平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−86

専門分類

7

研究課題名

呼吸の神経機構の統計数理学的研究

フリガナ

代表者氏名

オク ヨシタカ

越久 仁敬

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

胸部疾患研究所

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年、脳幹内の呼吸ニューロン間の入出力関係が明らかにされつつあるが、本研究は、それらの電気神経生理学的知見を基にして呼吸中枢のニューロン機構、特に呼吸リズム生成の機構を統計数理学及び非線形力学理論を用いて解明する事を目的とする。


脳幹内の呼吸パターン・ジェネレータの内部構造を統計数理学的に推測する目的で以下の研究を行った。実験開始当初は、ネンブタール麻酔ネコを用いる予定であったが、迷走神経を切断しないと呼吸が人工呼吸器のリズムとカップリングし、また、迷走神経を切断すると呼吸が不安定になるため、除脳・非動化・迷走神経切断ネコを用いることにした。
このプレパレーションでは、肺伸展受容器からのフィードバックがないために、脳幹の呼吸パターン・ジェネレータは、外部からの情報をほとんど受けずに独立してリズムを生成する。この状態で、中枢からの呼吸出力を50呼吸分横隔神経発射で解析した。
Correlation dimensionはどの動物でもほぼ2に等しく、中枢呼吸パターン・ジェネレータ(CPG)は、リミット・サイクル振動子と見なせることがわかった。そこで我々は、現在まで明らかになっている呼吸ニューロングループの特性及びニューロングループ間の結合に基づく数学モデルのシミュレーションを行うことによって、実際にリミット・サイクル振動子が形成されるか否かについて検討した。
リミット・サイクル振動子は、1)自己興奮結合と一時遅れの自己抑制成分を持った1ニューロングループ、2)それぞれが自己抑制成分を持ち互いに抑制しあう2ニューロングループ、3)環状に結合した3つのニューロングループが順番に次のニューロングループを抑制している場合において形成され得た。いずれの場合にも各ニューロングループを定常的に興奮させる入力が必要であった。
脳幹上部(橋)の呼吸ニューロングループを破壊すると呼吸リズムは不規則になる。我々は現在、このときの呼吸が低次元のカオスか否かについてCorrelation Dimensionなどを用いて検討中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

越久 仁敬、呼吸リズムとパターン生成機構についての理論的考察、第5回呼吸ディスカッションの会、
平成4年4月1日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

脳幹内の腹側呼吸群(VRG/BOT)ならびに背側呼吸群(DRG)の呼吸ニューロンに関して、以下の研究を行う。イ)延髄の呼吸ニューロンの発火パターン時系列を解析して呼吸バターンジェネレータの内部構造を推測する。ロ)脳幹固有ニューロンと運動ニューロンの発火パターン時系列を比較して呼吸中枢における情報伝達機構について解析を行う。
以上の研究をネンブタール麻酔ネコを用いて行う。本研究には高度の数理解析理論を要するため、統計数理研究所との共同研究を行うことが必須である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

江連 和久

(財)東京都神経科学総合研究所

田村 義保

統計数理研究所