平成262014)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

26−共研−4301

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

3

研究課題名

Rを用いた統計演習のためのe-learningシステムの構築:反転授業の実践と日中における有用性の国際比較

重点テーマ

統計教育の新展開 II

フリガナ

代表者氏名

シモカワ トシオ

下川 敏雄

ローマ字

Shimokawa Toshio

所属機関

山梨大学

所属部局

大学院総合研究部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

242千円

研究参加者数

8 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本邦では,統計学が数学の一部,あるいはソフトウェアを利用した場合には情報教育の一部として見ている学生が多いように感じている.統計学を通して,「データを分析する」という教育をどのようにして実践すればよいかに関する悩みは尽きることがない.そのため,本研究では,講義を工夫することとともに,学生の意見を参考にすることも重要であると考えた.
 このとき,中国では,初等教育・中等教育にデータの分析が加えられ,それらを学習した学生が大学に進学している.また,統計学科も存在することから,日本と中国における「統計学」に対する認識の違いを調査した.
 この調査は,山梨大学 生命環境学部 学部生33名(日本)および,西南交通大学 交通運輸学部 学部生92名(中国)に実施した.選択基準は,(1)基礎科目として統計学を履修していること,(2)統計学科のような専門学科の学生ではないこと,(3)いずれの大学の学生も卒業研究等で(研究室にも依存するが)「必ず」用いるべきものではないこと,である.
 調査項目は,下記の通りである:
■ 統計学への関心・将来の必要性
  問1:あなたは統計学に関心がありますか?
  問2:あなたは将来,統計学のスキルが自分自身に必要だと思いますか?
■ 統計学の学習
  問3:あなたは統計学が難しいと思いますか?
  問4:統計学を学ぶ上で難しいと感じることを記入してください(自由記述)
■ 「流行語」に対する知識
  問5:「データサイエンティスト」という用語を知っていますか?
  問6:「ビッグデータ」という用語を,メディア等で見たことがありますか?
因みに,すべての質問項目は日本語で作成し,ネイティブチェック2名によるダブルチェックのもとで中国語に翻訳した.
 問2「あなたは将来,統計学のスキルが自分自身に必要だと思いますか?
」に対して,「ある」あるいは「少しはある」と回答した被験者が中国では70.7%だったのに対して,日本では66.6%と僅かに下回った.ただし,「ある」と回答した被験者は,日本では3%(3/33)だったのに対して,中国では39.1%(36/92)だった.つまり,中国のほうが日本に比べて統計学に関心が高くないものの,将来に必要になるものであるという認識が強いようである.
 問3「あなたは,統計学が難しいと思いますか?」に対して,「思う」「少しは思う」と回答した学生の割合が,日本では97.0%(32/33)だったのに対して,中国では67.4%(61/92)だった.とくに,「思う」と回答した学生が日本では過半数(17/33)を上回った.
 問4「統計学を学ぶ上で難しいと感じることを記入してください」について,日本では,「計算の仕方(表計算など)が難しい」,あるいは「 理論・用語が理解できない」といった意見が多かったのに対して,中国では,「データを分析して総括すること,手法の取捨選択が難しい」あるいは「公式が覚えられない(応用場面を含む)」といった意見が多かった.すなわち,中国ではデータ分析に対する応用場面での困難さ,日本では用語や計算等の困難さが問題のようである.
 問5,6について,「データサイエンティスト」に関する認知度に大差はなかったものの,「ビッグデータ」の認知度は,日本では過半数を下回ったにもかかわらず(13/33),中国では7割近い学生が知っていた(63/92).したがって,中国では,新たなビジネス分野である「ビッグデータ」に対して情報を得ているようである.一方で,日本ではビッグデータによるサービスが身近なところに定着しているにもかかわらず,その用語に対する関心は薄いようである.

 今回の調査は,第1報であり,次年度以降もより大規模に継続していく予定である.





 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

下川敏雄・李 力・楊 鶤:日本と中国の大学生における統計学に対する認識の比較, 統計数理研究所公募型共同研究 重点テーマ3:統計教育の新展開 II 合同研究集会 発表資料.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

別途,研究会は実施していないが「統計数理研究所公募型共同研究 重点テーマ3:統計教育の新展開II 合同研究集会」において発表を行った.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

王 娜

山梨大学

黒木 学

統計数理研究所

田村 義保

統計数理研究所

辻 光宏

関西大学

楊 鶤

西南交通大学

李 力

西南交通大学