平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−71

専門分類

7

研究課題名

繭型をマーカーとしたカイコの系統分類

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

カイコの繭の形は、品種によりかなり複雑に分化している。これはその祖先である野生の昆虫から、現在のカイコへの飼育、馴化への過程で生じた、世界各国での地域品種の形成と、これに係わる遺伝的分化を反映しているものと思われる。そこで繭型の統計遺伝学的検討を行って系統分類を試み、進化の過程を探索するのが本研究の目的である。


カイコは、その生産物である絹を利用するために、人為的に改良が加えられ、もはや野性に戻れなくなった昆虫であるが、同時に遺伝学研究のための実験材料昆虫としても有用である。これがどのような過程で飼育馴化されたか、祖先である昆虫が何であったかなど不明の点が多く、生物の進化を考察する上でもよい材料である。
また、カイコの特徴的な形質として繭があるが、その形態は品種により、くびれのある俵型、楕円型、紡錘型など複雑な変異がみられる。従ってこの特徴を数量的に把握することによって、カイコの遺伝的分化や地域品種の形成に関する情報を得ることができると考えられるので、多変量解析法を用いて統計遺伝学的分析を続行中である。
昨年までは主として品種内での雌雄差の発現に関する問題を検討したが、本年は品種による繭型の類似性を分析した。なるべく多くの品種を用いて、画像処理により計測した繭型諸変数を組み合わせて、クラスター分析を行い、形の相違によるグループ分けを試み、デンドログラムとして作図した。クラスター分析は各種の基準により、最短距離法をはじめ、いくつかの方法が開発されているが、標準化平方ユークリッド法を基準として用い、分析法の違いによるクラスター形成の相違を検討した。
ここで繭型変数が多くなるほどその組合せも増加し、すべてを比較するのは困難であるが、多くの場合、体積および長幅率がクラスター形成に大きく関与することが分かった。クラスターは実用系統、テスター系統、遺伝子突然変異系統などに対応しており、また、繭重変数を投入することによって、実用・テスター系統の区別がより明確となった。そこで、このように繭の大きさや形、重量等によって分類されたクラスターと他の遺伝形質による品種間の近縁の程度を比較する試みを続けるとともに、突然変異系統グループ内での繭型の品種間変異の検討を進めている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.中田 徹・前田勇人・村上征勝 判別分析によるカイコの繭型の雌雄差の検討 統計数理 第39巻第2号 1992.3
2.T. Nakada Sequence of Some Cocoon Traits in the Progeny Test after Crossing between Wild and Domesticated Silkworms, Bombyx mandarina and B, mori Wild Silkmoth '92 1992.5

1.中田 徹 カイコの繭形質に関する主成分分析、とくに雌雄差について 日本蚕糸学会第62回講演要旨集 1992.4.4
2.T.Nakada Genetic Analysis on the Cocoon shape of Silkworm, Bombyx mori 19th International Congress of Entomology 1992.6.29
3.T.Nakada Cocoon Characters of Hybrid between Wild and Domesticated Silkworm 19th International Congress of Entomology 1992.7.02
4.中田 徹・山村智通・前田勇人・村上征勝 カイコの繭重・繭型に関する遺伝分析、とくに多変量解析による雌雄差の検討 日本統計学会第60回大会講演要旨集 1992.7.24
5.中田 徹 カイコの繭型に関する遺伝分析、とくに品種間の相違について 日本蚕糸学会第63回講演要旨集 1993.4.7

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

現在世界各地から収集を続けている、カイコの多くの品種について繭型の調査を行っているが、繭の形はくびれのある俵型、楕円型、紡鍾型など複雑に分岐している。これらの形態を著者の開発した画像解析装置により測定し、各品種に特有の繭型の数量化を行い、地域品種の特徴を把握するとともに、各地域品種間の交雑実験を行って、交雑後代に示される繭型の遺伝的分離に関する検討を試みる。
この過程で、繭型に関する諸変数を用いた多変量解析や、各種の統計分析の手法の開発に関して、統計学の専門研究者との共同研究を行い、これらの研究を効果的に遂行したい。なお、以上の研究のため、著者は中国やインドなどアジアの温帯・熱帯地域を中心とした各国の研究者とともに、諸外国のカイコの保存系統に関する遺伝資源調査を続行中である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所