平成252013)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

25−共研−2086

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

8

研究課題名

新学習指導要領に対応した入試問題とアセスメントの開発

フリガナ

代表者氏名

フカサワ ヒロミ

深澤 弘美

ローマ字

Fukasawa Hiromi

所属機関

東京医療保健大学

所属部局

医療保健学部医療情報学科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

153千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,小学校,中学校,高等学校の新学習指導要領に対応した新しい統計教育の評価方法を確立することである.本年度は,GAISEガイドラインおよびASA公開する教材サイトSTatistics Education Web (STEW)等を参考に
1.中学校「資料の活用」に対応した教材とそのアセスメント
2.高等学校 数学1「データの分析」に対応した教材とそのアセスメント
3.高等学校 数学B「確率分布と統計的推測」に対応した教材とそのアセスメント
を,開発することを目標に研究を進めてきた.
また,今年度は,特にプロジェクト型の授業教材とその成果を測るアセスメントに関する研究に焦点を当てた.

成果(経過)の概要
1.中学校「資料の活用」に対応したプロジェクト型授業とそのアセスメント
中学校「資料の活用」に対応した問題の開発については,これまでイギリス中等教育終了試験GCSE,統計検定4級,高等学校入試問題等を参考に,評価の在り方を検討してきた.諸外国の統計教育の研究論文を見てもペーパー試験において,計算のみならず思考力を問う問題の重要性は強く指摘されている.我が国においても,全国学力テストや高校入試問題(数学),統計検定などの試験問題において,個人の記録データを度数分布表にまとめる方法を問う問題や,ヒストグラムを比較する問題など,考えさせる問題が出題されてきている.
ASAの公開するSTatistics Education Web (STEW)では,GAISEガイドラインのみならず全米の統一数学コアカリキュラムに準拠した教材を多く公開している.日本の中学校の学習指導要領の範囲は限られているので,海外の教材でこの範囲に収まるもの少ないが,5数要約や箱ひげ図を用いた教材を工夫して活用することができる.またアセスメントについては,授業内では昨年度開発した高校生向けの自己評価シートを改良し,最終レポートを含めて評価し,ペーパー試験においても問題解決のプロジェクトの中で,生徒自ら手法を取捨選択して分析を行い結論を導き出すことができる力を問う問題を開発した.授業およびアセスメントの実施は平成26年度の授業の中で実践していく予定である.

2.高等学校 数学1「データの分析」に対応したプロジェクト型授業とそのアセスメント
高等学校 数学1「データの分析」に対応した問題に対応した問題の開発については,これまでAP Statistics,統計検定3級,イギリスGCSE試験の問題を参考に入試試験問題等の検討を行ってきた.単純な計算や選択式の問題だけではなく,思考力を問う問題の出題の重要性を確認できた.また,問題解決型の統計教育を実施するうえでは,従来のペーパー試験のみでは対応しきれないため,本研究ではイギリスのコースワークの評価方法およびIBのプロジェクト型授業の評価方法を参考に,独自の評価基準及び評価シートを開発し,昨年度より検討している.本年度は教材とセットで再度評価項目等を検討した.年齢と身長,ジャンプ力と身長,スポーツ選手の年棒と成績,生活習慣と情報通信の利用などの2変量の関係を教材に授業モデルを作成した.授業の実施及びそのアセスメントのパイロットスタディを,研究室のゼミ生(15名)を対象にして実施した.まず,学生間の議論により,授業で用いるデータの収集方法を調査票と決め,調査票のデザインや質問内容を作成した.次に,大学の学部3年生の授業(履修登録者数:90名)においてアンケート調査を2回実施し,データを収集した.そして,データの入力,チェック,クリーニング作業を行い,解析用データを作成した.学生それぞれが選んだテーマごとにデータ解析を行った結果を,研究室のゼミにおいて発表した.各発表に対して,評価シートを用いて,自己評価および相互評価を行った.その結果,発表内容、評価基準及び評価シートについてポジティブな意見とネガティブな意見が寄せられた.加えて,大学内で定期的に行われる授業評価アンケートのようなチェック方式を用いれば,評価基準の点数が簡易に累積計算できるのではないかと提案が上がった.授業の実施及びそのアセスメントの本試行は,平成26年度の授業で行う予定である.


3.高等学校 数学B「確率分布と統計的推測」に対応した問題
高等学校数学B に対応した問題に関しては,高等学校の教科書および,AP Statisticsの問題,STatistics Education Web (STEW)の教材について調査した.具体的な授業案やアセスメントについては次年度以降の課題とする.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[1] 「MOOCで配信される統計教育」
統計数理研究所共同研究リポート313「統計教育実践研究」第6巻
2014年3月,P13-16

[2] 「統計的思考力の評価」,深澤弘美,櫻井尚子,和泉志津恵,中本信子,科学教育学会第37回年会 年会論文集 116-117ページ.

[3]「国内外における統計教育カリキュラムとコンテンツの現状-標準カリキュラムの策定に向けて-」,深澤弘美,2013年度 統計関連学会講演報告集,pp.267,2013年.

[4]「統計的問題解決型授業の評価」,深澤弘美・中本信子・櫻井尚子・和泉志津恵,2013年度数学教育学会春季年会,京都(京都大学),2013.3.22.

[5]「学校教育における問題解決型統計教育とその評価」,深澤弘美・
櫻井尚子・和泉志津恵,第 9 回 統計教育の方法論ワークショップ(JCOTS13),東京(学習院大学),2013.3.1.

[6]「日本統計学会公式認定 統計検定4級対応 資料の活用」深澤弘美・渡辺美智子(日本統計学会編),東京図書.

[7] 「新指導要領に対応した計算機を利用した統計教育の実態と今後の展開」竹内光悦・深澤弘美・中西寛子,日本計算機統計学会第 27 回シンポジウム論文集,111-112.(2013)

[8] 「数学 I における統計の授業展開の実態調査」竹内光悦・深澤弘美・中西寛子,2013 年度数学教育学会秋季例会発表論文集,92-94.

[9] 「新指導要領に対応した高等学校における統計教育の実態追跡調査」竹内光悦・深澤弘美・中西寛子,2013 年度統計関連学会連合大会講演報告集,273.

[10] 「学習指導要領の改訂による教員の統計に関する意識の変化」竹内光悦・深澤弘美・中西寛子,
日本行動計量学会第 41 回大会発表論文抄録集,184-185.(2013)

[11] 「家庭内暴力とスポーツ ?イベントの勝ち負け?」和泉志津恵. 統計 2013年12月号, 71-76.

[12]「統計家は人々の求める問いに答えることができる」深澤弘美,統計 2013年3月号,76-79.
研究会


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

「テーマ:全米数学統一コアカリキュラム」,2013年3月14日,東京(立川)3名
「テーマ:STEWの教材」,2013年1月11日,東京(青山)3名
「テーマ:次年度の研究について」,2012年12月26日, 東京(立川),2名
「テーマ:MOOC」,2012年12月26日, 東京(竹橋),3名
「テーマ:AP Satisticsと大学入試問題」,2012年5月31日,東京(青山),2名


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

和泉 志津恵

大分大学

櫻井 尚子

東京情報大学

田村 義保

統計数理研究所

松山 耕大

大分大学

薬師寺 亨介

大分大学