平成202008)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

20−共研−1003

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

海底摩擦パラメータの最適推定による高精度海洋潮汐モデリング

フリガナ

代表者氏名

サトウ タダヒロ

佐藤 忠弘

ローマ字

Tadahiro SATO

所属機関

東北大学

所属部局

大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター

職  名

客員教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

アラスカ州南東域(SE-AK)は氷河後退に伴う地殻隆起が顕著な場所として知られている.東北大学はアラスカ大学フェアバンクス校と共同で,この地域で,重力やGPSの観測を多数展開し,地球の粘弾性応答を研究している.重力計やGPSの観測データには,気象・海洋変動に起因する信号も一緒に観測されており,その内,海洋潮汐に伴う質量変化に起因する変動の影響が大きい.しかし,アラスカ州南東域のようなフィヨルドによって特徴付けられる複雑な沿岸付近において,全球モデルの結果の精度は不十分であり,より高精度な領域海洋潮汐モデルの開発が望まれた.そこで,本研究では,海洋潮汐モデルの開発における最適なパラメータ推定技術の開発を目的とした.
本研究にも関連し,SE-AKで行っているGPS,重力計のデータを解析し,従来開発してきた海洋潮汐モデルを使い固体地球潮汐も含めたこの地域での潮汐の特徴を議論した.特にGPSについては,潮汐と比べることで,この観測手段の誤差要因について新しい知見をえることができた.その解決には,より高度な統計的な解析方法が必要なことが明らかになった(論文1参照).
  海洋潮汐モデルの高精度化において重要なポイントに,海底地形,境界値の精度向上と,支配方程式に含まれる海底摩擦等の物理パラメータの高精度化がある.前者については,Inazuが精力的にデータを収集し,それを使った詳細なモデルを構築することに成功した.また,モデルの高精度化の一環として,別予算で,現地での海底圧力計による海洋潮汐の観測を実施した.得られたデータの解析結果は本研究に利用された.本研究で構築したモデルから,この海域における潮汐エネルギーの消散量が,従来の研究で推定されるものより遥かに大きいことを明らかにした.(論文2参照,講演2参照).
Inazuは,上記,海底地形と物理パラメータの最適化に関し,進化アルゴリズムを用いた境界条件およびパラメータの最適化についても研究を行った.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表:

論文1:
T. Sato,*, S. Miura, Y. Ohta, H. Fujimoto, W. Sun, C.F. Larsen, M. Heavner, A.M. Kaufman, J.T. Freymueller: Earth tides observed by gravity and GPS in southeastern Alaska, Journal of Geodynamics, 46 (2008) 78−89, 2008.
論文2:
Daiske Inazu, Tadahiro Sato, Satoshi Miura, Yusaku Ohta, Kazuyuki Nakamura, Hiromi Fujimoto, Christopher Larsen, and Tomoyuki Higuchi: Accurate Ocean Tide Modeling in Southeast Alaska and Large Tidal Dissipation around Glacier Bay, Journal of Oceanography, Vol. 65, pp. 335 to 347, 2009.

学会発表:

講演1.
Hiromi Fujimoto, Satoshi Miura, Tadahiro Sato (Tohoku Univ.), and Daisuke Inazu (Inst. Stat. Math./JST), Ocean Bottom Pressure Observation in the Midst of Lynn Canal, Southeast Alaska, 7th General Assembly of Asian Seismological Commission and Seismological Society of Japan, 2008, Fall meeting, Y4-218 (2008).
講演2.
Inazu, D, Sato, T, Nakamura, K, Miura, S Fujimoto, H, Larsen, C F, Higuchi, T: Accurate ocean tide modeling in southeast Alaska and large tidal dissipation around Glacier Bay, AGU 2008 Fall Meeting, OS41B-1223, 2008.

部内講演:
稲津大祐: 進化アルゴリズムを用いた海洋潮汐モデルの境界条件およびパラメータの最適化

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲津 大祐

統計数理研究所

中村 和幸

統計数理研究所

樋口 知之

統計数理研究所

藤本 博巳

東北大学

三浦 哲

東北大学