu(2元系)やMgAlGa(3元系)のような様々なアモルファス合金がつくられ,それらの特性が実験的・理論的に調べられている段階にあります。今回の研究目的は,アモルファス合金の原子構造を理論的に研究することです。アモルファス合金中で各々の原子は一定の統計に従って分布しているとした場合と,原子間ポテンシャルエネルギーを利用したシュミレーションの手法で作った原子配列の場合とを比較しながら,実際のアモルファス合金での原子構造の研究をする。


アモルファス合金の原子構造の理論的解明,およびその現実的検証のため電気伝導を求めることを目的とした。
(1)〓のアモルファス合金について
昨年度の共同研究の成果を発展させ,金属中での原子(Mg,Cu)間の実効ポテンシャルと力とを第一原理の手法で求めることができた。すなわち,一般化したOPW法に基づく擬ポテンシャル論を伝導電子とα電子との混成項をもつ合金系に拡張し,数値計算法によって得られた。さらに原子構造は貴研究所の大型計算機を利用して,シュミレーションにより求めた。1,000個の原子集団を立方体の中にランダムに配置し,周期境界条件のもとに先に求めた原子間力を利用して構造の緩和を実施した。この計算では,系の位置エネルギー最小値を探すため,比較的長時間の計算となる。
得られた原子の配列座標より統計的に動径分布関数を求め,観察測定されたものと比較するとピークの位置はほぼ一致していることがわかった。この結果は昨年,秋の日本金属学会(大阪大学)で発表した。
(2)〓の合金について
アモルファスの範ちゅうとしてとらえられている,結晶の微細化による原子構造の研究を行った。
〓(面心立方)合金をほぼ一定の微結晶粒径になるようにし,このときの粒径を変えたとき,結晶間の原子構造がどのようなものか,このときの電気伝導率がどのように変化するかを調べた。われわれは第一段階として最も単純なモデルとして,微結晶の中は完全な面心立方格子にCu(と10%のGaがランダムに置換)があり,境界は空格子という仮定のものである。微結晶の大きさは統計的にGauss分布をしているとした。伝導率の粒径依存性と温度依存性は,実験値と予想外に比較的一致していることがわかった。この結果は,今年秋に行われる“International Conference on Liquid and Amorphous Metals”に発表する予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.日本金属学会(大阪大会場,1988・11・2)
2.International Conference on Liquid and Amorphous Metal(京都,1989・9・4−8予定)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

4月に,本研究についての打合せと,統計学的方法の学習・研究をおこなう。7〜9月にかけ,アモルファス合金での原子構造に関する統計的分布の研究をおこなう。このためには,統計学の深い知見と本研究に関連した分野の研究経験を持つ貴研究所のスタッフとの交流を必要とします。
さらに,金属中での原子間のポテンシャルエネルギーを計算し,8〜12月にかけ電子計算機を利用して,動力学的方法により緩和をくりかえすことにより,原子集団のシュミレーションをおこなう。このシュミレーションは統計的意味を持つように原子数は数千個以上を必要とします。かなり大がかりになるため貴研究所の大型電子計算機を使用させていただければ可能となるものです。
1〜3月には,本研究の整理とまとめをおこなう。統計学的考察をも含めた研究内容であるため,有効な議論が期待できる貴研究所を利用させていただく必要があります。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

馬場 康維

統計数理研究所