昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−69

専門分類

7

研究課題名

動く調査対象集団の標本調査に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ハヤシ フミ

林 文

ローマ字

所属機関

東洋英和女学院大学

所属部局

人間科学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

12 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

動物個体数推定は自然保護対策の基本であり,林業農業その他の開発と自然環境との調和を考える上で不可欠である。すでに野兎において推定法が確立しているほかは未開発の領域となっている。ここでは問題の多い哺乳動物カモシカ・クマ・キツネについて個体数推定の統計的方法を開発し,実用化を図る。


1.長野県下伊那のカモシカ生息数推定について
前年度のヘリコプターを使ったカモシカ本体と足跡の観察調査は積雪の状態が悪く写真を読み取ることがかなり困難であった。その中ではっきり読み取れたのは飯田と木曽の間の稜線部分で標高1600−2000mの天然林の多い地域である。この部分で読み取った足跡数から生息数を推定したところ1ha当り0.153頭と非常に高い密度が得られた。仮にこれを飯田木曽の調査域約4万haに単純に延長すると約6000頭となる。前年度の推定600頭からすると異常な数であり,本年度の調査が期待されていた。しかし天候の関係で実施できなかった。又,被害データも新たなものを加え被害量の変化からする生息数推定を試みたが,これを今のところ安定した数が得られていない。行政データが種々の要素を含むためデータとしての信頼性にかけ,今後もう少し正確なしかも実行可能なデータのとり方を検討したい。
2.北海道ノウサギ,キタキツネの生息数について
前年度の岩内地区のヘリコプターによる調査の結果を読み取り生息数の推定を行った。このうちニセコの高山ではノウサギが圧倒的に多いが里ではキツネがノウサギと共に1ha当り0.03頭とキツネが非常に多くなっている。このキタキツネの一夜の行動距離についてはこれまではっきりしたデータが無かったが,本年度は色素首輪を用いた方法でのデータが集まり,約3kmと予想通りノウサギの約2倍であることがはっきりしてきた。
3.ツキノワグマについては新潟県の3年間にわたる調査データから観察による生息数推定法が実用可能なものとして確実化されつつあるといえる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1.航空機による野生獣の生息数推定法の開発と応用に関する研究
(2)−−長野県飯田市周辺の山岳林におけるカモシカ−−,野兎研究会誌,June 1987.
2.林知己夫,林文:生息数の推定,「クマ生態調査報告書」,新潟県野生動物生態研究会,62.3.
3.林知己夫,林文,本間隆平:熊の総数推定について,野兎研究会誌,June 1988.(予定)
4.柴田義春,林知己夫,林文:色素首輪法によるキツネの行動追跡,野兎研究会誌,June 1988.(予定)
口頭発表
上記1.3.4.は問題で野兎研究会,62.10にて発表した。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

・長野県下伊那のカモシカ被害量と捕獲頭数の経年データからカモシカの個体数を推定する方法を確実なものにしてゆくための,被害量の測定法など現場のデータの性質を明らかにし,それに対応する方法を研究する。あわせて林業とカモシカの調和の問題を統計的に考察する。
・クマの生息数推定法として,京大芦生演習林を中心にクマの痕跡のデータ収集がおこなわれており,これをすすめて,統計的に生息数推定にむすびつける方法を開発する。
・北海道キタキツネの一夜の行動距離のデータをひきつづき集めて,確実なデータとしてゆき個体数推定法の確立をめざす。
それぞれの動物に対する統計的かつ実用的な生息数推定数を確立のためには相互の知識の交換,総合が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

駒澤 勉

統計数理研究所

斎藤 昌宏

林業試験場

柴田 義春

森林総合研究所

菅原 聰

信州大学

高田 和彦

新潟大学

豊島 重造

新潟大学

馬場 康維

統計数理研究所

林 知己夫

統計数理研究所

樋口 輔三郎

林業科学技術振興所

藤岡 宏

秋田林業センター

吉村 健次郎

京都大学