平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2044

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

1

研究課題名

推定関数の幾何学と統計学

フリガナ

代表者氏名

ヘンミ マサユキ

逸見 昌之

ローマ字

Henmi Masayuki

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

20千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

統計的推論の構造や性質を(微分)幾何学的な立場から論ずる情報
幾何学は、1980年代の甘利・長岡による記念碑的な仕事以来、
統計学以外の情報関連科学にも影響を及ぼしながら徐々に進展して
きているが、近年、また新たな展開を見せてきている。黒瀬・松添
による「捩れを許す統計多様体」に関する仕事もその1つである。
彼らの研究の主な動機は、量子推定論における密度行列族の幾何構
造として自然に現れる、捩れのある双対アファイン接続を備えた多
様体の性質を解明することであるが、このような構造は通常の統計
的推論の基礎となる確率分布族にも、推定関数から(付随するプレ
コントラスト関数を通じて)自然に導入されることが、最近、本研
究の代表者と分担者の共同研究によって示された。しかしながら、
確率分布族におけるこの「捩れを許す統計多様体」の構造は、情報
幾何学でこれまで議論されてきた幾何構造(Fisher計量とアルファ
接続)とは異なるものであり、その統計的な意味や役割は、あまり
よく分かっていない。
本研究の主な目的は、統計学でよく用いられるいくつかの具体的な
推定関数について調べることなどを通じて、推定関数による統計的
推論における、上記の新たな幾何構造の意味や役割を明らかにする
ことである。また、「捩れを許す統計多様体」の一般論もまだ発展
途上にあるが、本研究を通してその発展にも刺激を与えることで、
統計学と数学との間でお互いに有益な交流となることも目指している。

本年度は昨年度に引き続き、(パラメータに関して非可積分な)推定関数から誘導される「捩れを許す統計多様体」の構造において、特に2つの双対接続のうち一方のみに関して平坦な場合の統計的・幾何的な性質について議論を行った。また、共同利用研究「一般化エントロピーの幾何学と統計学」の課題で現れる推定関数に対しても、本研究課題の立場から、考察を行った。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表

1. Tatsuaki Wada, Hiroshi Matsuzoe and Antonio M. Scarfone,
Dualistic Hessian structures among the thermodynamic potentials in the k-thermostatistics,
Entropy, 17(10), (2015), 7213-7229. (査読有)

2. Hiroshi Matsuzoe and Tatsuaki Wada,
Deformed algebras and generalizations of independence on
deformed exponential families,
Entropy, 17(8), (2015), 5729-5751. (査読有)

口頭発表
1. 熊本大学数学教室談話会 2015年 7月 1日
松添 博「擬似統計多様体とプレ・コントラスト関数」

2. ミニワークショップ「統計多様体の幾何学とその周辺」(7)
2015年 9月 1日
松添 博「変形指数型分布族の幾何学」

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は特に開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

松添 博

名古屋工業大学