平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−18

専門分類

3

研究課題名

人口制御要因としての文化機構の解明−人口拡散の相互作用モデルと人口学的シミュレーション分析−

フリガナ

代表者氏名

スギトウ シゲノブ

杉藤 重信

ローマ字

所属機関

椙山女学園大学

所属部局

人間関係学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,人口拡散に貢献する文化的社会的要因について現実の資料から帰納的に得られたデータをもとにシミュレーションを行い,その効果について検証するとともに,複数の人口集団が相互に干渉し人口が変動する場合についての数理モデルを構築することにある。


I.共同研究実施状況
1.平成2年11月29日から30日
発表者:小島三弘(総合研究大学院大学・比較文化学専攻)
題目:「理想人口モデルと人口シミュレーション」
発表者:杉藤重信(椙山女学園大学・人間関係学部)
題目:「オーストラリア・アボリジニの社会構造と人口」
出席者:杉藤,小山,小島,伊藤,西山,海野,石黒,坂本
2.平成2年12月21日から22日
共同研究成果報告および研究成果取りまとめについて
出席者:杉藤,伊藤
3.平成3年3月26日から27日
発表者:木下太志(日本システム開発研究所)
テーマ:「人口学,人類学とコンピュータ」
発表者:西山賢一(国際大学・東京分室)
テーマ:「文化生態系としてのムラ−もうひとつの日本的経営の起源」
出席者:杉藤,小山,小島,伊藤,西山,小川
II.本年度における成果
人類の人口現象は他の生物とはことなり,巨視的には生物種としての人口現象=「自然環境(の変動)とそれにたいする反応」として分析できるとしても,微視的には一意的なモデル化は困難である。たとえば,人口飽和量は生物種としては,自然環境に対する収奪(exploitation)の関数として位置づけることができるであろう。しかし,現実には,生業や社会組織,各種の出生と死亡に関する慣習(授乳期間,避妊,間引き,性に関するタブーなど),人口に関する社会意識(移住動機,過疎・過密観など,あるいは心理)などによって,それぞれの社会の人口動態はおおきく異なってくる。人口現象解明のためのモデルは,社会・文化的要因を加味した複雑な要素を含んだ一連の確率過程モデルとして記述されるはずである。
今年度の研究会における報告の要点は以下のとおりである。自然人類学の立場から年齢別出生率,年齢別死亡率と人口増加率の関連についてコンピュータ・シミュレーションの方法を用いて報告したもの(小島)。社会人類学の立場から婚姻規則と人口の関連をオーストラリア・アボリジニの社会構造にもとづき報告したもの(杉藤)。人口人類学の立場から人類学における人口研究の歴史と枠組みについて報告した後,江戸時代の山形県における宗門改帳の事例をひいて,商品作物(紅花)生産農村における人口動態を報告したもの(木下)。また,江戸時代の5人組帳をもちいて「イエ」の盛衰をとらえることによって「企業家的農民」の姿を報告し,さらにシミュレーションを試みるという報告(西山)もたいへん興味深いものであった。
今年度は,所期の目的をはたすまでにはいたらなかったが,今後も引続き継続して共同研究を行なってゆく予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

杉藤重信「人口制御要因としての婚姻規則−コンピュータ・シミュレーションによる分析」,小山修三・編『近代狩猟採集民オーストラリア・アボリジニの研究(仮題)』国立民族学博物館研究報告別冊(平成3年9月,出版予定)
木下太志「江戸時代における農民の死亡構造−宗門改帳の分析を通して」(学会発表),(於:島根医科大学),日本人口学会(平成3年5月31日,予定)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

沖縄県波照間島とオーストラリア・エルコ島のデータをコンピュータ入力し人口データベースを構築し,計量的分析をおこなう。それをもとに人口を制御する要因としての出産間隔,出産力,婚姻規則,社会行移動,災害(戦争,疫病などを含む)などに関するモデルの構築し,シミュレーションをおこなう。しかし,人口規模のことなる社会が隣接していたり,人口制御のための各種のシステムがことなる複数の社会全体の人口の挙動を明らかにするためには,閉鎖系のシミュレーションでは不足であり,閉鎖系間の相互作用モデルの構築を必要とする。数理モデルとしての開放系の相互作用モデルの構築のために統計数理研究所との共同研究を行なうことにした。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

小島 三弘

総合研究大学院大学

小山 修三

国立民族学博物館

田辺 國士

統計数理研究所

田村 義保

統計数理研究所