平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2056

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

3

研究課題名

生物の個体群動態の統計解析とコンピュータシミュレーション

フリガナ

代表者氏名

ナカギリ ナリユキ

中桐 斉之

ローマ字

Nakagiri Nariyuki

所属機関

兵庫県立大学

所属部局

環境人間学部 環境人間学科

職  名

助教

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は、実際の生物個体群動態のデータを用いて、それを統計解析することにより、様々な生物現象のメカニズムを明らかにすること、また、そのモデルを構築して計算機シミュレーションを行うことによって、検証を行っていくことで、生物進化や適応問題および環境破壊における絶滅などの環境問題を数理解析的な手法で研究するものである。
 本研究の目的は、生物の個体群動態を統計解析することによって、絶滅問題や進化問題に関する理論的研究や環境破壊などの環境変化に対する生物・生態系の反応を明らかにすることである。
今年度は、格子モデルによるシミュレーションを用いて、生態学の絶滅問題と生物の個体群動態と空間の関係について研究してきた。
1)モデル生態系を用いた絶滅問題の研究
確率格子モデルを用いて、生息地破壊による個体群動態への影響を研究した。生息地破壊の効果について、モデル生態系を用いて解析を行った。餌-捕食者の関係をn種に拡張したモデル生態系に、生息地破壊の影響を与えていくとき、絶滅に関してどのような影響があるかを解析した。このモデルについてシミュレーションによる解析を行ったところ、生息地分断化の影響が重要であること、また、系の種数nが奇数か偶数かによって、分断化の影響が異なってくることがわかった。(Ecological Informatics誌に掲載)
2)空間に着目した生物の個体群動態の研究
 生物多様性の保全に対し関心が高まっている中、最小存続可能個体数を考慮して個体群動態を解析する研究はあまり行われてこなかった。そこで、生物の出会いに着目し、最小存続可能個体数を考慮した個体群動態のモデルを確率格子モデルによって構築した。このモデルによって、空間の影響という観点から解析を行い、生物の配置における空間パターンが、生物の最小存続可能個体数へ影響をおよぼしていることが示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・Nariyuki Nakagiri, Yukio Sakisaka, Tatsuya Togashi, Satoru Moritad and Kei-ichi Tainaka Effects of habitat destruction in model ecosystems, parity law depending on species richness,Ecological Informatics Vol.5, Issue 4, p.241-247, 2010年

・Yumi Tanaka, Kei'ichiro Iguchi, Jin Yoshimura, Nariyuki Nakagiri and Kei-ichi Tainaka Historical effect in the territoriality of Ayu fish,Journal of Theoretical Biology,  Vol. 268, No. 1, pp.98- 104, 2011年

・中桐斉之、泰中啓一、生息地破壊による個体群動態への影響:分断化の有効性, 個体群生態学会第16回大会, 2010年9月

・中桐斉之,向坂幸雄,泰中啓一, モデル生態系における最小存続可能個体数と絶滅, 第73回情報処理学会全国大会講演論文集, 第1分冊, 2011年3月

・中桐斉之,最小存続可能個体数と絶滅:格子モデルによる解析,日本生態学会第58回大会,2011年3月

・林木悠佳里,中桐斉之,生息地破壊と絶滅のモデルによる解析:面積減少よりも分断化が重要?, 日本生態学会第58回大会,2011年3月

・中桐斉之,向坂幸雄,泰中啓一,確率格子モデルを用いた生息地分断化の解析:空間の効果の有効性,京都大学数理解析研究所講究録,in press

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

統計数理研究所

向坂 幸雄

茨城県立医療大学

南 美穂子

慶應義塾大学