平成18（2006）年度　一般研究２実施報告書

課題番号	18−共研−2003			専門分類		1
研究課題名	諸科学に現れる角度データの解析
フリガナ 代表者氏名	シミズ　クニオ 清水　邦夫			ローマ字		Kunio Shimizu
所属機関	慶應義塾大学
所属部局	理工学部
職　　名	教授
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配分経費	研究費	50千円	旅　費		360千円		研究参加者数	7　人

研究目的と成果（経過）の概要

典型的な角度データの風向データが環境科学、気象学、海洋学などで自然に現れることは、すぐに理解できる。風向と同時に観測されうる量の例として風速、オゾン濃度、海面水位高などをあげることができ、このような角度およびそれに付随する量を統計的に科学するのが方向統計学の目標とするところである。
風向を２次元的に捉えれば円周上の分布、３次元的に捉えれば球面上の分布であり、２地点において同時に観測される風向もしくは１地点において異なる時刻に観測される風向はトーラス上の分布、また風向と風速の分布はシリンダー上の分布と考えられる。海面水位高を風向、風速、過去の海面水位高を使用して（時系列）回帰モデルで予測することも可能である。生命情報科学においては、たとえばバクテリアにおける遺伝子の位置情報は円周上のデータと見なすことができる。本来は角度データでなくても、データを加工して円周上に配置することにより角度データと見なして方向データ解析を実行することもできる。これらのように、角度データは諸科学において現れるので、他の例についても調査を行うと共に、角度データのモデル化、分布論、推測論、データ解析を行うことが本研究の主要な目的である。
代表者および分担者は、これまで個人的に角度データのモデル化、分布論、推測論、データ解析を行ってきた。清水は主にモデル化、分布の生成、推測論に興味を持ち、球面上の対称Pearson VII型分布の提案、円周上の非対称t分布や巻き込み法および射影法によるt分布、複素球面上の対称t分布の生成を研究した。馬場は多変量巻き込み正規分布の性質について研究し、綿森はvon Mises-Fisher (Langevin)分布において平均方向ベクトルの推測論について研究した。堀本は二つのバクテリアの遺伝子の位置の相関を調べ生命情報科学的観点による解釈を行った。
本年度の主な成果は、circular Cauchy誤差分布を持つcircular-circular 回帰モデルの提案（Kato, Shimizu and Shieh）、二つのトーラスもしくはシリンダー上の４変量分布でトーラスもしくはシリンダー上の周辺分布を規定した場合の分布の生成法の研究(Kato and Shimizu)、周辺分布を一般化von Mises分布に持つ２変量分布における推測論とそのゲノム研究への応用(Shieh, Zheng and Shimizu)である。その他にもvon Mises分布を含むJones-Pewsey分布へ立体射影の観点から接近した場合にJones-Pewsey分布が持つ弱点を克服する球面上の分布の提案(Abe and Shimizu)、正規分布の尺度混合分布の一つとして得られる一般化Laplace分布に基づく条件付き法による球面上の分布の提案(Siew and Shimizu)、円周上の非対称t分布の提案(Siew, Kato and Shimizu)、von Mises-Fisher分布の集中度の推測問題の研究(Watamori)をあげることができる。
また、１０月５日開催のワークショップでは海外から本分野における著名な研究者３名(Profs. Richard Johnson, Ashis SenGupta, Grace S. Shieh)の出席を得て活発な討論を行った。

当該研究に関する情報源（論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等）

論文：
(1) Shogo Kato, Kunio Shimizu and Grace S. Shieh, A circular-circular regression model, Statistica Sinica, to appear.
(2) Shogo Kato and Kunio Shimizu, Dependent models for observations which include angular ones, Journal of Statistical Planning and Inference　（特集号Guest Editorの段階で採択）.
(3) G.S. Shieh, S.R. Zheng and K. Shimizu (2006), A bivariate generalized von Mises distribution with
applications to circular genomes, Technical Report 06-06, Institute of Statistical Science, Academia Sinica, Taiwan.

学会等発表：
(1) Kunio Shimizu, Toshihiro Abe and Shogo Kato, t-distributions on various manifolds, Workshop on Multivariate Methods with Emerging Applications, Kolkata, India, 2006年12月26日.
(2) 清水邦夫・甫喜本司、風向・風速・波高データの統計解析、日本リモートセンシング学会、沖縄、2006年11月30日．
(3) 清水邦夫、方向統計学 (Directional Statistics) の最近の話題、応用統計学会、埼玉、2006年5月27日．
(4) 加藤昇吾・清水邦夫、A bivariate circular distribution with uniform marginals、日本数学会、大阪、2006年9月20日．

プレプリント：
(1) Toshihiro Abe and Kunio Shimizu, A new family of circular distributions induced by stereographic projection.
(2) Hai-Yen Siew and Kunio Shimizu, Generalized Laplace distribution by conditioning scale mixture of normal on spheres.
(3) Hai-Yen Siew, Shogo Kato and Kunio Shimizu, Asymmetric t-type distribution on circles.
(4) Yoko Watamori, Confidence intervals for the concentration parameter of the von Mises-Fisher distribution.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

　平成１８年１０月５日（木）統計数理研究所講堂において３０名の参加者を得てワークショップ「WORKSHOP ON DIRECTIONAL STATISTICS」を開催した。発表者は発表順に(1) Richard A. Johnson, Department of Statistics, University of Wisconsin-Madison, U.S.A., (2) Grace S. Shieh, Institute of Statistical Science, Academia Sinica, Taiwan, (3) Ye Xiong, The Graduate University for Advanced Studies and Shin Nippon Biomedical Laboratories, Ltd., (4) Ashis SenGupta, Applied Statistics Division, Indian Statistical Institute, Kolkata, India, (5) Yoko Watamori, Department of Mathematics and Information Sciences, Osaka Prefecture University, (6) Yasumasa Baba, The Institute of Statistical Mathematics, (7) Shogo Kato, Graduate School of Science and Technology, Keio University, (8) Toshihiro Abe, Graduate School of Science and Technology, Keio University, (9) Hai-Yen Siew, The Graduate University for Advanced Studies であった。本ワークショップに関するより詳細な情報（タイトル、アブストラクト等）はhttp://www.ism.ac.jp/~baba/sympo-co.htmlで見られる。

研究参加者一覧
氏名	所属機関
Siew Hai-Yen	総合研究大学院大学
謝　叔蓉	中央研究院
SenGupta Ashis	Indian Statistical Institute
馬場　康維	統計数理研究所
堀本　勝久	産業技術総合研究所
綿森　葉子	大阪府立大学