平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2051

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

メタアナリシスの変量効果モデルにおける正確な信頼区間・予測区間の開発

フリガナ

代表者氏名

タケバヤシ ヨシタケ

竹林 由武

ローマ字

Takebayashi Yoshitake

所属機関

統計数理研究所

所属部局

リスク解析戦略研究センター

職  名

特任研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

4千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 メタアナリシスは複数の試験の結果を統合して得られる総合的な治療効果を評価する統計手法である。現在のところ、試験間の異質性を考慮した変量効果モデル(random effects model)を用いた評価が、最も標準的なメタアナリシスの統計解析手法として普及している。しかしながら、近年の研究により、長らく慣用されてきた、DerSimonian-Lairdによるモーメント法による平均治療効果の推定方法には、統計的な誤差を過小評価する傾向があり、現実的な医学研究におけるメタアナリシスの設定では、信頼区間が真値を被覆する確率が名目の信頼水準に満たないことが明らかになっている。最も大きな原因は、DerSimonian-Lairdの方法が「試験数が無限大」という極限モデルのもとで妥当性が成立する方法である点であり、一般的な医学研究のメタアナリシスの設定では、ほとんどの場合、統合を行う試験数は20未満である。
 高次漸近近似などを利用したいくつかの改善策は提案されているものの、根本的な情報が不足している設定のもとで、妥当な推測を行うことは難しい。そこで、本研究では、この問題を根本から解決するために、小標本のもとでも妥当な推測手法となる、正確な信頼区間を開発することを目的とした。
 本年度は、ブートストラップ法やマルコフ連鎖モンテカルロ法を利用して、数値的な解法を利用した、条件付き分布を求め、それに基づく正確な信頼区間の算出法を検討した。具体的には、Lillegard and Engen (1999, J Applied Statist 26: 447-59) による条件付きパラメトリックブートストラップ法による解法によって理論的に妥当なアルゴリズムを構成し、コンピュータによる乱数を用いたシミュレーション実験を実践的な設定のもとで実施することで、経験的な性能の評価を行った。シミュレーション実験の結果、試験数3~20未満の変量効果モデルの平均治療効果に関して、信頼区間が真値を被覆する確率が名目の信頼水準 (95%)を満たすことが示され、正確な信頼区間の推定方法として有効であることが明らかになった。
 今後は、分散成分の信頼区間推定の不安定性の改善、予測区間の推定法への拡張を目的とした検討を進め、一連の成果をまとめて国際誌に投稿する予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

なし

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

五所 正彦

筑波大学

野間 久史

統計数理研究所