平成142002)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

14−共研−1016

専門分類

7

研究課題名

比較ゲノム学による真核生物の系統進化の解明

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

Hashimoto Tetsuo

所属機関

筑波大学

所属部局

生物科学系

職  名

教授

所在地

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研究目的と成果(経過)の概要

近年、遺伝子配列データの蓄積を背景として、真核生物全体の系統樹を推測する試みが盛んになされ、動物+真
菌、植物、アメーボゾア、アルベオラータ+ストラメノパイル、ユーグレノゾア、ディプロモナス、パラバサーラ
など単系統群をなす真核生物の大グループの存在が明らかとなってきた。しかしながら、これら大グループ相互の
系統関係は全く明らかではなく、真核生物の系統樹の根もとがどこにあるかも不明である。個々の遺伝子の解析か
ら得られている結論はまちまちであり、異なる遺伝子間での結論が、統計的誤差の範囲を超えて明らかに矛盾する
場合もある。本研究では、比較ゲノム学の視点から、可能な限り多くの遺伝子のもつ情報を結合するというアプロ
ーチにより、真核生物の大グループ間の系統関係と真核生物系統樹の根もとを推定し、これまで単独の遺伝子に基
づいて推定された結果よりも頑健な推定結果を得ることを目的とする。
 この目的を達成するためには、一般的に蓄積データの少ないパラバサーラ、ディプロモナス、ストラメノパイル
の各分類群で、この問題の解明のために有用と考えられる遺伝子の遺伝子解析を行い、系統樹の解析上必須なデー
タを得る必要がある。本年度は、これらの分類群に属する生物種について、リボソームRNA、リボソーム蛋白質、
ペプチド鎖伸長因子などの遺伝子解析を行った。
 これらを含め解析の対象とする各遺伝子について、最尤法の枠組みのなかで、分子進化の過程に関するさまざま
な置換モデルを適用し、Rate Across Site(RAS)モデルを導入して系統樹の推測を行った。さらに、総合評価の
解析により、個々の遺伝子から得られる情報を結合することを試みた。その際、解析結果に与える分子進化モデル
の影響、組成値のバイアスの影響、アウトグループのとり方の影響、生物種のサンプリングの影響、進化速度の大
きい座位を削除したときの影響、情報の結合に用いる遺伝子の構成の影響などを可能な限り詳細に調査した。こう
した Sensitivity analysis を徹底して行うことにより、ディプロモナスとパラバサーラが姉妹群を形成する可能
性の高いことなどの新知見を得た。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Arisue,N.,Hashimoto,T.and Hasegawa,M.(2002)Early evolution of eukaryotes inferred from genome
data.,International Congress Series 1628,Springer Verlag,pp209-215.
橋本哲男(2002)ミトコントリアをもたない原生生物の系統と真核生物の初期進化。「生物の科学 遺伝別冊15号
遺伝学はゲノム情報でどう変わるか」(高畑尚之,中込弥男,森脇和郎企画),pp53-61.
橋本哲男,有末伸子,長谷川政美(2002)分子系統樹法の応用と現状の問題点-真核生物の初期進化の解析を例と
して−,統計数理,50,45-68.
Arisue,N.,Sanchez,L.B.,Weiss,L.M.,Muller,M.and Hashimoto,T.(2002)Mitochondrial-type hsp 70 genes
of the amitochondriate protists,Giardia,intestinalis,Entamoeba histolytica and two microsporidians.,
Parasitol.Int.,51,9-16..
Arisue,N.,Hashimoto,T.,Lee,J.A,Moore,D.V.,Gordon,P.,Sensen,C.W.,Gaasterland,T.,Hasegawa,M.
and Muller,M.(2002)The phylogenetic position of the pelobiont Mastigamoeba balamuthi based on
sequences of rDNA and translation elongation factors EF-1 α and EF-2.,J.Eukaryot.Microbiol.,49,1-10.
Arisue,N.,Hashimoto,T.,Yoshikawa,H.,Nakamura,Y.,Nakamura,G.,Nakamura,F.,Yano,T.and
Hasegawa,M.(2002)Phylogenetic position of Blastocystis hominis and of stramenopiles,inferred from
multiple molecular sequence data.,J.Eukaryot.Microbiol.,49,42-53.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

有末 伸子

大阪大学

長谷川 政美

統計数理研究所

三井 英也

総合研究大学院大学

矢野 隆昭

昭和大学