平成152003)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

15−共研−2016

専門分類

2

研究課題名

局所モーメント法に関する研究

フリガナ

代表者氏名

サガエ マサヒコ

寒河江 雅彦

ローマ字

Sagae Masahiko

所属機関

岐阜大学

所属部局

工学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1.研究の目的
本テーマで取り上げる局所モーメント法とは、通常のモーメント法に対応した局所モーメント情報から
局所パラメータや関数を推定するものである。全体のプロファイルは局所的に推定された推定値や推定
関数を連結させることで推定するものである。この推定の直感的な説明をすると、局所的には簡単なモ
デルで推定し、その連結関数として複雑な現象を推定する試みであり、この統計モデルとしてはノンパ
ラメトリック或いはセミパラメトリックな統計モデルを利用する。
 研究代表者はこの概念をノンパラメトリック確率密度推定に適用し、その漸近的な性質を調べ、数値
例による実証的な検証も行った。この結果、局所モーメント法を確率密度推定に用いることは、推定さ
れた密度関数に従う確率変数が母集団の標本モーメント特性と一致する性質を持ち、応用面での望まし
い性質を持つ。一方でよく知られたカーネル関数を用いた密度推定ではこの性質を持たない。
 本年度は、このような局所モーメント情報に基づいた統計モデルの開発とその推定法として、確率密度関数
の推定における理論的な研究とともに実用的な統計モデルを開発することを目的としている。掲題の研究に関
連してこれまでに局所モーメント法の提案(Sagae and Scott,1997a),局所モーメント法を用いた密度関数の推定
(Sagae and Scott,1997a,1997b)や(Sagae and Kogure,2000)での理論的な成果を踏まえて、効率的な共同研
究を実施する。
 2.成果の概要
本研究では、主に4つの研究成果を得た。
2.1 共同研究に基づいた研究成果
1)局所モーメント情報を十分統計量にもつ確率密度関数を構成するための枠組みとしての最大エントロピー原理に
着目して局所統計モデルを導出する手順を提案し、その推定量の漸近的な性質を導くと共にシュミレーションによ
り、実用的にも有効である推定量であることを示した。ノンパラメトリック確率密度推定において高次の漸近性能を獲
得するためにカーネル推定等では非負条件の緩和等を必要とする。本研究では高次の漸近特性を持ち、かつ確
率密度関数の満たすべき正値性と積分が1になる条件を同時に満たす一般的な推定法と推定モデル(局所対数線
形多項式モデル)を提案した。この成果はここ2〜3年の間で行ってきた研究成果をまとめたものである。本研究成
果は Joint Statistical Meetings(ASA)2003 のノンパラメトリック統計解析のセッションにおいて発表され、同会議の
Proceedingsに掲載された。(研究成果の1)
2)ヒストグラム推定において等間隔ビンでの統計的性質はいくつかの論文の中で報告されている。一方で、実用的に
は等しい度数となるように不等間隔ビンに区切って集計されたデータを統計資料等ではよく見かける。こ
れら等パーセンタイル分割に基づくヒストグラムはしばしば用いられるが、統計的性質はあまりはっきり
していない。そこで等パーセンタイルビンに分割した区間でのヒストグラム推定の理論的な性質を明らか
にした。結果、分散は等間隔のビンよりも若干よくない程度であるが通常よく用いられる分布を仮定した
場合でもバイアスはきわめて大きくなる可能性を持つ。したがって等間隔のビンに比べてパーセンタイル
での分割幅をもつビンへのヒストグラムの利用の問題点が明らかとなった。これを回避するためにパーセ
ンタイル型ビンへのカーネル密度推定の利用可能性を検討した。本研究成果は Joint Statistical
Meetings(ASA)2003 のノンパラメトリック統計解析のセッションにおいて発表され、同会議の
Proceedingsに掲載された。(2の2)
3)ヒストグラム推定法を理論的に改良する手段として各ビンごとに線形関数を利用する区分的線形確率密度
の研究が行われ、Frequency Polygonという名前で知られている。研究代表者はこのクラスの推定量を改
良するために区分的線形関数の境界の位置(スプライン等では節点という)とMISE、分散、バイアスの関係
を調べた。そこでknot(節点)の位置をパラメータとして持つ区分的線形確率密度推定モデルを提案し、
その漸近的な性質を導いた。区分的線形密度関数の中で現在知られている最も推定性能の高いモデル
(Sagae&Yamamoto,2002)よりもさらに改良されることと3つの評価基準に基づいた最適なknotの位置
は一般にそれぞれ異なることが明らかとなり、トレードオフの関係もこの性質に依存することが明からと
なった。本研究成果は統計連合大会2003年で発表された。(研究成果の3,4)
4)局所モーメント情報を局所的に保持する統計モデルはノンパラメトリックあるいはセミパラメトリック
な統計モデルとして考えることが可能である。グローバルな統計量に関する最尤推定量の概念は現在最も
優れた推定法であるが、局所モーメント情報と局所統計モデルで推定されたノンパラメトリックな統計モ
デルは真の統計構造を局所的に近似している

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.研究成果(研究代表者に関連した成果のみ)
1)Sagae,Masahiko and Kogure,Atsuyuki,A Maximum Entropy Density Estimation,
Proceedings on the nonparametric session,Joint Statistical Meeting 2003.
2)Kogure,Atsuyuki and Sagae,Masahiko,Recovering the Probability Density from the Percentiles:
A warning against the use of the histogram,Proceedings on the nonparametric session,
Joint Statistical Meeting 2003.
3)山本けい子、寒河江雅彦,A Piecewise Linear Nonparametric Density Estimation with
the Location Parameter of Bin Knots,ISM cooperative research report,2003.
4)山本けい子、寒河江雅彦,ビン節点パラメータを持つ区分的線形確率密度関数の推定,
統計関連学会連合大会、2003.
5)Sagae,Masahiko and Kogure,Atsuyuki,An Aproximate Maximum Likelihood Estimator from
the local moments,in preparation.This topic will be presented In Joint Statistical Meeting 2004 at Toronto.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

田邉 國士

統計数理研究所