昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−43

専門分類

6

研究課題名

地球物理学的データのインバージョン

フリガナ

代表者氏名

フカオ ヨシオ

深尾 良夫

ローマ字

所属機関

名古屋大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

地表面での観測から得られる地球物理学的データは,一般にデータがきわめて大量なこと,観測点が不規則かつ偏在していることが特徴である。こうしたデータから,地表面における観測パラメタの分布,地球内部における構造パラメタの分布を求める手法はまだ確立していない。本研究は1.そうした手法を確立し,2.それに基づいて観測パラメタの2次元分布,構造パラメタの3次元分布を求めるのが目的である。


我々はISC(International Seismological Center)により報告されている全世界の地震のP波到着時刻データを用いて,マントルの地震波速度の3次元トモグラフィーを進めている。基本的原理は医学におけるX線断層写真と同じで,既に確立されている球対称地球モデルでは説明できない地震波到着時刻の遅れ進みを3次元の地球内部に逆投影するというものである。
この地震波トモグラフィーは,原理は医学のそれと同じではあるが,いくつかの特殊な側面を持っている。もっとも大きな違いは波源(震源)とセンサー(地震観測点)の空間的分布密度が著しく不均一なことである。地震は環太平洋の沈み込み帯に集中し,観測点は陸上のしかも先進国に集中している。震源の位置が未知であり,これも同時に決定しなければならないことも大きな違いである。また,データ数が百万を越え,要求される分解能を満足するためのモデルパラメタ数も数万という,規模の巨大さも重要である。なぜならこのような大規模な計算は現在の大型コンピュータの能力を最大限に利用して初めて解くことが可能であり,そのためのアルゴリズムは規模が大きいということだけで小さな問題のそれとは根本的に異なってくるからである。
上述のような問題の特殊性に対処するために,我々は独自のアルゴリズムを開発した。その主な特徴は(1)データの不均一に応じてモデル(分解能)も不均一にする。(2)問題の大きさに対処するために,小さな問題から進めて徐々に分解能を高めてゆく。また総てのデータ及びプログラムをモジュール化し,ステップバイステップで実行するとともに,プログラムの保守性を高める。
このようなアルゴリズムを記述したチャートに従ってデータモジュール,プログラムモジュールの作成を行った。これまでに全プログラムのうちの約8割,FORTRANソースリストにして約10000行のプログラムの開発を終了した。この中には,独自開発のグラフィックライブラリ,地図作成ライブラリ等も含まれている。これらはすべて異なった計算機システムへの移植性を十分考慮してモジュール化されている。
次年度は,残る一部のプログラムの作成を行った後,実際の解法に取り掛かる。先ずデータ数数万,モデルパラメタ数数千程度の問題を,統計数理研究所の計算機システムHITAC−M280を用いて処理する。問題を徐々に大きくして,最終的な,データ百万,モデル数万の問題を東京大学大型計算機センターのアレイプロセッサHITAC−S810を用いて解く。余力がある場合は,更に分解能を高める予定である。
尚,本研究は東京大学理学部地球物理学科研究生,井上公君の協力を得て行われている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

発表予定
井上公,深尾良夫,田辺國士,尾形良彦,
「全マントルのP波トモグラフィーその1:解法」
1987年秋期地震学会
井上公,深尾良夫,田辺國士,尾形良彦,
「全マントルのP波トモグラフィーその2:速度構造と震源分布」,
1987年秋期地震学会


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

地表面での観測から得られる地球物理学的データは,一般にデータがきわめて大量なこと,観測点が不規則かつ偏在していることが特徴である。こうしたデータから,地表面における観測パラメタの分布,地球内部における構造パラメタの分布を求める手法はまだ確立していない。本研究は1.そうした手法を確立し,2.それに基づいて観測パラメタの2次元分布,構造パラメタの3次元分布を求めるのが目的である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾形 良彦

統計数理研究所

田辺 國士

統計数理研究所