平成262014)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

26−共研−1010

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

2

研究課題名

大規模センサーデータの統計処理を支援する次世代情報基盤とその応用に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ハヤシ タカフミ

林 隆史

ローマ字

Hayashi Takafumi

所属機関

会津大学

所属部局

コンピュータ理工学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的:
センサーネットでは様々なセンサーを様々な環境で用いたデータを集約する。そのため、集められたデータの誤差は機器や設置環境に依存して一様ではない。一方、センサーネットは、気象、環境などの観測や健康情報ネットワークなどで用いたれていて、社会で大きな役割を担っている。収集されたセンサーデータの値は、その場で状況把握に使われるだけではなく、将来予測やアーカイブデータを用いた分析などに広く用いられる。そのため、データの誤差やデータ処理による誤差を適切に扱うことや、データにあった統計処理を適切に用いることが必要不可欠である。しかしながら、そのような処理システムを個別に用意するのは現実
的では無く、適切な統計処理基盤の構築とその運用とサービスの広い提供が必要である。
そのような統計処理情報基盤には、以下の機能が必要であると考える。
・ センサーデータそのものだけではなく、その誤差についての情報を含めてデータの収集を行うための機能の提供。具体的には、センサーの機種、バージョン、環境についての情報に応じて、適切な情報を付加しながら、必要に応じて保存先をかえながらデータストアに保存する機能の提供。
・ 統計処理をするデータの測定誤差や、前処理によって生じた誤差を含めて、統計処理の結果の誤差の可視化を支援する仕組み。
・ データ引数やパラメータなどの与え方で利用方法を誘導しないように工夫されたapplication interfaceの提供。この場合、既存のデータ処理システムには手を加えずに、pre-processとして、利用インタフェースを提供するべきである。
・ 個人情報など秘匿しないといけない情報が必要な統計処理において、秘匿すべき情報を外部に漏洩しないようにする方法の提供。
そこで、本共同利用研究では、上記の実現すべき仕組みを、
・ topic-based messaging, content-based messaging によって、センサーの種類や設置環境についての情報
をもとに、センサーデータを仕分けしてデータストアにおくるメッセージング基盤
・ 処理結果から不要な情報を自動的に除いて伝送するメッセージング・ネットワーク
・ 精度情報と元データ、統計処理結果などを自動的にマッシュアップして提示する機能
・ 統計の専門家ではないユーザが、1)目的や得られたデータに応じて、適切な統計処理を選んで、適切な
パラメータを入力することを支援する仕組み、2)統計処理の結果を適切に利用することを支援する仕組みの構築を検討する。
これによって、
・ 種々のセンサーネットのデータ処理やデータ保存・蓄積を支援する機能を提供する情報基盤とそれを用い
たシステム
・ OECE個人情報8原則や医療に関するヘルシンキ宣言に基づいた情報提供を可能にする情報基盤と統計処
理サービス。
・ ライフコースデータ、放射線被曝、震災時の有害物質(アスベスト等)吸引に関するデータベースを、個
人情報を用いた疫学的分析を可能にしながら、公開情報からは、個人情報を確実に除去する仕組み。
の検討を行う。
あわせて、
・情報主体や権限のあるユーザが、データにアクセスすることを可能にするために、
・認証・認可・アカウンティングサービスとデータベース関連サービスの疎結合連携
・情報主体へのプッシュ型情報提供方法
・データの修正記録を全て残すようなデータベース
・100年間持続可能なデータベース実現のための技術・運用・制度面からの多面的な検討
を行う。これらの課題に中長期的に取り組む予定である。
今までの情報基盤の研究成果をもとに共同研究者と連携しながら、上記課題の検討を進めていく計画である。

本研究の成果: 
メッセージングルータを核としたメッセージング基盤を用いて、種々の異なるデータを分類するための情報基盤について、以下の検討を行った。
・リアルタイムで伝送されてくるデータについて、データ発生源の諸情報やデータ統計解析結果の利用者の利用目的、分析手法、精度などの要求項目によって、データを区分けする仕組みの設計を行った。具体的には、Topic-based filteringとContent-aware filtering を中心としたMessage Filtering とComplex Event Processing を組み合わせて、データを分類・区分けして適切な統計解析に送るというものである。Topic-based filtering は、データに関連したキーワードをつけ、メッセージングルータがリアルタイムで、そのキーワードに応じた伝送先制御やデータ処理を行うものである。

