平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2033

専門分類

7

研究課題名

類洞の立体構造に影響を及ぼす肝細胞の形状---その統計的解析

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

Tanemura Masaharu

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ヒトの肝細胞と肝癌細胞を、それぞれ3稜頂点多面体と見なすことによって、個々の細胞の面数の分布およ
び類洞(微小血管網)に接する細胞の面数を、ヒト肝臓組織の観察から求め、それらの結果をもとにモデルを
構築してコンピュータ実験を行い、類洞の立体構造に関して正常肝臓と肝癌との間で差を生じさせているメカ
ニズムは何かを解明することが本共同研究の目的である[共同研究者:清水英男(湘南鎌倉総合病院)、末吉
徳芳(順天堂大学)]。
 平成12年度の共同研究経費で購入した Rhodamine によって標識した Phalloidin を反応させて、ヒト肝
硬変組織をレーザー共焦点顕微鏡で観察して120枚の連続断面画像を作成し、それらの中から細胞全体が含
まれている肝細胞を見つけ出して、各断面における多角形細胞の角数を求めるとともに、disector法により、
肝細胞1個の平均体積を肝硬変と正常肝に対して求め、比較した(清水、末吉、種村(2000))。
 平成13年度は前年度に作成した画像を Adobe Photoshop によって処理し、より精密なデータを作
成し、それらを画像表示ソフトウェア Confocal Assistant によってパーソナル・コンピュータの画面
上での連続表示を可能にした(末吉、清水)。この結果、ヒト肝臓組織における類洞を含む3次元構造
の観察結果が正常肝、肝硬変ともコンピュータ画面上で容易に再現可能になり、立体構造モデルの構築
等に大きな役割を果たすことができた。
 平成14年度は、清水は肝臓における類洞ネットワーク構造の格子型モデルによるアプローチを追求
して、肝臓の動脈と静脈の血管系を構築する二つのアルゴリズムを比較した(高木、西川、清水(2002))。
種村は、上述のヒト肝臓組織に対する連続表示画像をコンピュータで眺めることによって示唆される観
察結果から、ボロノイ多面体を用いた類洞ネットワーク構造の3次元モデルの着想を得た。
 平成15年度には、清水は格子型モデルによる類洞ネットワーク構造構築を昨年度に引き続いて検討
し、3次元のネットワークとして立方体格子およびケルビンの14面体格子の二つを作成して、それぞ
れ初期接続の割合の調整により、正常肝と肝硬変に対応する類洞のモデルとなりうることを示した(金
子、高木、清水(2003))。種村は、3次元空間にランダムに散布した球配置に対するボロノイ多面体分
割を初期条件とする調節モデルを実現して、ある種の規則的な多面体構造が得られることを示し、この
構造を元にして類洞ネットワークを構築するアイデアに達して、正常肝を念頭においたモデルを提案し
た(種村、清水、末吉(2003))。
 平成16年度は、正常肝に対するモデルに改良を加え、肝硬変にも対応するモデルを構築するために、
重み付きボロノイ多面体分割を導入した。その結果、正常肝と肝硬変肝との間で個々の肝細胞の大きさ
が異なることが類洞の立体構造に影響を及ぼしていることの示唆が得られた(種村、清水、末吉(2004))。
 今後は、モデルの一層の改良を行うとともに、モデルのパラメータを種々に調節したコンピュータ実
験を重ねることによって、実際の組織の連続切片画像から得られた観察結果との比較を行いたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

● 論文
清水英男、末吉徳芳、種村正美(2000)。「肝硬変の類洞網はなぜ粗いのか?」,形の科学会誌,
Vol.15,pp.202-203。
Tanemura,M.(2004)."On random packing of spheres:A retrospective overview",Symmetry:
Art and Science,2004(1-4),pp.250-253,2004.
金子宣弘、高木隆司、清水英男(2004)。「肝臓類洞の最適設計シミュレーション」,形の科学会
誌,Vol.19,pp.113-114。
種村正美、清水英男、末吉徳芳(2004)。「肝臓組織における類洞の立体構造モデル?---肝硬
変肝の場合---」,形の科学会誌、Vol.19,pp.193-194。
● 学会発表
清水英男、末吉徳芳、種村正美(2001)。「肝硬変の類洞網はなぜ粗いのか?」,第50回形の科
学シンポジウム,中央大学,東京,2001年3月16-17日。
R.Takaki,H.Kitaoka,T.Nishikawa,H.Kaneko and H.Shimizu(2002)."Formation of branching
systems in human organs",Int.Conference on Morphogenesis and Pattern Formation
in Biological Systems,Chubu Univ.,Kasugai,Sep.24-27,2002.
金子宣弘、高木隆司、清水英男(2003)。「肝臓類洞の in silico 構築」,第56回形の科学シン
ポジウム,福井大学,福井市,2003年11月15-16日。
種村正美、清水英男、末吉徳芳(2003)。「肝臓組織における類洞の立体構造モデル」,第56回形
の科学シンポジウム,福井大学,福井市,2003年11月15-16日。
金子宣弘、高木隆司、清水英男(2004)。「肝臓類洞の最適設計シミュレーション」,第57回形
の科学シンポジウム,理化学研究所,和光市,2004年6月11-13日。
M.Tanemura(2004),"On random packing of spheres:A retrospective overview",The 6th
Interdisciplinary Symmetry Congress and Exhibition of ISIS-Symmetry,Budapest,
Hungary,Oct.22-29,2004.
種村正美、清水英男、末吉徳芳(2004)。「肝臓組織における類洞の立体構造モデル?---肝硬
変肝の場合---」,第58回形の科学シンポジウム,本部町,沖縄県,2004年11月10-
14日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

清水 英男

湘南鎌倉総合病院 

末吉 徳芳

順天堂大学