平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2020

専門分類

4

研究課題名

個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

Shido SAI

所属機関

岡山商科大学

所属部局

経済学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

280千円

研究参加者数

10 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 個票データを公開する際のリスクを計る場合,標本寸法指標から母集団寸法指標を推定し,その値,特に小さいサイズの頻度を基に評価するのが一般的である。このような推定のために,これまでも様々な超母集団モデルが考案されている。今年度の研究では,昨年度に引き続いて確率分割モデルと呼ばれるモデルについての理論構築が進み,モデル間の相互関係の解明によって,より当てはまりの良いモデルの選択とより良い推定が可能となってきた。この点については来年度も研究を進めたいと考えている。
母集団寸法指標のノンパラメトリック推定は,ペナルティー関数を導入するとともに変数を実数化することによって,106弱のサイズの母集団に対しても計算時間的に適用が可能になった。今年度の研究では,ペナルティー関数に用いられる種々の係数について工夫を図ることにより,最大で1/2倍程度の計算時間に抑えることが可能となり,106を超すサイズの母集団に対する推定も可能となった。今後は108を超すサイズの母集団に対して実用可能な段階にまで理論を引き上げたい。
上記のノンパラメトリック推定は,各個人が複数の団体に重複して所属している場合に,サンプリングされたデータを基にして母集団の所属状況を推定する「所属問題」への応用が容易であることも,下記の合同研究集会で報告された。この問題については構造がすべて明らかになっておらず,モデルを用いる推定方法も考案されていない。この点については来年度,研究を進めていきたい。
 これまで国内ではあまり研究が進んでいない表形式データの秘匿と公開のリスク評価についても今年度は多くの知見が得られた。表形式データは項目数が少ない個票データと見なすこともできるが,一般的には行和,列和が表示されることから,その秘匿方法やリスク評価方法も異なっている。今年度は分割表内で複数のセルの値を入れ替えるスワッピングという秘匿方法の実現のため,マルコフ基底,グレブナー基底を用いる方法について精力的に研究が進められた。
 本研究グループでは,2006年9月5日〜8日に東北大学で行われた統計関連学会連合大会で報告を行うとともに,2007年1月12日,13日に金沢大学サテライトプラザで行われた研究集会「統計的離散モデリング」でも報告,討論を行ってきた。
 2007年2月21日,22日には,統計数理研究所において,科学研究費補助金(基盤研究 (A)(一般))「官庁統計の収集・公開・利用のための理論的問題の検討」(研究代表者:加納悟)と合同研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」を開催した。総務省からの参加者13名(うち報告者3名)を含む37名の参加者(うち報告者16名)があり,官庁統計データの公開に関するリスク評価の報告,秘匿後の官庁統計データを利用した分析手法と分析内容の報告,時系列データの季節調整に関する報告など,官庁統計に関する種々の報告が行われ,活発な意見交換も行われた。
 このような研究活動の結果,官庁統計の公開に関する基礎理論が更に蓄積されたと考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 今年度発表された論文,書籍は以下の通りである。

1. 佐井至道, ペナルティー関数を利用した母集団寸法指標のノンパラメトリック推定, 岡山商大論叢, 第42巻, 第1号,1-21.
2. Hoshino, N., A discrete multivariate distribution resulting from the law of small numbers, Journal of Applied Probability, 43, 3, 852-866.
3. Miyawaki, K., Omori, Y. and Hibiki, A., Bayesian estimation of demand functions under block rate pricing, Discussion paper series, CIRJE-F-424, Faculty of Economics, University of Tokyo.
4. Omori, Y., Chib, S., Shephard, N. and Nakajima, J., Stochastic volatility model with leverage: fast likelihood inference, Journal of Econometrics, in press.
5. Omori, Y. and Johnson, R. A., The influences of random effects on univariate and bivariate discrete proportional hazards models, Communications in Statistics - Theory and Methods, 35, 9, 1757-1766.
6. 瀧敦弘,金融政策と自然利子率・自然失業率, 経済論叢, 広島大学, 第30巻,第2号.
7. 加納悟,マクロ経済分析とサーベイデータ,岩波書店,1-238.
8. 田村義保,小野寺徹, 中畑昌也, 清水隆邦,日本における物理乱数発生装置の現状,日本統計学会誌, 第35巻, 第2号, 201-212.

また今年度,学会などにおける報告は次の通りである。

1. 佐井至道,大母集団の寸法指標に対するノンパラメトリック推定,統計関連学会連合大会.
2. 竹村彰通,原尚幸,Conditions for swappability of records in a microdata set when some marginals are fixed,統計関連学会連合大会.
3. 瀧敦弘,集計表におけるセル秘匿問題:新手法についての批判的検討,統計関連学会連合大会.
4. 星野伸明,ギブス分割と複合ポアソンモデリング,統計関連学会連合大会.
5. 稲葉由之,失業期間と無業期間との関係,統計関連学会連合大会.
他6件

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:官庁統計データの公開における諸問題の研究
開催期日:2007年2月21日(水)(10:00−17:10), 22日(木)(10:00−16:00)
開催場所:統計数理研究所・会議室
参加者数:37名(うち報告者数:16名)

※科学研究費補助金(基盤研究 (A)(一般))「官庁統計の収集・公開・利用のための理論的問題の検討」
 (研究代表者:加納悟)との共同開催

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲葉 由之

総務省

大森 裕浩

東京大学

加納 悟

一橋大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

福重 元嗣

大阪大学

星野 伸明

金沢大学

和合 肇

名古屋大学