上記の内容について、主にセンサーデータを対象に研究を進めた。
それによって、ネットワーク上の中継ノードで、データの特性によってデータを区分した上で、それぞれのデータセットの処理サーバをリアルタイムに選択し、データをそのサーバに送り、各サーバ上でデータ処理を行うシステムと情報基盤の設計とプロトタイプを構築した。
様々なデータおよびその解析のニーズに応えるためには、データの測定や収集から、解析、解析結果の表示まで含めたフレームワークの構築が必要であることを確認し、新たなフレームワークの構築とその根拠を与える数理科学・数理工学的枠組みの検討を開始した。
また、これらの研究の成果として、下記を発表した。
・Takafumi Hayashi, Junichi Yatabe, Sayaka Demura, Yasuhiro Abe, Yodai Watanabe, Hiroaki Ishikawa, Masayuki Hisada, Midori S. Yatabe, Daishi Yoshino, Joseph Tsai, Yuya Ito, Hayato Tabata, Masanari Murasawa, Kyohei Shiozawa, Toshiaki Miyazaki, and Jiro Iwase, "A Novel Network-centric Approach to a Secure and Elastic Regional Healthcare System with a Messaging Infrastructure," in Proc. of SICE 2014, 9 2014, Sapporo, Japan, pp. 253-258
・Jiro Yamazaki, Joseph Tsai, Daishi Yoshino, Hideyuki Fukuhara, Hajime Tokura, Takafumi Hayashi, Jiro Iwase, "Data Processing Framework with Analytic Infrastructure for Future Smart Grid" Proc. Of ICRERA2014, pp.241-244
・Joseph C. Tsai, Neil Y. Yen and Takafumi Hayashi, "Social Network based Smart Grids Analysis," IEEE SSCI 2014, 12, 2014, Orland, Florida, USA
・T. Miyazaki, S. Yamaguchi, K. Kobayashi, J. Kitamichi, S. Guo, T. Tsukahara, T. Hayashi, "A Software Defined Wireless Sensor Network," IEEE International Conference on Computing, Networking and Communications (ICNC2014), pp.847-852, Feb. 3-6, 2014.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・Takafumi Hayashi, Junichi Yatabe, Sayaka Demura, Yasuhiro Abe, Yodai Watanabe, Hiroaki Ishikawa, Masayuki Hisada, Midori S. Yatabe, Daishi Yoshino, Joseph Tsai, Yuya Ito, Hayato Tabata, Masanari Murasawa, Kyohei Shiozawa, Toshiaki Miyazaki, and Jiro Iwase, "A Novel Network-centric Approach to a Secure and Elastic Regional Healthcare System with a Messaging Infrastructure," in Proc. of SICE 2014, 9 2014, Sapporo, Japan, pp. 253-258
・Jiro Yamazaki, Joseph Tsai, Daishi Yoshino, Hideyuki Fukuhara, Hajime Tokura, Takafumi Hayashi, Jiro Iwase, "Data Processing Framework with Analytic Infrastructure for Future Smart Grid" Proc. Of ICRERA2014, pp.241-244
・Joseph C. Tsai, Neil Y. Yen and Takafumi Hayashi, "Social Network based Smart Grids Analysis," IEEE SSCI 2014, 12, 2014, Orland, Florida, USA
・T. Miyazaki, S. Yamaguchi, K. Kobayashi, J. Kitamichi, S. Guo, T. Tsukahara, T. Hayashi, "A Software Defined Wireless Sensor Network," IEEE International Conference on Computing, Networking and Communications (ICNC2014), pp.847-852, Feb. 3-6, 2014.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催しませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阿部 泰弘

会津大学

大野ゆう子

大阪大学

澤 亮治

会津大学

田中 秀幸

東京大学

椿 広計

統計数理研究所