平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−9

専門分類

1

研究課題名

ウィナー空間上の無限次元確率解析(マリアヴァン解析)の研究

フリガナ

代表者氏名

タニグチ セツオ

谷口 説男

ローマ字

所属機関

九州大学

所属部局

大学院数理学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

12 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

抽象ウィナー空間における確率複素微分幾何学の構造を目的とする。正則関数を係数としてもつ確率微分方程式の解に終端条件を付けて得られるウィナー空間の部分多様体上に、ピンド=ブラウン運動のカメロン=マルチン空間から得られる概複素構造を導入し、その構造に適合するケーラー計量を用いてコホモロジーの消滅を示す。


抽象ウィナー空間上の汎関数の複素解析的性質の研究を行った。意見交換・討論のため平成7年12月21、22日に研究集会を開いた。研究集会では、1.谷口説男による3回連続の講演「ウィナー間上の鞍部点法」、2.三苫至による講演「Wilson loop の積分に関する Albeverioの正当化」、3.会田茂樹による講演「ループ空間上の Dirichlet form の 既約性について」が行われた。
1.では抽象ウィナー空間の新しい複素化が提案され、それに基づく解析関数の正則拡大が導入された。さらにそれを用いて抽象ウィナー空間上のコーシーの定理が示された。その応用として抽象ウィナー空間上での2次の相関数を持つ場合の停留位相法についてその問題点が議論された。また、確率振動積分の評価への応用について紹介がなされた。2.においては Wilson loop の積分に関する Albeverio の仕事が紹介された。3.では、Gross によるループ群上のエルゴード定理のループ空間への拡張とその応用につて報告がなされた。さらに、平成8年3月12日に、谷口・松本・濱名が集まり情報交換を行った。谷口は、2次のウィナー相関数を持つ場合の振動積分について報告し、松本は上半平面上の磁場を持つシュレディンガー方程式に関するセルバーグの跡公式について報告を行った。ウィナー空間上の停留位相法・振動積分の研究はまだそのとば口にあるが本共同研究を通じ有意義な意見交換がなされた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

谷口説男,Analytic functions, Cauchy formula and stationary phase on a real abstract Wiener space, Journal of Functional Analysis, 掲載予定

谷口説男,ウィナー空間上の実解析的関数とCauchyの定理,科研費シンポジウム「確率解析と漸近理論」,平成8年1月24日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(1)ピンド・ブラウン運動のカメロン=マルチン空間から得られる概複素構造に自然に付随するケーラー計量を、確率微分方程式の解に終端条件を付けて得られるウィナー空間の部分多様体に伝播させ、部分多様体上の複素微分幾何学を実現する。(2)このため、条件付確率の確率微分幾何学的構造を解明する。(3)上の計量を用いて、ヘルマンダー形のL2-評価を実現し、ドルボー型、コホモロジー消滅定理を得る。この(1)-(3)の計画実行に於いて、(2)が研究の根幹をなす。(2)の実行には、数理統計学の基礎理論とマリアヴァン解析の研究者の緊密な協力が非常に有効であり、当研究所の清水教授・志村助手との共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

会田 茂樹

東北大学

植村 英明

愛知教育大学

楠岡 成雄

東京大学

重川 一郎

京都大学

清水 良一

統計数理研究所

志村 隆彰

統計数理研究所

杉田 洋

九州大学

高信 敏

金沢大学

濱名 裕治

九州大学

松本 裕行

名古屋大学

三苫 至

佐賀大学