平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−38

専門分類

5

研究課題名

動的イジング模型の研究

フリガナ

代表者氏名

タカノ ヒロシ

高野 宏

ローマ字

所属機関

慶應義塾大学

所属部局

理工学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

協同現象の確率モデルとして最も典型的な性質を持つ動的イジング模型の性質をモンテカルロ法及び行列の対角化により調べる。


動的イジング模型の秩序相(臨界温度より低温)における緩和現象には,スピンがある向きにそろった背景の中にスピンが反転した領域(クラスター)が生じたり消えたりするという振舞いが重要である。
蜂の巣格子上の動的イジング模型と,正方格子上のそれとでは,秩序相におけるクラスターの振舞いが異なっている。即ち,蜂の巣格子ではシングルスピンフリップに対して準安定なクラスターが存在するのに対し,正方格子では存在しない。このような準安定状態は,近年,フラストレーションのない強磁性的ランダム・イジング模型において研究されている。
本研究の目的は,準安定なクラスターの存在が秩序相での緩和現象にどのような影響を及ぼすかを調べることである。温度無限大の状態から急冷した後の秩序化過程が蜂の巣格子と正方格子でどのように異なるかをモンテカルロ・シミュレーションを行って調べ,次のことを明らかにした。系の外側は十のスピンに囲まれているという境界条件を用いた。系の一辺の長さをL,温度の逆数をK,急冷後の時刻tにおける一つのスピン当たりの磁化をm(t)とする。1.蜂の巣格子ではm(t)の平均時間変化は,準安定状態の形成,保持,消滅の三つの時間領域に分けられる。2.第一の時間領域ではK,L依存性は小さい。3.第二の時間領域でm(t)の平均は,境界の影響により,Lに反比例した一定値をとる。4.第三の時間領域のm(t)の平均時間変化は〓でスケールされ,時間スケールがexp(2k)で長くなる以外は正方格子と同様の振舞いをする。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

高野宏,宮下精二“蜂の巣格子上の動的イジング模型の緩和現象”,日本物理学会第45回年会。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

イジング模型は元来磁性体の模型として提出されたものであるが,近年種々の物理・非物理のシステムに応用されている。またランダムな外場を加えたものは画像処理との関連が,注目されている。イジング模型の研究は初期には熱平衡での性質,その後は臨界点直上での性質の研究に重点がおかれていた。しかし,それ以外の性質には現在でも未知の点が多い。
本研究は特に興味のある1.秩序相のダイナミクス2.準安定状態の性質3.ランダムネスを含んだ系の性質等に重点を置いて大型計算機によるシミュレーションを用いてそれらの解明を目指す。画像処理等の応用には重点を置かないが,セミナー等を通じて研究所の所員と概念的,技術的な交流を行うことを考えている。
また専用ハードウエアの可能性についても検討する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阿久津 泰弘

大阪大学

伊藤 伸泰

東京大学大学院

伊庭 幸人

統計数理研究所