平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2012

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

7

研究課題名

経験類似度に基づくボラティリティの推定と予測に関する研究

フリガナ

代表者氏名

モリモト タカユキ

森本 孝之

ローマ字

Morimoto Takayuki

所属機関

関西学院大学

所属部局

理工学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

30千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

・研究目的

事例ベース意思決定理論に基礎を置いた経験類似度という概念を適用することにより,異なるモデルから生じるボラティリティ予測値を結合することができる.そして,経験類似度の枠組みでは,意思決定者が予測モデルの成功確率の評価を行わずに,類似によって将来を予測することができる.具体的には,過去のモデル予測値と対応するボラティリティの実現値との距離を定量化することによって,予測の組合せの重みを決定し,それを用い将来のボラティリティを予測する.本研究では,この経験類似度モデルから得られたボラティリティの予測値とその他時系列モデルの予測値との理論的,実証的な比較分析を行う.

・研究成果(経過)

本研究では,事例ベース意思決定理論 (Gilboa and Schmeidler, 1995, 2001) に基礎を置いた Gilboa et al. (2006) を端緒とする経験類似度の枠組みに着目し,Golosnoy et al. (2014) の提案した経験類似度に基づく時系列モデルを用いボラティリティ予測の実証分析を行なった.ここでの実証研究の中心的貢献は,経験類似度モデル ES0,ES1,ESQ とその他の時系列モデルとの予測力比較にある.モデルの予測力比較については,最初に 4 つの誤差関数による MCS を用いることにより,複数の銘柄と推定予測期間におけるモデルの予測力を順位付けし,最良モデルの累積頻度を分析した.分析結果としては,インサンプルでは株式指数,個別銘柄共に HARQ,アウトオブサンプルでは株式指数は ESQ,個別銘柄 ES0 がそれぞれ最良モデルとしての頻度が最も高いという結果となった.次に,複数の銘柄と推定予測期間におけるモデルの予測力を比較するために,MZ 回帰を実行した.この MZ 回帰の自由度調整済み決定係数 R^2 に基づく分析結果によれば,インサンプルでは株式指数はESQ,個別銘柄は ES1,アウトオブサンプルでは株式指数,個別銘柄共に ES0 が最良という結果となった.MCS および MZ 回帰の結果において,アウトオブサンプルにおける ES0 の予測力が他のモデルと比較して高くなる傾向は,先行研究 Golosnoy et al. (2014) の結果と整合的である.また,HARQ,ESQ といった高頻度データから算出された実現測度 RQ を含むモデルが誤差関数,MCS,MZ 回帰において全般的に好評価であったことは,高頻度金融データの集約がもたらす情報量の多さを改めて確認させられる結果となった.また,本研究ではボラティリティの非対称性について特に考慮に入れていないが,非対称性はボラティリティを予測する上で非常に重要な因子であるため,この点については今後の研究課題としたい.最後に,経験類似度モデルを日本の株式市場におけるボラティリティ分析に適用し,さらに, HARQ,ESQ といった実現測度 RQ を含むボラティリティモデルを体系的に扱った文献は,我々の知る限り,本研究が本邦初である.従って,経験類似度モデル金融分野への適用,実現測度 RQ を含むボラティリティモデルの応用は始まったばかりであり,今後の研究の発展に期待したい.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究成果を論文「経験類似度に基づくボラティリティ予測」(森本・川崎)に纏め「統計数理」に投稿し受理された.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催無し

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 能典

統計数理研究所

山下 智志

統計数理研究所