平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2024

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

調査方法の異なる大規模言語意識調査データの比較分析

フリガナ

代表者氏名

タナカ ユカリ

田中 ゆかり

ローマ字

Tanaka Yukari

所属機関

日本大学

所属部局

文理学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

8千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

《目的》
本研究課題の目的は、調査方法の異なる言語意識調査データの分析とそのデータ構造の分析を行うことである。具体的には、設問文・選択肢を統一した異なる調査方法によって採取されたデータの比較対照と、それを通じた回答者の特性を探る。このことを通じ、調査方法の長短を整理し、目的に応じた適切な調査計画の立案への貢献を目指す。
 本研究課題は昨年度からの課題を引き継ぐものであるが、2016年に実施したふたつの対面調査とWebアンケートに基づく新規データが加わる。これにより、2010年と2016年に実施した無作為抽出による対面オムニバス調査、2015年と2016年にwebアンケート調査(自記式・登録モニターを人口比で割り付け)間の比較検討が可能となった。これに加え、有意抽出による留め置き調査(自記式・人口比で割り付け)データが加わる見込みで、三種の異なる調査方法に基づく言語意識調査によるデータ間の比較検討が可能となる。これらの調査は、本研究課題を意識し、設問文・選択肢等の統一をはかっている。
 比較検討対象とする調査データ概要は以下の通り。
【対面オムニバス調査1】:「2010年全国方言意識調査」(2010年12月実施):層化三段無作 為抽出法による全国に居住する16歳以上の男女4,190人(回収率32.1%、n=1,347)。
【対面オムニバス調査2】:「2016年近隣関係と方言についての意識調査」(2016年3月実施):層化三段無作為抽出法による全国に居住する20歳以上の男女4,000人(回収率30.0%、n=1,201)。
【Webアンケート調査1】:「2015年全国方言意識web調査」(2015年8月実施):web上に設置された調査サイトにアクセスして回答を求めるwebアンケート方式。委託調査会社にモニター登録している全国20歳以上の男女に調査依頼を配信。配信数の設定に際しては、地域ブロックと地域ブロックにおける性・年代別の人口比率に委託業者における平均的なデータ回収率を加味した。有効回答数は10,689(回収率28.4%)。
【Webアンケート調査2】:「2016年全国方言意識web調査」(2016年12月実施):webアンケート調査1とは異なる業者に委託。データ回収方法は同様。有効回答数20,000(回収率13.8%)。

《成果》
 本研究では、以下の研究成果を上げた。
 まず、「2016年全国方言意識web調査」データの分析に基づき、査読付論文(1本)を公開した。この他、本共同研究成果に基づく国際学会招待講演(2件)、その他海外における招待講演(1件)、集中講義(1件)を行った。
 成果公開と並行しながら、メイルなどで密に情報を共有しながら、統計数理研究所における対面打ち合わせならびに研究会を2回実施し、「2015年全国方言意識web調査」を用いた潜在クラス分析を用いた話者類型の抽出を改めて行った。これは、昨年度共同研究成果として学会発表を行ったものであるが、潜在クラス分析に際して項目を追加するなどした結果、新たな類型の抽出をみた。これについては、次年度中に研究論文として投稿予定である。
本共同研究・研究費は、統計数理研究所に所属するメンバーの研究所・日本大学文理学部間の往復交通費ならびに、研究成果公開物等印刷のためのプリンター用トナー購入費用に充当した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

《論文》
田中ゆかり「全国2万人webアンケート調査に基づく方言・共通語意識の最新動向」『語文』158(日本大学国文学会)pp1-35(2017年6月25日)
《招待講演》
国際学会講演(招待) TANAKA,Yukari The "Dialect Cosplay" Phenomenon: Detaching Regional Dialects from Geographic Localities, The Sixteenth International Conference on Methods in Dialectology METHODS XVI (Methods16) Plenary Talk(2017年08月08日)(於:国立国語研究所)
講演(招待)田中ゆかり「「方言コスプレ」現象:土地から解き放たれる「方言」」ブリティッシュコロンビア大学(2017年09月11日、バンクーバー市)
講演(招待)田中ゆかり「「方言コスプレ」とその社会的背景」韓国日語日文学会2017年冬季国際学術シンポジウム「方言コスプレとコミュニケーション」(於:韓国外国語大学校)(2017年12月16日、ソウル特別市)
《集中講義》
清華大学(中華人民共和国北京市)(招待)集中講義
「戦後日本語社会における方言問題」(一)(2017年11月1日 於:文南楼116会議室)
「戦後日本語社会における方言問題」(二)(2017年11月2日 於:文南楼204会議室)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 本研究において、公開研究会はとくに行わなかった。ただし、メンバーによる対面の研究打ち合わせを下記の通り2回実施した。

《第1回研究会》
日時:2017年9月22日(金) 
場所:統計数理研究所ラウンジルーム2
出席者:田中ゆかり(日本大学),林直樹(日本大学),相澤正夫(国立国語研究所),前田忠彦
議題:
1.全国方言意識web調査データの再分析結果に基づく検討
2.次回までの検討課題
3.論文化の方針検討
 4.その他

《第2回》
日時:2017年12月22日(金)
場所:統計数理研究所 (前田准教授室)
出席者:田中ゆかり(日本大学),林直樹(日本大学),相澤正夫(国立国語研究所),前田忠彦
議題:
 1.2015年度調査データの追加分析結果と解釈
 2.2016年度調査データの解析について
 3.論文化の方針検討
 4.次年度共同研究の申請について
 5.その他

以上

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

相澤 正夫

国立国語研究所

林 直樹

日本大学

前田 忠彦

統計数理研究所