平成23(2011)年度 一般研究2実施報告書
| 課題番号 | 23−共研−2012 | 分野分類 | 統計数理研究所内分野分類 | a | ||||||
| 主要研究分野分類 | 8 | |||||||||
| 研究課題名 | 持続可能な森林資源管理のための森林構造の解析 | |||||||||
| フリガナ 代表者氏名 | ヨシダ トシヤ 吉田 俊也 | ローマ字 | Yoshida Toshiya | |||||||
| 所属機関 | 北海道大学 | |||||||||
| 所属部局 | 北方生物圏フィールド科学センター | |||||||||
| 職 名 | 准教授 | |||||||||
| 配分経費 | 研究費 | 40千円 | 旅 費 | 147千円 | 研究参加者数 | 5 人 | ||||
| 研究目的と成果(経過)の概要 | 
| アカエゾマツ湿地林は北海道における湿原景観の代表的な構成要素の一つである。そこで見られるモザイク状の景観構造は、その空間的異質性の高さから、一般に、生物多様性や物質生産などの生態系機能に大きな寄与を果たしているとされ、その発達や維持の機構を明らかにすることは保全上も重要な課題である。しかし、これまでのアカエゾマツ湿地林の研究の多くは植生や構造の記載に留まっており、林分の発達要因については明らかではない。そこで、アカエゾマツ湿地林の構造・動態と水分環境の関係性を明らかにすることを目的とした。具体的には1)水分環境の空間的変動によって、同じ湿地林内であっても、アカエゾマツ立木の成長量や動態が局所的に異なる、2)水分環境の時間的変動に伴って、林分の成長量が変化するという二つの仮説を検証した。調査地は北海道大学雨龍研究林317林班の泥川保存林である。ここに面積0.5ha(100m*50m)の調査プロットを設置し、1992、2002、2010年に胸高直径5cm以上の立木の毎木調査を行った。2010〜2011年に年輪コアの抽出をして過去の成長を見積もり、また、稚幼樹の調査を行った。水分環境を表す地下水位については、プロットの近傍で1992年から連続観測を行うとともに、 2010〜2011年にプロット内の36点で観測を行った。調査プロット内はほぼアカエゾマツの純林で、立木密度は比較的小さかった(個体数592/ha、胸高断面積合計26.61m2/ha)が、立木の最大サイズは胸高直径76cm(推定樹齢703年)に達していた。立木は周囲より比高の高い微地形(倒木等に起因するマウンド)上に集中して成育しており、それ以外の領域は概ねクマイザサが優占するギャップであった。プロット内の水位は季節的な変動もあったが、夏季には概ね地下20cm〜地上2cmの範囲にあり、地点間での傾向は一貫していた。連続観測地点における夏期の平均値は地下20〜5cmのばらつきがあった。立木個体の断面積成長量(m2/個体)に影響を及ぼす要因を一般化線形モデルで解析した結果、夏季の地下水位の負の影響(水位が低いほど成長が良い)が認められた。また、林分全体の年成長量(m2/単位面積/年)も、その年の夏期の平均地下水位と負の相関関係があった。立木のサイズ構造から、更新は連続的に生じていると考えられたが、稚樹(樹高10〜50cm)の分布は上層木と同様にマウンド上にほぼ限られていた。 以上のように、水分環境の空間的あるいは時間的な変動は、アカエゾマツ湿地林の動態に影響を及ぼしており、全体的には地下水位の高さがアカエゾマツ個体群の維持に負の影響を及ぼしていることが明らかになった。 | 
| 当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等) | 
| 【論文】 | 
| 研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。 | 
| 研究会等の開催なし | 
| 研究参加者一覧 | |
| 氏名 | 所属機関 | 
| 阿部 俊弘 | 統計数理研究所 | 
| 井上 太樹 | 北海道大学大学院 | 
| 島谷 健一郎 | 統計数理研究所 | 
| 竹内 史郎 | 北海道大学大学院 |