平成202008)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

20−共研−4403

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

天然林の持続的利用に関する数理モデルの構築

重点テーマ

フィールド生態学と統計数理

フリガナ

代表者氏名

エノキ ツトム

榎木 勉

ローマ字

ENOKI Tsutomu

所属機関

九州大学

所属部局

大学院農学研究院森林資源科学部門

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

133千円

研究参加者数

8 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究では、野外調査による現象の理解と数理モデルによる分析をもとに、森林施業によって天然林の構造・多様性・機能が劣化するリスクを実証的かつ理論的に解明することを目的とする。最終的には種多様性と生態系機能の保全を考慮した天然林の生態学的管理の具体的指針を、本研究の成果として提示する。そのために、天然林の林木種多様性と生産量の時間的・空間的変動パターンを、野外調査によって明らかにし、林分レベルの森林動態を記述する数理モデルを構築する。また、天然林の時空間的異質性を創出するメカニズムを導入した森林動態モデルを用いたシミュレーション分析により、森林伐採が種多様性と生産量の動態に及ぼす影響を定量化する。
 過去数年間にわたり亜熱帯常緑広葉樹林において、時間的・空間的不均一性に着目し行ってきた野外調査で得られたデータに基づき、森林の動態を記述する個体ベースモデルを構築した。天然林の林分構造、林床での有機物分解過程などが地形や台風という撹乱に大きく影響を受けることを明らかにした。様々な森林施業シナリオをモデル上でシミュレーション解析し、人為インパクトが森林の構造・機能の劣化を引き起こすメカニズムを分析した。また、天然林が、様々な頻度や空間規模の伐採インパクトを受けた場合に、林木種多様性と生産量が不可逆的に異なる安定相に転移する条件、あるいは潜在的な安定相に修復しうる条件を検討した。
 近年、シカ食害で下層植生が衰退し、森林の更新動態が劇的に変化している天然林が多く存在する。天然林の利用には様々な攪乱の複合的な影響を理解する必要がある。シカによる食害が甚大な九州山地南部のモミやツガ等の針葉樹が混交するブナ林において調査を行い、萌芽成長を行う種や個体の空間分布パターンに着目し、天然林の動態を記述し、多様性-生産性の関係を検討した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文

このプロジェクトの成果として、原著論文をJournal of Forest Research誌へ投稿、現在審査中である。



学会発表
6th Workshop of"uneven-aged silviculture" IUFRO group in Shizuoka(2008)において以下論文として発表した。
Kubota Y., Fujii S., Oosako T., Enoki T. (2008) Resilience of subtropical forests degraded by clear logging and potential management strategies. Abstract on the conference on Feasibility of Silviculture for Complex Stand Structures : 53p.

Oosako T., Kubota Y., Enoki T. (2008) Effects of Pinus luchuensis plantation on secondary succession and stand dynamics of the subtropical forest in southern Japan.  Abstract on the conference on Feasibility of Silviculture for Complex Stand Structures : 155p.

Fujii S., Kubota Y., Enoki T. (2008) Long-term ecological impacts of clear-logging on tree species diversity
in the subtropical forest, southern Japan. Abstract on the conference on Feasibility of Silviculture for Complex Stand Structures : 161p.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

下記の研究会を主催し成果の一部を発表した。
第56回日本生態学会大会、自由集会「天然林施業の実行可能性−過去の失敗分析に基づいた新たな森林施業研究へ向けて−」、2009年3月17日17:15-19:30、岩手県立大学、150名

下記の研究会で成果をもとに議論を行なった。
重点的共同利用研究「フィールド生態学と統計数理」研究集会、2008年12月12日14:00-18:30、統計数理研究所、30名

また、熊本県国見山の野外調査では現地検討会を行い、調査前後では九州大学演習林において会議を行った。2008年9月8日〜12日、10名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

池崎 翔子

九州大学

大迫 武治

九州大学

小野澤 郁香

九州大学

久保田 康裕

琉球大学

島谷 健一郎

統計数理研究所

鶴田 健二

九州大学

藤井 新次郎

九州大学