平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2034

専門分類

7

研究課題名

表皮ランゲルハンス細胞の空間配置モデル

フリガナ

代表者氏名

ヌマハラ トシヒコ

沼原 利彦

ローマ字

Toshihiko NUMAHARA

所属機関

香川医科大学

所属部局

医学部附属病院 皮膚科

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

背景)樹状細胞の一種である「表皮ランゲルハンス細胞」は,抗原提示細胞として皮膚免疫の要となる細
胞である。表皮ランゲルハンス細胞は,様々な視点や方法論で研究されてきたが,その空間配置パターンの
系統的な解析は洋の東西を問わず例をみなかった。沼原利彦は「表皮ランゲルハンス細胞は,その役割をは
たすため,表皮内で空間的に最適配置をしている」と考え,表皮ランゲルハンス細胞の研究に「空間配置指
数」を初めて導入したのが当該研究の始まりである。
 平成10年までの研究成果)ステロイド外用や紫外線照射による空間配置パターンの密度変化に加え分布の
規則性についての定量的統計学的比較を,1992年英文報告した。その後,パソコン上で顕微鏡写真を画像解
析して表皮ランゲルハンス細胞マップを得る方法や,ボロノイ分割等の空間分布パターンの解析を可能にす
るシステムを構築していった。
 平成11年度?平成13年度の研究成果)共同利用登録の形で,沼原利彦とISMの種村正美が共同研究を行
い,正常モルモット表皮ランゲルハンス細胞の空間配置について,密度,規則性,ボロノイ分割パターン,
細胞間の相互作用ポテンシャルモデル式までの一連の英文報告を行い,表皮ランゲルハンス細胞の空間配置
モデル研究の礎となった。平成13年度からは,成果が他の研究者により利用されるように,実験動物をマウ
スにシフトした。
 平成14年度共同利用研究の研究成果)今回,いよいよ臨床応用をめざした研究を考え,
香川医科大皮膚科教授の窪田泰夫も加わり,沼原利彦,窪田泰夫,勝浦純子,ISMの種村正
美の4人を中心に共同研究を行った。テーマは,本邦の藤沢薬品工業が研究開発しアトピ
ー性皮膚炎治療薬としても用いられている免疫抑制剤=タクロリムス軟膏の,表皮ランゲ
ルハンス細胞の空間配置パターンに与える影響を,BALB/cAマウスを用いて検討した。
 タクロリムス軟膏外用により,表皮ランゲルハンス細胞の空間密度と分布の規則性が有
意に減少することを「空間配置の統計」により解明し,世界で初めて報告した。また,タ
クロリムスにより,相互作用ポテンシャルモデル式の形自体には大きな差がないこともみ
いだした。また今回1枚あたりN=250?350の表皮ランゲルハンス細胞地図18枚の解析
を行ったが,そのボロノイ分割パターンにあらわれる多角形の辺数分布は,Tanemura &
Hasegawaが1980年に報告(Geometrical Models of Territory:J.theor.Biol.(1980)82,
477-496)したランダム充填モデルにほぼ一致することを見いだした。
 この成果について,日本皮膚科学会,樹状細胞研究会,皮膚免疫アレルギー懇話会で報
告した。今後,様々な病態や,治療薬による表皮ランゲルハンス細胞の空間配置パターン
への影響評価など,研究の発展が期待されている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【?平成10年 当該研究黎明期に関連する情報源】
Toshihiko Numahara,Toshifumi Nakagawa and Takashi Takaiwa:Mathematical assessment of the spatial
distribution of Langerhans cells in guinea pig epidermis,Journal of Dermatological Science,Vol 4,
p202-207,1992
沼原利彦,中川俊文,高岩 堯:画像処理・画像解析・形の科学への誘い?表皮ランゲルハンス細胞空間配置
の解析?,コンピュータサイエンス,Vol.1,No.1,p5-16,1994
沼原利彦,小島清嗣 編:医学・生物学のための画像解析ハンドブック実践NIH Image講座;羊土社,1995
沼原利彦,小島清嗣:顕微鏡画像の画像解析:日本生化学会編,細胞機能と代謝マップ II.細胞の動的機
能 東京化学同人(東京),264-267,1998
【平成11年?平成13年 共同利用登録の成果に関連する情報源】
沼原利彦,種村正美,中川俊文,高岩 堯,窪田泰夫:表皮ランゲルハンス細胞の空間配置パターン;形の
科学会報14巻3号,194-195,1999(2000年3月発行)
Toshihiko Numahara,Masaharu Tanemura,Toshifumi Nakagawa,,Takashi Takaiwa.Spatial data analysis
by epidermal Langerhans cells reveals an elegant system.Journal of Dermatological Scinece
2001;25(3);219-228《博士(医学)論文:博乙第150号 沼原利彦,香川医科大学,平成12年10月4日》
Toshihiko NUMAHARA,Kiyo NUMAHARA(Kagawa Medical University),Masaharu TANEMURA(ISM),Junko Katsuura,
Yoshie MATSUOKA,Chieko SUGIMURA,Yasuo KUBOTA(Kagawa Medical University):The effect of Tacrolimus
on spatial distribution of epidermal Langerhans cells:The 12th Japan-Korea joint meeting of Dermatology
(2001年11月8-9日東京)
【平成14年 共同利用研究2の成果に関連する情報源】
沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪
田泰夫(香川医大皮膚科):タクロリムスはマウス表皮ランゲルハンス細胞の空間分布を変える:
第101回日本皮膚科学会総会(2002年6月7-9日,東京)/日本皮膚科学会雑誌 112巻5号,p718
沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪
田泰夫(香川医大皮膚科):BALB/cAマウス表皮ランゲルハンス細胞(ELC)空間配置パターン
?タクロリムス外用による変化?:第13回日本樹状細胞研究会(2002年7月12日,岡山)
沼原利彦(香川医大皮膚科),種村正美(統計数理研究所),沼原紀予,勝浦純子,松岡由恵,杉村知恵子,窪
田泰夫(香川医大皮膚科):免疫監視のための陣形?表皮ランゲルハンス細胞の空間配置メカニズム?:第1
回皮膚免疫アレルギー懇話会(2002年10月5日,東京)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

勝浦 純子

香川医科大学

窪田 泰夫

香川医科大学

種村 正美

統計数理研究所