平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2016

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

国民の健康に関わる生活習慣データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[研究目的]

喫煙を筆頭に日常生活の中で繰り返される好ましくない生活習慣を改善する動きは,国民の健康行動が話題になるたびに,重要な課題として挙がっていたにもかかわらず,これまで長い間遅々として進まなかった。21世紀になって,「健康日本21」が平成12年に掲げられたり,「健康増進法」が平成15年に施行されたりして以来,最近では,全国津々浦々の公共施設において受動喫煙対策が確実に実施されていることなどに見られるように,ずいぶん国民の生活習慣の様相が変わってきたように見える。

本研究では,その健康政策目標「健康日本21」において示された,わが国の国民が改善すべき生活習慣項目のうち,(1)喫煙習慣,(2)飲酒習慣,(3)身体活動・運動習慣をテーマに取り上げ,国民健康・栄養調査資料を中心に関連するデータをコウホート分析することを研究目的とした。

[研究成果]

1.国民健康・栄養調査における,運動習慣,飲酒習慣,喫煙習慣について,昭和61年から平成21年調査までの性・年齢(階級)別の継続的調査資料を収集した。

2.上記の資料を整理して,データベース化し,性別コウホート表を作成した。

3.コウホート表から,年齢(階級)x調査時点の等計量線図を作成し,生活習慣病関連
物質の使用動向を俯瞰的に検討した。

4.『ベイズ型コウホート分析』を,それぞれのコウホート表に適用し,時代・年齢・コウホートの3効果を分離,検討した。

5.その結果,飲酒習慣者率は、男性では、平成14年以前は、40-50歳台で60%を超えていたが平成15年以降は50%を割るなど、男性全体で飲酒者率の低下が見られた。女性では、30-40歳台で平成8年以降10〜15%と高めである。

喫煙者率は、男性では平成12年ごろまでは、20-40歳台で60%を越える超える年齢があったが、最近ではどの年齢もせいぜい約50%程度である。女性の喫煙者率は、平成10年前後に20%を超えたときがあった。運動習慣者率は、平成12年ごろまでは増加していたが、最近では若い年齢層でやや減少気味である。

コウホート分析の結果から、飲酒習慣と喫煙率の時代効果は、男女とも平成15年ごろから低下してそれ以前とは明らかに異なる。年齢効果は、飲酒は男性50歳台、女性40歳台で、喫煙は男性30歳台、女性50歳台で最も高く、その後加齢とともに急激に低下する。コウホート効果は、男性の喫煙、女性の飲酒、同喫煙の3者は、昭和ひと桁生れ世代で最も低く、昭和50年生れで最も高くなった後、より若い世代での低下が始まっている。男性の飲酒は、昭和15-30年生れで高く、その後の世代で一貫して低下している。

以上より、昭和50年生れ世代の女性は、その前後の世代に比べて飲酒習慣、喫煙率が高く、同世代の男性の喫煙率と共に、これらの生活習慣に関連する健康阻害が懸念される。一方、男性の昭和35年生れ以降では飲酒習慣率が低下していて、一見好ましいことのようだが、同時に調べた男女の運動習慣低下世代と連動している可能性があるので、手放しでは喜べない可能性がある。

6.これらの結果は,日本公衆衛生学会(2011,10,秋田)にて報告した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[学会等発表]

・那須 郁夫, 中村 隆, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子, 砂治 國隆 (2011). ベイズ型コウホート分析による日本人の飲酒習慣と喫煙習慣の比較検討, 日本公衆衛生雑誌,58(10), 218. (日本公衆衛生学会, 秋田市:秋田アトリオン, 2011/10/20)

本研究に関連するこれまでの研究発表

[論文]

・那須 郁夫, 渡邉 寿子, 中村 隆, 堀内 俊孝 (2003). 日本人習慣飲酒のコウホート分析--国民栄養調査による--, 厚生の指標, 50(2), 1-8.

・那須 郁夫, 中村 隆, 森本 基 (1996). 永久歯現在歯のコウホート分析,歯科疾患実態調査資料を用いて, 老年歯科医学, 11(2), 88-99.

・那須 郁夫, 中村 隆, 森本 基 (1996). 歯科疾患実態調査資料による歯磨き回数のコウホート分析, 口腔衛生学会雑誌, 46(3), 306-317.

・那須 郁夫, 森本 基, 中村 隆 (1984). 下顎第1大臼歯齲蝕経験のコウホート分析--歯科疾患実態調査報告資料による--, 口腔衛生学会雑誌, 34(3), 240-247.

[学会等発表]

・那須 郁夫, 中村 隆, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子, 砂治 國隆 (2010). コウホート分析による日本人の生活習慣,特に飲酒,喫煙,運動について, 日本公衆衛生雑誌,57(10), 279. (日本公衆衛生学会, 千代田区:東京フォーラム, 2010/10/29)

・那須 郁夫(2010).コウホート分析による日本人の生活習慣,とくに飲酒,喫煙,運動について.(統計数理研究所平成21年度研究報告会,立川市:統計数理研究所,2010/3/18)

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子, 砂治 國隆 (2009). 国民健康・栄養調査による日本人運動習慣のコウホート分析, 日本公衆衛生雑誌,56(10), 413. (日本公衆衛生学会, 奈良市:奈良県文化会館, 2009/10/22)

・那須 郁夫(2009).典型的なコウホート現象としての日本人の齲蝕,(統計数理研究所平成20年度研究報告会,港区:統計数理研究所,2009/3/18)

・那須 郁夫,中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹,渡邉 寿子 (2008). 国民健康・栄養調査による日本人飲酒習慣のコウホート分析, 公衆衛生学会雑誌, 55(10),311. (日本公衆衛生学会, 福岡市: 福岡国際会議場, 2008/11/07)

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 宮崎 至洋, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子 (2008). 歯科疾患実態調査による日本人歯種別現在歯数のコウホート分析, 平成17年調査資料を加えて, 口腔衛生学会雑誌,58(4), 327. (第55回日本口腔衛生学会総会, 大宮市:大宮ソニックシティ, 2008/10/03)

・那須 郁夫, 中村 隆, 堀内 俊孝, 宮崎 至洋, 生田 明敏, 新保 秀樹, 渡邉 寿子 (2007). 歯科疾患実態調査による日本人歯種別DMF歯数のコウホート分析, 平成17年調査資料を加えて, 口腔衛生学会雑誌, 57(4), 439. (第54回日本口腔衛生学会総会, 江戸川区:タワーホール船堀, 2007/10/04)

・那須 郁夫,中村 隆, 堀内 俊孝, 生田 明敏, 新保 秀樹,渡邉 寿子 (2007). 国民健康・栄養調査による日本人喫煙習慣のコウホート分析, 公衆衛生学会雑誌, 54(10), 242. (日本公衆衛生学会, 松山市: 愛媛県民文化会館, 2007/10/25)

・那須 郁夫,中村 隆, 堀内 俊孝,宮崎 至洋,生田 明敏, 新保 秀樹,渡邉 寿子(2005). 若い世代の齲蝕減少の要因としての歯の萌出遅延,DMF指数と現在歯数のコウホート分析による検討,第54回日本口腔衛生学会総会,品川区:きゅりあん.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ありません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

生田 明敏

日本大学松戸歯学部

新保 秀樹

日本大学松戸歯学部

那須 郁夫

日本大学

渡邉 寿子

日本大学松戸歯学部